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ロウソクの灯りって、エモい。
温かみがあるというか。
その中で照らされる杏奈の顔は、
超絶綺麗で。
ガチめに、女神じゃないかと思った。
「消していい?」
「待って。一応、俺のヘタくそな
バースデーソングを添えます。」
「あはっ、いいの?嬉しいなぁ。」
柏原のように、聴かせる歌声じゃないが。
いっぱい心をこめて、
バースデーソングを歌います。
ホントは、昨日の内に歌いたかった。
でも、日を跨いでいない他国がある。
そこではまだ、杏奈の誕生日。
そう。まだ、間に合う。
「······ありがとう。朔耶。」
歌い終わった後に浮かべた
彼女の笑顔は、とても優しくて。
とても、綺麗だった。
灯りは、彼女の息吹によって
残ることなく、ふっ、と消える。




