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くすぐったくて悶えていた杏奈を
解放したのは、およそ5分後。
最後の方は変な感じになって、彼女は
とろんとしていた。
「赤い目が効かなかったのは、何でなんだ?」
そんな彼女の頭を撫でながら、俺は訊く。
「会長の話ではね、
赤い目を使って落とされるのは、
最初に使った吸血鬼一人だけらしいの。
だから、自分は朔耶の赤い目しか効かない。
他の吸血鬼の赤い目は、
無効になるんだって。」
俺に撫でられるのを、杏奈は
嫌がる様子もない。
「······そうだったのか。」
「会長と乾さんが今回協力してくれたのも、
その確信があったから。逆に朔耶が
知らない方が、河野を欺けると思った。」
逆ドッキリを、くらったという事か。
「このカラオケ施設に協力してもらえたのも、
会長のお力添え。モニターで監視して、
タイミングを窺っていた。
そしたら、朔耶が······」
「情けねぇな、俺。」
「ううん。それが、チャンスになったの。」
全ては、手の平の上で転がされていた。
分かれば分かる程、情けねぇ。




