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広いエレベーターに乗り込むと、昌耶が
胸の内ポケットから、カードを取り出す。
その仕草だけで、優雅に見える。
カードの見た目は、真っ黒いだけで
デザインらしきものは描かれていない。
階数ボタンの下側にある
差込口らしき溝に、それを差し込んだ。
ピッ、と、簡単な音が鳴る。
すると、エレベーターは勝手に下り始めた。
その表示を眺めていると、俺の傍へ
杏奈が身を寄せてくる。
少し、震えている。
心配すんな。大丈夫だから。
きゅ、と杏奈の手を握る。
すると握り返してくれた。
ありがとう。
そんな風に、聞こえた気がした。




