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どのくらい経ったか、分からない。
俺の懐で泣き叫んでいた杏奈は、
ようやく落ち着いたものの
まだ、嗚咽を繰り返している。
頭を撫でたり、背中をさすったり。
彼女が泣き止むまで、それを繰り返した。
そのままの状態で
綺麗すぎる夜景を眺めていると、
ようやく杏奈は顔を上げた。
「······ありが、とう······」
しゃくり上げるように、お礼の言葉が漏れた。
何も言わずに俺は、微笑みを返す。
メイクが崩れて、目元が黒くなっている。
両手を彼女の頬に持っていき、
親指で拭き取った。
「もう、いいのか?」
「······うん······」
泣き疲れている様子で、力なく微笑む。
「······たくさん、泣いちゃった······」
「いいんじゃね?」
「······いつかは、受け入れられる、かな······」
「ああ。」
お前なら、乗り越えられる。




