【番外編】6姉妹の誕生日 後編
『6姉妹の誕生日 前編』の続きです。
まだお読み出ない方は、そちらからどうぞ。
「では、投票を行います」
了解、です。
ここで乗り切れば、とりあえず第一関門突破だ。
「せーの」
追放する人に、指をさす。
私は、美華だけど……。
「……はい、結果、3票で美華さんが追放されることになりました」
うん、飛華、陽華が美華をさした。
風華は飛華、美華は陽華だ。
双子は最初にどっちかを追放しないといけないと思ったんだよね。凄く結託してきそうだし。
人数が減ったときに2人が結託してこられたら、たまったもんじゃないもん。
強敵は先につぶしておきに限ります。
「それでは、夜になりました。おやすみ~」
おやすみ~。
「では、盗賊の人は起きてください。ダイズを振ります」
カラン、とサイコロが転がる。
……5、だ。
つまり、1人5000リラずつ、20000リラを回収し、分配することになる。
だったら……。
飛華に6000リラ。
風華に6000リラ。
陽華に4000リラ。
私に4000リラ。
うん、これで行こう。
夢華に合図をし、お金を分配してもらう。
「では盗賊さん。誰を明日、追放したいですか?」
誰を……か。
領主は追放しないほうがいい。旅人に指名されても、領主に守られていれば役職はバレない。
だけど、誰がどの役職なのかは分かってないんだよね、現時点で。
人で言えば、今残っているのなかで1番脅威的なのは飛華だろう。
私の勝利条件は領主陣営の人数が盗賊+1、つまり2人になればいい。つまり、明日の追放で私が指名されなければ勝ちのはずだ。追放される人が領主に守られていない限り。逆を言えば、明日、領主陣営は盗賊を追放しないと負けが確定しまうから、必死だろう。
……明日は激戦になるだろうな〜。
考えた末、私は陽華を指差し、目を閉じた。
「領主さん。誰を守りますか?」
「……はい。では、旅人さん。誰が敵か味方か、知りたいですか?」
……あれ?おかしい。
物音が、しない。
顔を上げれば、多少なりとも音がすると思うんだけど。もしかして、旅人は美華だったのかな?
「その方は……です」
「それでは、朝です。おはよーございまーす」
おはよーございまーす。
「それでは、5分間の話し合いを始めてください」
「じゃあ、さっき……って、昨日、か。昨日のように、手持ちの確認をしてみて」
了解です。
私の今の手持ちは……9000リラ、だね。
この時、しっかり数えるのを忘れない。じゃないと怪しまれます。
「私は……100000リラ」
「私は12000リラだよ」
「私は8000リラ〜」
「私は、9000リラ」
うん、風華がすごくお金持ち。
「盗賊が美華なら……このパターンはすごくありそうだけど、美華は追放されてもんね」
「そうなんだよ、風華〜!」
「美華ちゃん、脱落者は口を挟まない」
そうですね。
美華は昨夜のことを見ているから、余計なことを喋られたらたまったもんじゃないです。
「でも、ゲームが続いているから、私達の中に盗賊がいるってことだよ〜?」
そうですね。
「ちなみに、旅人って、いる?」
ずっと黙ったままも悪い、というか怪しまれると思い、さりげな〜く話題を投げてみる。
旅人は領主側からすれば、誰がどんな役職か知っているし、盗賊側からすれば厄介なんだよね。
ここで正直なところ、私の役職が旅人に知られていたら困る。さらにそれを言われたらさらに困る。
だけど、ここで役職開示をさせちゃえば、私も名乗り上げる。それで怪しいって、でっちあげることもできるんだけど……。
あたりに漂うのは沈黙のみ。
いないか、名乗り上げるつもりはないのか。
ま、まぁ、これは想定内だ。
「じゃあ、旅人は誰が味方か、告げるつもりはない……ってことね」
もしかしたら、本当にもう居ないのかもしれない。
さぁ、どうしようか。
「はい、時間です。追放する人、決まった?」
いや、全然。
全くと言っていいほど決まっていないです。
「まぁ、とにかく投票しよう。……せーの」
もしかして、夢華も飽きてきている?
まぁ、少人数の領主ゲームはあんまり楽しくないのは分かるけど。
私は無難に飛華を指差した。
私の意見が、盗賊と丸かぶりだと、怪しまれる。
飛華は、陽華を指差していた。
風華は、陽華を。
陽華は、私を。
「……うん、盗賊は陽華ちゃんに投票しました。結果、3票。陽華ちゃんが追放されることになりました」
「ただ、陽華ちゃんは領主に守られていたので、この投票は無効になります」
……え?
ということは、領主はいる……?
「夜になりました。寝てください。盗賊さん、起きてください。ダイズ、振ります」
出たのは、1。
1人1000リラずつ、4000リラの回収。
……ここは、私を多めにしておこうか。
「明日、誰を追放しますか」
これが、本題だ。次に追放すべきは、飛華か、風華か、陽華か……。
領主は昨晩、陽華を守った。
陽華は盗賊に守られていた。だから、陽華は旅人か、領民。
そして、今夜、守られるのは飛華、風華、私。
私は盗賊だから、飛華か風華が領主のはず。まぁ、それは置いておいて、飛華と風華は領主によって守られる可能性があるから、追放しない方がいいだろう。
となると、陽華を追放した方が、確率が上がると思う。
ルールには2日連続、同じ人を指名していいっていうのは……なかったと思う。盗賊だけ。
だから、今夜も陽華を追放できるってことだ。
結局、誰を追放すべきか……。
う〜、もうわかんなくなってきた。
もう、陽華でいいや。
明日は私と盗賊の意見が被らないように、風華を追放する人としよう。
「ありがとうございます。領主さん、誰を守りますか?」
「旅人さん、誰が味方か敵か、知りたいですか?」
「その方は……です」
「それでは、朝です。起きてください。そして話し合いを始めてください」
わぁ、眩しい……。
美華と夢華が神々しく光っている……。
「もう、ここで領主サイドが追放されたら、負けになっちゃうよね。だから、何としてでも盗賊を炙り出さないと……」
私は、言う。
私は盗賊ではありませんよ、と言うように……。
「今日、最後になるかもしれないし、カミングアウト、しちゃおう。旅人の人、いる?」
風華が言うけど、誰も反応しない。
多分、真実はこうだ。
もう、旅人は追放された───。
そうなると、美華が旅人で間違えないはず。
盗賊にとって一番脅威なのは旅人。
領主はほぼ無害だと思っていいと思う。
あとは、流れに任せて一番怪しいとでっち上げられた人を追放すればいい。
「じゃあ、領主の人。昨日、誰を守った?」
「……私。私が、領主」
飛華!?
飛華が、領主だったの!?
でも、確かに領主っぽい……。みんなを守るし、強いし。
となると、風華と陽華が領民だったか……。
「昨日は稜華を、守った」
あ、勝ったわ、これ。
私追放されても守られているし。
今日、領主サイドの誰を追放すれば勝ちだよ。
まぁ、私が追放されちゃったら終わるかもしれないけど。
「他に名乗りあげる人もいないみたいだし、飛華が領主でいい〜?」
大丈夫です。
私は、勢いに飲まれすぎないようにしないと。
「で、あとは領民と旅人、そこに紛れる盗賊、ってわけか〜」
そうなりますね。
私は領民ですけど。
「現時点で一番怪しいのは?」
ん〜、誰だろうね。
強いて言えば、風華?
「風華、今回異様に喋ってないよね」
「美華がいないからだよ。あぁ、愛しの美華っ!」
「風華〜!私も愛してるっ!」
「美華ちゃん、脱落者は喋らない」
「……はい」
……この双子、何やってんですか?
愛してるゲームでもやっているんでしょうか。
いや、この双子ならやってそうだな。
「はいはい、時間です。投票、投票ー」
は〜い。
風華あたりを指しておきますか。
飛華は領主っていう認識ですしね。
「せーの」
飛華は陽華。
風華も陽華。
陽華は私。
私は風華。
「……うん、盗賊の分のもあわせて、3票。陽華ちゃん、グッバイ」
「何で〜」
「怪しまれたからだよ。さぁ、お楽しみの結果発表!」
「全然楽しみじゃない〜」
まぁ、そりゃあ、そうでしょうね。
楽しみなのは飛華と風華だけかな。
「盗賊の、勝ち!」
いえ〜い。
私の一人勝ちです。
飛華と陽華はめっちゃ落ち込んでる。
「ちなみに、誰がどの役職?私は領主だけど」
「私は村人」
「私、旅人なのに〜!真っ先に追放された〜」
「あぁ、美華、可哀想に……」
「私は旅人〜」
そこまでいい、みんなの視線が私に集まった。
「私が、盗賊でした」
「ねぇ、悔しいからもう1ゲームやろうよ!」
「風華に賛成!私、全然ゲームに参加できなかったし」
「私は別にいいけど」
「私もやりたいっ!次はゲーマスにならないといいなぁ」
ウソ。
まだやるんですか?
「だったら、お菓子も用意しようよ〜」
はぁ……もういいですよ。
やりましょう。
次は……ゲーマスあたりがいいなぁ。ある意味楽しそうだし。
お読みくださり、ありがとうございました。
happy birthday!6姉妹!