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だよな。
ここには、誰にも知らせずに訪れた。
「······信じたくなかったのかも。
あの人が、両親を殺したんだって。」
考えたら、恐ろしい。
平気で杏奈を欺き、
平気な顔でここに居座り、
平気で杏奈を慰めたフリをしている。
一体、何がしたいのか。
「ホントに優しくて、とても良い人なの。
パパママとも、仲良しだった。
なのにっ······」
一番杏奈が、怖い思いをしている。
「パパは手足を折られてた。無力化して、
恐怖を与えながら殺した証拠。
ママは、全身の血を吸われてた。
痛みはなかったかもしれないけど、
きっと、赤い目でっ、服従させられてっ、
いたぶられてっ······!」
俺は、彼女を強く抱き締める。
「俺に、ぶつけろ。お前の怒りと
憎いと思う気持ち、俺が受け止めるから。」
「悔しいよっ、朔耶っ······!」
しがみつく両腕は、全力だ。
やっと、お前の本音が分かった。
そして、やろうとしてることも。
お前は、本当に。すごいよ。




