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自分の部屋に戻って、約一時間後。
杏奈が家に戻ってきた。
玄関は閉まってて入れないので、
俺の部屋の窓からだけどな。
「あの女の人、
吸血鬼と会った記憶がないみたい。」
「えっ?」
「気づいたら、あの場所にいたって。
・・・・・・もしかしたら、
赤い目の効力じゃないかって思うの。」
・・・・・・そうか。
俺も赤い目になって、
杏奈が服を脱ぎそうになった時。
あの時の記憶が、彼女に残っていない。
赤い目で操られたのか。
「厄介すぎるだろ・・・・・・」
逃げたあいつの後を、
杏奈が追っていたらと思うと・・・・・・
冷や汗ものだ。
「同じ手口で、血を吸っていたとしたら
・・・・・・自分では、対処しきれない。」
顔を険しくする杏奈。
「やっぱり、追跡は俺一人でした方がいい。
お前は待機して、連絡取り合う方が。」
「・・・・・・」
分かってくれ。
その方が、俺も安心だし、集中できる。




