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俺と杏奈は慎重に、公園の中へ入る。
人影らしきものは、見当たらない。
「誰もいないみたい・・・・・・」
「しっ。」
微かな音に気づいて、俺は聞き耳を立てた。
『・・・・・・ん・・・・・・ふふ・・・・・・』
公園の奥にある茂みから、聞こえてくる。
声質から、女だと思う。
そして甘い匂いも、同じ方向からだ。
嫌な予感がする。
いや、予感じゃなくて、直感だ。
俺は、そっと近づく。
杏奈も、後ろから静かに付いてきた。
茂みの向こう側にある光景は。
「・・・・・・っ。」
俺は思わず、杏奈の目を隠すように
手を置いた。
見るな。見ちゃいけない。
その行動の意味が分からず、彼女は
どうしたの?と言わんばかりに
俺の手を外そうとする。
どうする。




