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9−18
あの時よりも、少し肌寒い。
もうすぐ本格的に冬が来る。
互いにゆっくりとベンチに座ると、
紅葉した桜が目に入った。
春を迎えたら、二人で桜を見たいな······
その為にも、今は。
「······昨日は、ごめん。」
素直に謝る。
「心配で、つい······焦っちまって。」
それに杏奈は、素直に応えてくれた。
「自分こそ、ごめんなさい。
何も言わずに出ていこうとして······
でも、信じてほしかったの。
自分一人で大丈夫だって。」
何を指しているのか、分からない。
だが、それを訊かずに
受け止めようと思った。
「······あぁ。お前なら、大丈夫だと思う。
だから、いつでも戻ってこい。
母さんも親父も、お前の帰りを待ってる。
······俺も、勿論。」




