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【番外編】6姉妹の誕生日 前編

「ねぇ、稜華、早く起きてよ」


はいぃ?

別に今日は休日、それも夏休み最終日なんだからいいじゃないですか。

というか、さっきのセリフ、どこかで聞いたことがあるような……ま、いっか。

おやすみなさい、です……。


「起きないと、こうしちゃうよっ!」


突然、暑くなる。

……すごく寝苦しい。

私は、むくりと起き上がった。


「あ、やっと起きた」


……犯人はお前か、飛華。

私の安眠を妨害しやがって。

しかも、手の上に火を乗せてそれで部屋の温度を上げている。

最悪サイテーな目覚めだよ、ほんと。

仕返しに枕を投げつける。だけど、難なくよけられた。

……地味に悲しい。

だけど、飛華はそんなことを気にした様子もなく、私に問いかけてきた。


「ねぇ、今日は何の日か知ってる?」


今日?

知るか。いや、知っていました。


「今日は、魔法式の法則が発見された日……」


そう、何を隠そう、本日8月31日はっ!






「私達の誕生日でしょーー!!!!」


……うるさいです、朝から。

ご近所迷惑ですよ、って……近所はすっごい遠いか。


「もう!誕生日なのにぐうたら寝て!稜華だけだよ?」


へぇ、そうなんですか。

皆さん、偉いですね。


「というか、この日は便宜上の誕生日だよ?」

「いいの、細かいことはっ!」


そ、そうですか。


「だけど、みんな、年を取るわけで……」

「だから?」


……言ってしまっていいでしょうか?


「一生に一度しかないこの輝かしい青春からまた一歩遠ざかることに……」


飛華には年を取ってほしくないなぁ。

ずっと若いままでいてほしいんだけど。


「い、いいのっ!」


……そう。残念だなぁ。


「みんな、リビングで誕生日パーティーの準備しているから。稜華も身支度したら来てね。いい?」


了解です。

いつも通り身支度を整えてからリビングに行くと姉妹が忙しげに動いていた。

飛華と風華、美華は料理とかを作っていて、陽華と夢華は部屋の飾り付けやセッティングなどをしている。


「あ、稜華、おはよ〜」

「早速で悪いけど、部屋の飾り付け、手伝ってくれない?」


のんびりと挨拶をする陽華ときびきびと手を動かし続けている夢華。

……うん、対極だね。


「わかった」


っていうか、眠い。とにかく眠い。

寝起きで飾り付けをするって……ハードモードだよ。

しかも単純な作業を繰り返しやっているから余計に眠くなる……。

でも、微量ながら、作業は進んでいたようで。


「完成!!」


姉妹、特に飛華と夢華はやりきった間に満ち溢れている。


「まずは……朝ご飯、いや、ブランチを食べようっ!」


……そうですね。

みんな、起きてすぐ準備を始めて、今はもうお昼近い。

お腹ペコペコだよ。


テーブルの上にはいつもより豪華な食事が並んでいる。

魔法で保温・保冷をしておいたから冷めていてマズイ、なんてこともないだろう。美味しそうだ。

それぞれのセットの横には、花が並んでいた。


飛華の席にはサルビア。

風華の席にはヒマワリ。

美華の席にはレンゲソウ。

陽華の席にはリンドウ。

私の席にはクローバー。

夢華の席にはハイビスカス。


「それじゃあ、私達の誕生日を祝って!」


「「「「「カンパーイ!!」」」」」


飛華の音頭で乾杯をする。

まず、メインのお肉を少し食べる。

家族の間だから、すっごい厳しいテーブルマナーなんてない。みんなそれぞれ、自分が食べたいものから食べている。


「おいひ〜」

「陽華、ちゃんと飲み込んでから話す」

「ふぁ〜い」


それでも最低限のマナーはありますね、はい。

ご飯の量はそれほどではない。

みんな大食らい、ってわけでもないから。

適切な量。腹7分目ぐらいで食べ終わった。


「デザートは、ケーキだよ、美華」

「風華、私達が手作りしたんだよ」


そうですね。姉3人組が作っていましたね。スポンジから。

その女子力はすごいと思います。

しかもすごく綺麗な見た目で美味しいし。


「食べ終わったらゲームするよ〜」


は〜い。


「その前に片付け、しようね?」


う……はい。

片付けが終わったらゲームの準備を始める。


「今日やるのは、これです!」


高く掲げられた箱。

……明かりが眩しくてよく見えない。


「そう!領主ゲーム!」


……マジ?

マジですか、飛華さん。


「領主ゲームとはっ!」


まぁ、貴族がいた時代に民衆に流行ったゲームだ。主に、領主は権力を振りかざして領民を簡単に捨てるんだよ、と言う皮肉をこめて。

スタンダード版だと、役職がゲームマスター、領主、領民、盗賊に分かれている。

最初、1人あたり、10000リラ(日本円で言う10000円)が支給される。



ゲームマスター……ゲームの司会進行。カンペあり。

領主……1日に1回、指名した人を昼間の追放、旅人から守ることができる。

領民……ほぼ無力。

旅人……指名した人が味方か敵か知ることができる。

盗賊……ゲームマスターが振ったダイズで出た数×10000リラを自分を含む全員から奪い、そのお金は手元には残さず、ゲーマーに配分する。ただし、全く動かさないのは、なし。2日目の夜以降、翌日の昼間に追放される人を実質2人分投票できる。


ストーリーとしてはある日、領内に盗賊が現れるようになる。お金を奪う盗賊は、領民に紛れているらしい。1日に1回、昼間に会議がある。投票を行い、2日目以降、そこで怪しい者を追放せよ。盗賊は夜中に活動し、領内のお金を奪い、ぐちゃぐちゃにすることで周囲を混乱させている。と言う感じらしい。


領主陣営は領主、領民、旅人。盗賊陣営は盗賊、と言うようになっている。

領主陣営の数が盗賊の数+1以下になったら盗賊陣営の勝ち。その前に盗賊を炙り出せたら、領主陣営の勝ちだ。領主・旅人は2夜続けて同じ人を指名するのはなし。

お互いに役職は分からず、誰がどんな役職か予想したり、カマをかけたりしながら盗賊を炙り出し、勝利のために頑張る……という心理ゲームだ。

ゲーム性としては『ジンロウ』に近い。


拡張版ではもはや領主という枠を超えて、国王、王族、騎士、ハンター、冒険者、魔法使い、領主補佐、暗殺者、内通者、商人、聖職者、学者、さらには聖女や勇者、魔王なんていうのもある。


「とにかく、やろうっ!」


飛華は箱からカードを取り出すと、いくつかのカードを選び、シャッフルした。


「ここに、役職の書かれたカードがあります。役職はゲームマスターが1、領主1、領民2、旅人1、盗賊1です。最初に、ゲームマスターは必ず名乗り上げ、ゲームの司会進行をしてください」


は〜い。

カードを引いたら、ある程度の距離をとり、カードを見る。距離がないと、盗賊の場合、動きで分かったりしちゃうからね。

私の役職は……盗賊、だ。


「ゲームマスターは誰ですか?」

「私だよ、飛華ちゃん」


飛華の問いに、夢華が答える。


「それでは、これからのゲーム進行はゲームマスターに権限を移行します」

「はい、えっと、ではこれから会議を始めます。まぁ、1日目は何も分からないので、2分間、とりあえずお話ししましょうか」

「じゃあ、盗賊の人〜」


いませんよね〜、ここで手を挙げるとか、ないです。

その後、雑談をして2分をつぶす。


「会議終了です。みなさん、夜になりました。寝てください」


は〜い。


「では、盗賊の人は起きてください」


そっと、顔を上げる。

少しだけ、夢華が面白そうに笑った。


「では、ダイズを振ります。……3。1人3000リラずつ、全てで15000リラ、盗賊は盗みました。ですが、このまま持っていたら自分が盗賊だとバレてしまいます。そこで、全員に配分することにしました」


私は合図をして夢華にお金を配分してもらう。

飛華に2000リラ。

風華に4000リラ。

美華に4000リラ。

陽華に2000リラ。

私に3000リラ。


配り終えると、再び目を閉じた。


「次に領主さん。どの領民を守りますか?」


少しだけ、音がして、しばらくするとその音もなくなる。


「旅人さん、お待たせしました。誰が敵か味方か、知りたいですか?」


「その方は……です」


こうして、1日目の夜が過ぎる。


「それでは、朝です。みなさん、起きて下さい」


目を開けると、少しだけ眩しい。


「おはようございます。それでは、5分間の話し合いを始めてください」

「じゃあ、まず手持ちのお金を確認しよっか。私は9000リラ」

「私は11000リラだよ、美華」

「私も11000リラだよ、風華」

「私は〜、9000リラ〜」

「10000、だった」


順番に今ある金額を確認する。

元々持っていた10000リラから3000リラを一括で回収されて、3000リラを渡された。結果、私の手持ちのお金に変動はなし。


「双子、それから陽華、私が同じ金額。稜華が変動なし、ね」

「普通に考えたら一人だけ異質なのがおかしいんだけど、美華」

「それは罠だと考えるべきだよね、風華」

「今日は~誰を追放する~?」


私は……。


「……追放する人は、決まりましたか?」


5分が経ち、夢華からのアナウンスが入る。


「うん。決まった」

「では、投票を行います」

本日、8月31日は6姉妹の誕生日!

ということで、誕生日企画です。

驚いていただけましたでしょうか?

実は、このために本編で6姉妹の誕生日を明かしました(正直、夏休み編が終わるかは怪しかったですが)

前編・後編構成なので、後編は夕方に投稿します。

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