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10-6


ガチの、『聖職者』じゃないか。


フローラルマダムは、白と黄色の

控えめな花束を作ってくれた。

それを受け取る俺の両手と、

残像の杏奈の両手が重なる。


「今、教会は閉まっているんですか?」


「代わりの神父さまが、

 教会を引き継いでいるよ。

 とても仲が良かった人みたいでね。

 家の方は取り壊して、その土地は

 売ってしまったみたいだよ。」


······そうだったのか。


度重なる貴重な情報、感謝します。


「ありがとうございます。」


「いえいえ。またおいで。

 今度は杏奈ちゃんと一緒にね。」


「はい。」


マダムに笑顔を向ける彼女とともに、

俺も笑顔で店を出る。



彼女が持っているであろう花束は、

残念ながら俺の目には

何かを抱えている風にしか、映っていない。



当時は、どんな思いで

ここから立ち去ったのだろう。


吸血鬼に対する、憎しみを抱えたまま。




 



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