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店員は先に、
杏奈の方の椅子を引いて促す。
彼女は戸惑いながらも微笑んで、
会釈しながら腰を下ろした。
続いて、俺の方も。
椅子を引いてもらうなんて、初めてだな。
王様になった気分。
「本日は、フュオーコにお越し頂き
誠に有難うございます。
アンナ・日下部・レングラント様の
お誕生日だという事で、兎川社長から
特別コース料理を仰せつかっておりますが、
アレルギー等がございましたら
お伺い致します。」
互いに見合わせて、首を振る。
何でもこーい。
「もし、何かご入用なものがございましたら
こちらのベルにて、お呼び出しください。」
特別コース料理。すげーなぁ。
会長が考えてくれたコースって事だよな。
ホッとした〜。イタリア料理とか、
パスタとピザくらいしか知らねーもんなぁ。
「それでは、始めさせて頂きます。
ごゆるりと、お楽しみください。」




