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杏奈の大きな目が、さらに大きく見開かれた。
その瞳は、真っ直ぐに俺を映している。
「一緒に暮らせた時間、ホントに貴重で。
お前がいなくなると、ホントに寂しい。
でもこれが、
永遠の別れとかじゃないだろ?
今まで通り、ずっと傍にいるし。
お前が、心から大好きだし······」
何言ってんだろ、俺。
重いんじゃないか、これ。
「······朔耶······」
はっとする。
大きな瞳から、涙が溢れている。
うそ。俺の言葉、刺さった?
「ありがとう······私も、大好き······」
ふわっと、いい匂い。
抱きつかれるなんて、思わなかった。
それと、大好き、という言葉も
もらえるなんて······
顔が、ゆるゆるに緩みそう。




