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「か、会長。そこまでのおもてなしを
受けるのは······身に余りますが······」
勿論杏奈も、驚かないわけがない。
乾さんは無言ながらも、にこやかに
車を発進させた。
俺たちに気を遣っているのか、
会長は助手席に乗っている。
何か、すんません。
「何を言う。それ相応の褒美を与えるのは、
責任者として当然だ。
河野 貴也の件は勿論、
今回の血縁者確保は大手柄である。
むしろ、遅れてしまった事を
詫びなければと思っていたのだ。
気兼ねなく、受け取れ。」
「······はい。お心遣い、
ありがとうございます。」
ご褒美。なるほど。
そういうことなら、遠慮なく貰おう。
ぐふふふ。
「それに、命日と誕生日が同時というのは
······不憫でならん。酒殿に
詳しい事情を聞くまでは断言できんが、
レングラント嬢を掌握する為の
計略だったと、私は思っている。」




