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センサーは、河野に向いている。
この事実が、信じられない。
「席に着け~!連絡事項があるから、
早めにホームルーム始めるぞ~!」
担任の保坂が入ってくる。
何で、今日に限って。
教室内に漂う、甘い香り。
この匂いを、俺は毎日知らずに
嗅いでいたのか。
前の席に座る河野の背中を、見据える。
どうして。
平然と、ここにいられるんだ。
お前は、血で狂ってるんじゃねーのか。
想像していた吸血鬼とは、
かなり想定外だった。
しかも、それがクラスメイトのダチとか。
エグすぎる。
・・・・・・おい。
冷静になれ、俺。
ここで、絶望感に浸ってる場合じゃない。
考えろ。
杏奈は幸いにも、俺に隠れて
こいつからは見えなかったと思う。
だから、大丈夫だ。
昨晩、こいつは俺の顔を見ている。
人では無理に近い跳躍で、後を追っている。
こいつは。
俺が、吸血鬼だという事を
把握しているかもしれない。




