2022年7月の参議院選挙 ~仮に投票する政治家がいなくても、絶対に選挙投票は行った方が良い理由
2022年7月現在、日本銀行は一部の海外の投資家達(主にヘッジファンド)から攻撃を受けています。
日本銀行は通貨発行権を持っていて、日本円の管理者と言ってしまっても良いポジションの組織ですから、これは日本経済全体への攻撃と見做せます。
ただし、“攻撃”と言っても、敵意や悪意がある訳ではないでしょう。ただ単にお金を稼ぐのが目的であると思われます。そして投資家達の攻撃対象は、“日本国債”で、その攻撃手段は「空売り」です。空売りすると、後で日本国債を買い戻さなくてはならないのですが、その時に国債の価値が下がっていれば、彼らは利益を得る事ができるのです(一応説明しておくと、債券は金利が上がると価値が下がった事になります)。
それに対抗して、日本銀行は国債を凄まじいペースで買い入れています。そのお陰で金利はなんとか0.25%付近の水準を維持できていますが、代わりにただでさえ多かった日銀の日銀国債保有残高が更に跳ね上がっています。
もし仮に、日銀が負けてしまったとしても、クラッシュまでいくかどうかは分かりませんが、この海外の投資家達の動きにもし日本国内の金融機関が追随し、「日本国債は信頼できない」と売りに走るような事が起これば、最悪の事態も考えられます(長期国債金利が1%上がるだけで、29兆円もの含み損が日銀に出るという試算もあります)。もしそうなったら日本は悲惨な事になるでしょう。
ただ、国内の金融機関は財務省に対して非常に従順なので、突然反旗を翻すような事件でも起きない限りは、国債を一斉に売り出すような真似はしないでしょうが。
実は海外の投資家達が、日本国債に空売りを仕掛けるのはこれが初めてではありません。過去にも彼らは何度か空売りを行っていて、そして今までは失敗に終わっています。あまりに日本が国債を発行…… つまり、日本が借金を増やし過ぎてしまったので、「もう限界のはずだ。日本国債の価値は下がるだろう」と考え、彼らは空売りを仕掛けたと思われる訳ですが、まだ日本は限界ではなかったのですね(国債は日本政府の借用書みたいなもんです)。
……では、何故、今回再び海外の投資家達は空売りを日本国債に対して仕掛けているのでしょうか?
それは日本経済を取り巻く世界経済の状況が過去とは大きく異なっているからです。以前とは違って、世界中の多くの国々が自国の政策金利を上げているのですね。
その為、日本が国債の金利を上げざるを得ない事態が近付いていると彼らは考えているようなのです。
他の国の金利が上がると、その国の通貨で資金を運用した方が利回りが良くなるので、その国の通貨を買う為に日本円は売られ易くなります。それにより、円はどんどん安くなっているのですが、今の日本経済はその円安を効果的に活かせる構造にはなっていないという見方が大半です(中長期的にはどうなるか分かりませんが。例えば、コロナ禍が完全に治まり、観光ビジネスが活性化すれば円安は有利に働きます)。
しかも、円安になって輸入品が高くなり、貿易赤字が増えてしまうと、更に円安が酷くなってしまいます。つまり、円安が円安を呼ぶ負の連鎖に陥りかねないのです。
ならば、円安を抑える為の政策を行う必要があるはずですが、それが他の国に合わせて金利を上げる事…… つまり、国債の価値を下げる事なのですね。
この状況を鑑みるのなら投資家達が国債の空売りによって利益を得られる可能性は高いと言えるのではないでしょうか?
(一体、いつまで投資家達が攻撃を続ける気なのかが心配ですね)
――がしかし、日本には金利を上げ難い事情があったりもするのです。
国債金利というのは、国の借金の金利に直結するのですが(国債の金利自体は固定ですが、それでも金利が上がれば直接間接の影響を受けます)、前述したように日本は先進諸国の中でも一際膨大な借金を抱えているのです。その為、金利を上げてしまうと、国の財政や金融機関がピンチに陥ってしまうのですね。
ですから、できれば金利を上げたくはないのです。
ならば、金利を上げる以外で、何か円安を抑えられる方法が求められる事になるでしょう。そんな方法はないのでしょうか?
実はあります。
その内の一つが、為替介入です。これは国が円を買って円安の進行を抑えるという手段です。ただ、その為には外国の通貨(外貨)が必要で、それには限りがあります。そう何度も使えません。そして現在の円安はまだそれほどの危機的状況とは言えないので、できれば外貨は残しておきたい。
なので、為替介入という手段は取り難いのです。
という事は、結局、今の円安はただ受け入れるしかないのでしょうか? いえ、そうとも限りません。実は他にもう一つだけ手段があるのです。
それは『外国からの輸入を減らす』事です。
輸出を増やしても円安は抑えられるのですが、輸出を増やすには日本の商品を外国が買ってくれなくてはいけません。ちょっとこれは日本の自由にはなりません。少なくとも今の日本には難しいです。その為、輸入を減らすしかないのですね。
こんな事を書くと、「輸入を減らすのも難しい」と指摘されそうですが、そんな事はありません。実は日本が約18~20兆円…… 年によっては約30兆円も輸入しているある重要な商品を、輸入に頼らず国内で生産する事が可能なのです。
その商品とは“化石エネルギー”です。
太陽光発電を代表とする再生可能エネルギーを充分に普及させて国内でエネルギーを生産するようにすれば、化石エネルギーの輸入を減らせます。つまり、エネルギー自給率を上げるのですね。
もし仮にエネルギー自給率を100%にできたなら、輸入していた化石エネルギーの額がGDPに加算されますから、日本のGDPが毎年18~20兆円以上も増える事になります(ただし、ここから再生可能エネルギーの普及に伴う、原材料等の輸入分は差し引かなくてはならないのですが)。
日本の輸入額の総額は、60兆円~80兆円ですので、これは充分にインパクトのある数字です。
※原子力関連の収支は不明瞭な点が多いので、ここでは取り上げませんでした。
日本は既得権の支配力がとても強くて過度に保守的です。その為、原発利権団体や化石エネルギー利権団体が、自分達の権益を脅かす再生可能エネルギーに対してネガティブキャンペーンを長年に渡って行って来たと思われます。
右翼の多くは、原子力政策を応援して来た事もあって、再生可能エネルギーを批判していたようですが、最近になってこれが少しずつ変わって来ていて、“エネルギー自給率”を上げる事の価値を認める人が増えてきています。エネルギー自給率を上げる事は、安全保障上も重要で実質的に軍事力が上がるからですね。
例えば、もし仮に中国が台湾に侵攻したら(中国は「軍事力を用いてでも台湾を手に入れる」と明言までしています)、確実に日本は化石エネルギーを輸入し難くなります。と言うよりも、中国が邪魔をして来る可能性が大きいでしょう。ですが、太陽光発電を充分に普及させておけば、これがまったく脅威ではなくなるのです。
ところが、未だに再生可能エネルギーへのネガティブキャンペーンを信じてしまっている人達が一部にはいて、今でも太陽光発電へのバッシングを行い、太陽光発電の普及を妨げてしまっているのです。
もちろん、太陽光発電にだってデメリットはたくさんありますが、その多くは誇張であったり誤解であったりします。どう考えてもメリットの方が大きいのです。
2022年7月現在、『太陽光発電 東京 反論』などで検索すると、そういったバッシングが誤りである事を述べてある記事が直ぐにヒットします。なのでここでは詳しくは述べません。代わりにあまり説明されていない“ミクロ経済的な視点からの太陽光発電批判”は誤りである事を述べてみたいと思います。
「太陽光発電を設置しても元が取れない」という批判を頻繁に目にします。確かにそういったケースもあるのでしょう。一応断っておくと、円安や化石エネルギー価格高騰の影響で電気代は上がっていて、しかも簡単にはそれが解消できそうにない点を鑑みるのなら、元が取れるケースは以前よりもずっと増えているはずです(因みに、我が家は元が取れそうです)。
ですが、これはミクロ経済的な視点から観た場合の話です。日本経済全体を捉えたマクロ経済的な視点からならば、仮に国内に元が取れない家庭や企業があったとしても、どう考えても太陽光発電はメリットの方が大きくなるのです。
まず、マクロ経済における太陽光発電に関する生産量の増加を現す式を書いてみます。
太陽光発電+太陽光発電システムの設備投資―輸入した資材等の費用
ここで「あれ?」と思った人もいるかもしれません。ミクロ経済的な視点…… 個人や民間企業の視点では、“太陽光発電システムの設備投資”はマイナスになります。だって、その分、費用がかかっているのですからね。
ですが、日本経済全体ではこれは違うんです。だって、設備投資をすれば、それを請け負う業者が利益を得られるでしょう? だから太陽光発電システムを設置した分は“生産量”に加算されるのです。
当然、GDPも増えます。つまり、経済成長しますし、経済成長すれば税収が増えて国の借金も減ります。
景気を良くする為には、誰かが何か商品を買う必要がありますが、これは「なら、太陽光発電システムを買えば良いのじゃない?」という話でもあります。
自家用車を誰かが買えば、その人にとっての収入にはならなくとも(それどころかマイナスになってしまう訳ですが)、自動車メーカーが儲かるので、その分経済効果があるのと同じです。
ただ、太陽光発電パネル、或いは太陽光パネルの原材料、その他資材を輸入している費用に関しては、国外にお金が逃げて行ってしまうのでマイナスになります。
それが、さっきの式の“―輸入した資材等の費用”の部分に当たります。
この理屈は化石エネルギーを用いた火力発電でも同じですが、火力発電は原価率が高いのでこの輸入額がかなり大きくなってしまうのです(だからこそ、化石エネルギー価格の上昇に伴って電気料金が著しく上がっているのです)。
つまり、輸入分のマイナスが火力発電所ではとても大きいのですね。
(現在、日本は“節電”を国民に呼びかけていますが、これには化石エネルギーの輸入を低くして円安を抑制しようという狙いもあるのかもしれません)
例えば、10000円電気料金がかかったとするのなら、化石エネルギーに頼る火力発電の場合は約5000円分が国外に出て行ってしまいますが、太陽光発電の場合、輸入したのが太陽光パネルなら約3000円程で済み、輸入したのが太陽光パネルの原材料ならば、更に安く約1500円程度で済む、といったような話です。
(この数字は、ネットで検索をかけて調べ、大雑把に計算したものなので、まったく正確ではありません。ただ、輸入金額の総額から考えるのなら、そこまで大きく間違っていないのではないかとも思っています。或いは、太陽光発電の場合はもっと安くなるかもしれませんが)
もちろん、だからこそ太陽光発電を普及させれば日本全体の輸入額を抑えられて、円安抑制効果があるのですが。
更に太陽光発電システムは、初期費用はかかりますが、維持費は極めて安価です。つまり、今後、国際情勢が大きく変動し、化石エネルギーの価格が上昇しようが円安が更に進んで1ドル150円台になろうが、設置時のコストにさえ注意しておけば問題はないのです。要するに、化石エネルギーに比べて安定しているって事ですね。
冒頭で、海外の投資家達(主にヘッジファンド)から、日銀が攻撃を受けていると説明しましたが、その攻撃により、もし日銀がクラッシュしてしまったとしても(そこまではいかないのじゃないかと僕も思ってはいるのですがね)、今の内に太陽光発電を普及させておけば、だから損害を低く抑える事が可能になります。
一応断っておくと、今後、化石エネルギーの価格が下がる可能性は低いのではないかと思われます。どんな製品でもそうですが、製造コストは変動費+固定費で構成されています。この内、変動費については需要が下がれば低くなりますが(だからこそ変動費なんですが)、固定費は変わりません。そして、世界中でエネルギー転換が進み、化石エネルギーの需要が下がっていけば、少ない消費者でこの固定費を負担しなくてはならなくなるので、価格が上がってしまう危険があるのです。
仮に10人で原油を消費している場合は固定費の負担は10%ですが、消費者が1人だけになってしまったら、固定費を100%その一人が支払わなくてはなりません。
もし、諸外国が化石エネルギー依存を止めて日本だけが依存し続けたなら、固定費を一国だけで賄わくてはならなくなるのですね。輸入する地域を何処か一部にし、そこに集中的に投資するのならこの問題を緩和できますが、その場合、社会の生命線とでも呼ぶべきエネルギーを一つの地域に依存するという極めて脆弱な体制になってしまいます。
(因みに、原子力発電はフランスへの依存度が高いので、フランスとの関係が悪化したり、フランスが脱原発を進めたりすれば一気に運営が難しくなります)
岸田政権は脱炭素を掲げ、新エネルギー分野に対し、官民合わせて10年間で150兆円規模の投資をすると宣言しましたし、東京都は積極的に太陽光発電を普及させようとしていますが、今まで述べ来た点を鑑みるのならば当然だと言えるでしょう。
(ただし、岸田政権の政策に関しては、原子力発電に予算が割かれる可能性もあります)
太陽光発電は日本にとって最も重要な将来を担うエネルギー源なのです。
ただし、これまでの国の太陽光発電を普及させる政策に問題がなかったのかといえばそれも違います。
一例を挙げておきましょう。
電力では送電の過程で熱エネルギーになって電気エネルギーが逃げてしまう送電ロスが起こるのですが(5%~7%が失われます)、太陽光発電は街中に設置する事で、その送電ロスを極めて低く抑える事が可能です。
つまり、街中の建物の上こそが、太陽光発電に最も適しているのです(必ずしも建物の上である必要はありませんが)。
ところが、国がこの点を考慮せずに太陽光発電を普及させる政策を実施してしまった結果、地方の山林を切り崩して行う太陽光発電事業が行われてしまいました。
これは明らかに資源の間違った活用方法で、不効率です。
前述しましたが、日本社会全体にとってはまず間違いなく太陽光発電はメリットの方が大きく、利益になります。が、民間では損をしてしまう所もあるし、そもそも街中の建物の上を利用するのは民間では難しいです。
こういった点を考慮しても、太陽光発電の普及は“国の主導”が適切であろうと思われます。
さて。
以上、説明して来たように、化石エネルギーからの転換に成功すれば、円安の影響をある程度は抑制できるようになるはずですが、問題が二つほどあります。
一つ目は、時間がかかる点。今から太陽光発電を普及させても充分に効果が出るのは、もう少し先になります。
二つ目は、円安抑制効果は未知数である点です。効果があるのは確実ですが、どれだけ円安が抑制できるのかは分かりません。もしかしたら、然程抑制はできないかもしれません。
すると、国債金利を上げざるを得ない事態に追い込まれる可能性があります。実際、「日銀は0.5%くらいまでなら国債金利を上げるのじゃないか?」という指摘があります。参議院選挙後か、日銀黒田総裁の退陣後かに何かしら動きがあるかもしれません。
(一応断っておきますが、今の金利水準に固執する可能性もあります)
そうなった場合、国か金融機関が損害を受ける事になるのですが、全ての負担を金融機関に押し付ける事は様々な理由から不可能ですので、国も負担する事になります。すると、国は増税か節税かの二択を迫られる事になってしまいます。
「いくら借金が増えても構わない」とばかりに無視をする可能性もありますが、そんな事をすれば、本気で日本経済全体がクラッシュしかねないので流石にないのではないかと思われます。
そして、円安の場合は日本社会全体が物価上昇という形で損害を受けるのですが、金利上昇によって税に対して負荷がかかる場合は、“誰が負担を受けるのか”を選ぶ事が可能になります。
さて。
ここからがこのエッセイの本題です。
その時に政治家達が、誰に負担をかけるのか…… つまり、誰を犠牲に選ぶと思いますか?
それは当然、“選挙投票に行かない層”なんです。
政治家達が当選する為には、投票をしてくれる人達にサービスをしなくてはなりません。高齢社会の現在はシルバー民主主義と言われ、高齢者優遇政策が執られ易いのは、それが原因になっています。そしてだから、逆を言えば投票に行かない(行けない)人達は、犠牲にされ易いのですね。
その最大かつ最悪の事例は、原子力発電所の核廃棄物でしょう。現在選挙権を持たないこれから生まれて来る日本の子供達は、何の見返りもない核廃棄物の管理を強制的に押し付けられてしまうんです。これは本来、倫理上許されて良い事ではありません。もし、未来の子供達に投票権があったのなら、原発推進派の政治家達は絶対に落選をするでしょう。
社会の負担を押し付けられたくないのなら、だから、特に現役世代、若い世代は絶対に選挙投票に行くべきなのです。
普通に考えるのなら、国債金利上昇の負担を被るのに最も相応しいのは裕福な高齢者層のはずです。既に引退しているので労働力を提供しておらず、将来を担う事もなく、そして消費意欲も低いからです。
公平性の観点から考えても、年金の世代間格差は数千万円にもなるのでこれは妥当です。
年収1千万円以上もある高齢者が、年収200万円しかない若い世代から年金を受け取る制度は、悲劇を通り越して喜劇ですらあるでしょう。
もしこれ以上、若い世代の負担を増やせば、ただでさえ低い出生率が更に低下し、日本社会の存続すらも危ぶまれます。
一応断っておきますが、政治家達だってそれくらいの事は分かっています。だから本心ならば、若い世代の負担にはしたくないはずです。実際、年収1千万円以上の高齢者への年金支給額を減らすという措置を過去に政治家達は行っています。
その点を考慮するのなら、若い世代の票は充分に政治家達を動かす力になり得ると判断するべきでしょう。
――さて。
現在は、2022年7月です。参議院選挙がこれから行われようとしています。その選挙での投票率が、「政治家達が誰を犠牲に選ぶか」を決める上で重要な要因になるのはまず間違いありません。
正直、どの政党も支持していない事もあって、僕自身、今回の選挙はいつも以上に何処に投票すれば良いのか困っているのですが、だからそれでも絶対に選挙投票には行くつもりでいます。
最後に、今の国の借金を巡る危機的な事態に対しての、“安倍政権の責任論”について説明しておきます。
確かに、安倍政権が行った大規模な金融緩和が、今起こっている“円安問題”を更に悪化させた点は否めません。
ですが、それでも決してそれは安倍政権だけの問題ではないのです。
一応念を押しておきますが、僕はどの政党も支持してはいません。いえ、それどころか安倍政権が金融緩和を行っていた当時、僕はそれを批判していて、安倍政権支持者の方達から酷い誹謗中傷を受けていました。
だから、正直「真摯な忠告を無下にするからこうなるんだよ」って言いたい気持ちもあるのですが、公平に評価するのなら、安倍政権だけの責任にはできないのです。
本来、安倍政権下で行われた金融緩和は、“規制改革・規制緩和”とセットでした(ただし、同時に行われていた公共事業は民間が使う資源を奪ってしまうので、実はこれら政策とは相反します)。ところがどうやらこの規制改革・規制緩和は、妨害が入って実行できなくなってしまったようなのです。
安倍政権の最大の過ちは、規制改革・規制緩和が鈍化した後も強引に金融緩和を行い続けてしまった点にあります。が、それでも最大の責任は、規制改革・規制緩和を妨害した人々にあると考えるべきでしょう。
経済成長の要因には、“生産性の向上”と“新産業の誕生”の二つがあります。ところが、官僚を代表とする既得権益団体は、自分達の権益を護る為にこの二つを規制によって妨げているのです。それを解放する目的で行おうとしていたのが、“規制改革・規制緩和”です。
もし、“規制改革・規制緩和”が行われていたのなら、充分な効果であったかどうかは分かりませんが、少なくとも今よりは投資が盛んに行われ、経済成長にも成功していたでしょう。そして、もしそうなっていたのなら、日銀が金利を上げられない原因の一つである膨大な日銀当座預金(説明はしませんでしたが、金利を上げると日銀当座預金の利子が莫大になってしまうのです)は減っていたでしょうし、税収が上がる事で国の借金問題も軽減していたはずです。
安倍政権は“規制改革・規制緩和”を途中で止めてしまい、復活をさせようとした菅政権は一年で終わりました。岸田政権については、今のところの僕の知っている限りでは、“規制改革・規制緩和”を行おうとする気配は観られません。
例えば、今、教師不足が言われています。その解決策としては、オンライン授業の普及がベストでしょう。
オンライン授業を普及させれば、教育が効率化し、質の向上すらも期待できるからです。カリキュラムの作成やペーパーテストなどはオンラインを通して中央の教師が行い、個別のケアは各学校の教師が行う体制が理想的なのじゃないでしょうか?
これは生産性の向上を起こす一種の規制改革と言えます。
ところが文部科学省は、「効率化して教師が減らされれば、文部科学省の予算が削られる」とこれに反対していて、安倍政権、菅政権に逆らっていました。そして岸田政権になってから、教師の増員を決めたのです。これは岸田政権が官僚に逆らう気がない事を示しているように思えます。
もちろん飽くまで僕の知っている限りでは、という話ですが。
安倍政権が金融緩和を行う前から、国は莫大な借金を抱えていました。安倍政権の金融緩和政策によって、信じられない規模の国債を日銀が買い上げた事で、金利を上げた際に日銀が大損害を受ける状態にまでなってしまった訳ですが、仮にそれがなかったなら、金利を上げた際の負荷を金融機関が被る状態になっていました。日本経済全体で捉えるのならば、被害の大きさに大差はないでしょう。金利上昇が日本経済に深刻なダメージを与える点は変わりありません。
中途半端な知識で、安倍政権だけを批判している人がいますが、本当に責任を問うべきなのは、既得権益を護る為に、日本社会を犠牲にし続けている人達なのです。
もちろん、安倍政権も手放しで評価できるほど善良でも有能でもないのでしょうし、間違いなく責任の一端はあるはずですが。
因みに、既得権益団体が潰して来た“新産業”の内の一つが再生可能エネルギー産業です。かつて太陽光発電で日本はトップを走っていたのですが、その所為で衰えてしまいました。
もちろん再生可能エネルギーもまったくの潔癖という訳ではなく、近年盛り返して来た背景には、確実に利権団体の存在があります。
もっとも、“利権団体があるからダメ”と言うのであれば、日本社会自体が消滅してしまうでしょうがね。
今は原発の利権団体と、化石エネルギーの利権団体と、再生可能エネルギーの利権団体でそれぞれ勢力争いをしているような状態だと僕は考えてるのですが、「原子力発電だけは有り得ない」と判断しています。
ウクライナ侵攻でロシアは原子力発電所を攻撃のターゲットにしました。そのロシアに日本は敵視されていて、中国と組んで日本を威圧しており、「不測の事態も起こり得る」とすら言われています。そして、その中国は原子力発電所の周辺の土地を買っていて、容易に攻撃ができる状態です。
この状態で、原発を復興させるのは、いくら何でもリスクが高過ぎるとは思いませんか? 原発反対派がいくら原発の危険性を訴えてもそれらを無視し、福島原発事故を招いてしまった点からも分かりますが、日本の原子力団体はリスク評価能力が低すぎます。正常な判断を下しているとは僕にはとても思えないのです。
どの政党がどんな団体と結びついているのかは不透明ですが、投票する先を選ぶ際の観点の一つとして考えてみてください。
最近、景気後退観測を受けて、再び国外の金利が低下するのじゃないか? みたいな流れも少し出てきたみたいです。そうなったら日本は金利を上げないかもしれません。ただ、政治家達が選挙投票に行かない人達を犠牲に選ぶというのはこれ以外にも言える事なので、どちらにせよ行った方が良いですが。