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残像の杏奈は消えることなく、
車内のドア付近に立って、景色を眺めている。
行き先は、どこなのか。
一体、誰の為の喪なのか。
······
杏奈の両親、しか浮かばない。
でも、何で今日なのか。
杏奈の誕生日なのに。
······誕生日······?
誕生日を祝う為に墓前へ行くとか、
聞いたことない。喪服で。
まさか。いや、でも。
もしかして、この日と同じくして······
両親の、命日だとしたら。
思い浮かべたと同時に、
モヤモヤしていたものが晴れた気がした。
そうか。
この推測は、正しいのかもしれない。
誕生日が、命日。
この合致する原因が、杏奈を苦しめている。
そう考えて、おかしくない。




