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それとこれとじゃ違うと言われたら、
それまでだけど。でも。
時間が経てば、受け入れられるようになる。
どんな傷も。
「だから今は、いっぱい悲しいだろうけど
······それでいい。たくさん、泣いていいんだ。
我慢せずに。悪いと思わずに。
俺が傍にいる。いつでも甘えていい。」
頭を撫でながら、囁く。
俺の思いが伝わったのか、杏奈は
声を上げて泣き崩れた。
俺に強く、しがみついて。
「さくやぁぁぁっ!さくやぁぁぁっ······!」
名前を、何度も繰り返して叫ぶ。
胸元で響き、ビリビリと振動が伝わった。
号泣する彼女を、俺は
ひたすら抱き留める。
心からの叫び。
どうしようもない気持ち。
憎しみ悲しみ両方が、入り混じってる。
杏奈。杏奈。ずっと、お前は。
これを抱えていたんだよな。苦しかったよな。




