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静電気とかじゃない。
この感覚は、初めてだ。
杏奈の、白い手がドアノブに重なる。
それが離れるのを目で追うと、
喪服を着た杏奈の後ろ姿が見えた。
······これは、幻覚か?
いや、違う。この感覚は。
余韻のような。残像、というのか。
······吸血鬼って、こんな事も出来るのか?
驚くよりも、今は。
この力に、頼るしかない。
リアルにストーカーだけど。今は、有難い。
残像の杏奈は、アパートから出ていくと
駅の方へ向かって歩いていく。
俺は、それを後ろから目で追い、
付いていった。
その足は、駅へと向かっている。
何で、喪服なんだ?
本当に親戚がいて亡くなっていたとか、
そんなオチは受け入れられねーぞ。




