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血を飲んで試すのは、
勉強が捗って落ち着いた後の方がいい。
万が一という事もある。
せっかくの、二人きりの時間だ。
昨日のように台無しにしたくはない。
「それでは、お邪魔しますっ。」
丁寧にお辞儀をして、杏奈は
スニーカーを脱いで上がる。
それをきっかけに、俺の腕は解放された。
あぁ······安心したような、寂しいような。
この残った温もりを、
永久保存できないか。
「杏奈が使ってた部屋、片付けずに
そのままにしてるぞ。」
「えっ。そうなの?」
「いつでも戻ってくれるようにって、
母さんが。親父も、それがいいって。」
「······嬉しいな······」
頭を下げなくても、二人は
温かく迎え入れてくれるだろう。
俺だって。戻ってきてくれるのを
ずっと望んでいた。
実現できそうで、ほっとしてる。




