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8−2
何回か、危ない時があったけど。
押し倒して、服を脱がそうとしたことが。
あれはヤバかった。
思い出したら、興奮···いや、冷や汗が。
杏奈も受け入れる形で抱きついていたし、
止めたのは俺自身の、ゴマ粒くらいの良心。
今では、“ゴマ朔”と崇めている。
とにかく。
鍛えは、順調だ。
河野が捕獲されてから気になったのは、
両親の事。
こいつの両親は、吸血鬼だ。
息子が協会に捕まったのに、
何の音沙汰もない。
それどころか、行方不明だ。
これには止む無しと、会長が答えてくれた。
『協会に属する純血の吸血鬼は、残念ながら
それ程多くはない。殆どの血縁者は、
行方知れずだ。
実をいうと、この事態も
どうにかできないかと思っている。
······
我々は元から、親の愛を知らずに育つ。
血を繋ぐ為に交配し、父親は姿を消す。
母親は、子に物心がついたと同時に
離れゆく。生きる術を教えてからだ。
血を欲する生き物だと、叩き込んで。』




