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名残惜しいっていう気持ち。
その言葉の意味が、かなりよく分かった。
あっという間に着いた。
彼女も同じ気持ちだったのか、
なかなか離れようとしない。
運転手さんが後部座席のドアを開け、
柔らかく微笑んでお辞儀をする。
ご丁寧に、すんません。
「えっと······このまま待っていただけますか?
俺の家に、彼女を連れていきたいんです。」
待ってもらえるなら、その方が。
俺んちに行くまでの時間、また寄り添える。
俺の意見に、杏奈の顔が輝いていた。
へへっ。嬉しいな。
「かしこまりました。全然構いませんよ。」
すんなり神対応。
「ありがとうございます。」
「すみません!すぐ来ます!」
杏奈は、何度もお辞儀して
車から出ていく。
彼女の温もりが離れると、寂しい。
もう、なくてはならない俺の一部だ。




