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「俺が手本を見せてやる!」
柏原は張り切って、マイクを持つ。
このイントロ、有名なやつ。
ズブズブのバラードだけど、歌えんのか?
俺の心配を覆す、いい声。
おいおい。上手いじゃん。
「うわぁぁーっ!!すごいよ柏原くーん!!
ステキーっ!!」
河野は大興奮だ。
落ち着けよ、的な感じで
柏原は河野の頭に手を乗せながら、
歌い続ける。
違う意味で、ドキドキする。
柏原。お前の歌声で、
こいつを無力化してくれないか?
同性も、落とせるかもしれない。
それくらい、ガチで上手い。
サビのところとか、何ていうか。
心にくるものがあった。
このまま、楽しめたらいいのに。
でもこの時間はもう、永遠に来ない。




