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「んんっ・・・・・・あぁ・・・・・・・
もっと・・・・・・」
喘ぐ声。
歓喜する女に覆いかぶさる、
黒いパーカーを着た男。
フードを深く被っていて、
この角度からでは、顔が見えない。
甘い匂いは、間違いなく、こいつからだ。
でも、思っていた光景と全く違う。
今の段階で取り押さえるのは、
あまりにも野暮ではないのか。
そう思って、様子を窺っていると。
「はうっ!んんっ!!」
喘ぐ声が、明らかに大きくなった。
これは、絶頂の声なのか、
噛まれて、吸われている最中なのか。
迷っている場合じゃない!
こいつは、間違いなく吸血鬼だぞ?!
吸わずにはいられないだろ?!
俺は、茂みの中へ足を踏み込んだ。
「やめろっ!!」
フードの男は、動きを止める。
女を離し、振り向いた口元には、
真っ赤な血潮が纏わりついていた。




