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俺たちを泣き落とした柏原は、
彼女から連絡が来たところで
風のように退室していった。
カラオケ代は明日払うと、言い放って。
カラオケルームに取り残された俺と河野は、
モニターに流れる宣伝を、ぼーっと眺める。
「······僕も、柏原くんみたいに······
明るい性格に生まれたかったなぁ······」
呟きが、流れる広告と一緒に、耳に届く。
「······うん。あいつは、すげぇよ。」
「こんなに泣かされたの······初めて。」
「······俺も。」
今が、チャンスだと思う。
でも、捕縛する前に。
こいつと、話したい。
「······河野。お前に、話したい事があるんだ。」
ゆっくりと、河野の顔が
こちらに向く。
「······うん。僕も、大地くんに
聞きたい事があるんだよ。」
「お前から、いいよ。」
「ううん。大地くんからで、いい。」
促されて俺は、河野と向かい合った。




