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その言葉に、杏奈よりも俺が動揺した。
「いや、待ってください。
昨日の今日ですよ?
杏奈の負担が大きすぎる。」
「それは心配いらない。
私が、長い年月を掛けて開発した
増血剤がある。奏子も服用している。
大地君と貴殿の食事を毎日補えるのは、
それがあるからなのだ。」
はっとする。
確かに。
俺たちに毎日提供している、血のデザート。
あれは、奏子の血。
目を向けると、奏子は優しく微笑み返した。
「アンナちゃんが昨日、晩御飯中に飲んだ
ジュース。あれは増血剤なのよ。」
思い当たっているのか、杏奈の表情が
驚きと感動で輝いている。
「すごい・・・・・・普通のグレープジュースと
思っていました。身体もダルくなくて
とてもスッキリしてたのは、
そのお陰だったんですね。」
「副作用は、無いに等しい。
汗と涙の結晶で生まれた、特許品だからな。
即効性もあり、いろんな味があるぞ。」
このちっさい人、ただ者じゃない。
 




