アイビーの根の下に
「今日もお疲れさまでした!」
缶を片手にテーブルに並べられた数々の肴に舌鼓を打つ。
今日は花の金曜日。四八時間フリーの時間がもうすぐそこに来ている。
コンビニで買ってきた発泡酒を一気に喉奥へ流し込む。パチパチとはじける気泡が程よい刺激となって心地いい。
「あー、これで月曜日が来なかったらなぁ」
目の前にあった肴を一つ口の中へ放り込む。肉厚で噛み応えのある食感が楽しい。
「また重労働を強いられる雇われ者は悲しいですなー」
次々と肴を飲み込んでいく。味は大したことは無く、筋っぽいところもあるがそれは全く気にならなかった。
むしろこのチープさが好きでもある。
「しっかし酷いよなぁ。先輩。二股かけやがってよー」
あっという間に缶は空になり、次へと手を伸ばす。良い音がして泡が飲み口から溢れ出す。零れないよう慌てて吸い上げた。
「はー。世間様は幸せなようで。羨ましい限りですなぁ」
眼前のテレビには花火大会の宣伝が写っている。浴衣に身を包んだ男女が仲睦まじく大輪の花を咲かせる花火に見惚れている。
対して自分は寂しく一人で宅飲み。そして目の前には浮気の自棄で作った大量の肴。一晩で一人で消費するには多すぎる。
「どうやって消費していこうかなぁ」
鼻をすすりながら独り言ちる。こういう時に酒好きの先輩がいたら、などと考えるがもう遅い。彼とは決別してしまって二度と会えないのだから。
「少しは話を聞いてあげるべきだったかなー」
自分で納得する答えを出しても後悔は溢れ続ける。自分では一番良い道を見つけている。しかし最適だからと言って自分が真に納得できるかどうかは別問題だった。
どうしようもない怒りと悲しみで涙が溢れてくる。
気弱になりじめじめと無く自分にも腹が立ち、また一缶空けてしまった。次の缶へ手を出す。同じような缶を大量買いしてよかったとつくづく思う。いちいち外へ出ていたのでは不審がられてしまうだろう。
そして事の経緯を説明するのは面倒だ。
それにしても肴を作ったのは良いとはいえ、少々偏りすぎているとも言えなくない。
肉食系ではあるがなんでもこれはやりすぎたと後悔した。
それでも残すのは信条に反する。
何日かけてでも、どんなに苦しくとも、きちんと消費しなくては。
食材に失礼だ。
涙が頬を伝う。それを気にすることなく次々と口へ放り込んだ。
「これは決別ですからね。先輩」
悔しさを消費するように噛みちぎる。
「ずっと一緒ですよ」
肴を咀嚼する音が響く。




