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閑話 ~夫は優秀な楽師~


「一応15禁だったんだなという事を踏まえてお読みくだされば幸いです。これでも年若くピュアな若人(わこうど)たちが読まれても不快にならない表現を選んだつもりなので、ご容赦くだされればありがたいです」 ニーナより。



 皆様、皆々様、リューム様をお願いいたします。

 どうぞ、どうぞ、お力添えくださいませ。

 女神様、女神様、どうかリューム様の闇を晴らしてください。


 事実を弟から聞かされた時、恥も外聞も己の自尊心もへったくれもなく、迷い無くシグレルに頭を下げていた。


 神殿で立場あるという彼に心の底から縋った。

 何だって貴方様の言うとおりに致しますから、お情け掛けて下さいませってね。

 勢いに押されてくれたらしい月一夫が計らってくれたおかげ様で、まんまと神殿内に巫女として上がれた時は本気で驚いた。


 だって、ワタクシめときたら人妻ですよ! いいんですか!


 ――そんな疑問は口にせず、喜び勇んでいざ神殿へ。


 ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★ 


 やれ、巫女の衣装がどうのだの。


(黙って言われるままに大人しく身を清めてから、衣装の裾の刺繍の意味などをとくとくと聞かされた。)


 やれ、シグレルの上司だの部下にご挨拶だの。


(大人しく従順で愛想の良い妻を必死で演じたつもりだが、どうだろうか。あのギルムード様とやらの笑顔は噴出す一歩手前のように思えた。)


 やれ、クレイズの……以下同文。


(しっかり者の姉(ヅラ)は演じるまでも無く、最早身に付いたものであるのでこちらは楽勝と思われる。)


 このまま行くと今日はもう、日が暮れてしまうではないか?


 シグレルにも弟にも腹が立った。

 さっさとリューム様へと案内してくれればいいものを、もったいぶるから本気で暴れたくなった程だ。

 ワタクシの強い忍耐力も限界です。

 そんな時に聞こえてきた歌声は、間違いようも無くリューム様のものだった。

 声を頼りに駆け出そうとしたら、シグレルに腕を掴まれて叱られた。

「勝手に行動しないと約束したはずだが」

「はい。申しわけありません」

 我ながら子供みたいだと思ったから、謝った。

 その割に身体は駆け出す気、満々で一向に改まっちゃいなかったのでため息を付かれた。

 夫には月一回会えればいいかくらいなのに、リューム様には一ヶ月近く会えないとこの様だった。

 何せ七年間、ほとんど毎日お会いしていたのだから当たり前の話である。

 二年やそこらの夫が敵うはずもない。


 お互い主人を一番に優先する、って言い合って結婚したじゃないか――!


 そんな焦燥が積もりに積もったせいなのか、安堵で口まで軽くなったせいなのか。

 やっと会えたリューム様に抱きつきながら、ワタクシはとんでもない事を口走っていた。


 必死であまりにも必死すぎて、自分が何を口走ったのかなんてその場では気がつきもしなかった。


 それだけ、本心がぽろりと零れちまいましたとでも言いましょうか。


『これほど政略結婚していて良かったと思ったことはありません!』


 きっぱり、言い切ったですよ。この口は。

 だってそれは本心なのでありまして。


 ああああああああ!!


 口は災いの元~。


「ニーナ」


 ――ハイ。


 来なすった!

 二人きりになったのを見計らったように、シグレルが口を開いた。


 ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★ 


 振り返ったらワタクシめはいないんでやんの――! 残念賞!


 逃げるに限る。

 そう判断したわたくしめの歩調は慎重に落として行ったのに。

 慣れない神殿ではこちらが地理的にも不利でした。無謀でしたよ。

 気付かぬ内に夫と歩調があわないせいで、はぐれちゃってとかいう言い訳まで完璧だったのにな。


「ニーナ。ちゃんと付いて来れないなら、手を繋ぎますか?」


 あろう事か追い詰められたよ! 迷ったフリして距離を取ったら最後、ここどこですか?


 ああ~なんか人気が無いですねってな背の高い庭木の囲いの辺りにですね。

 笑って誤魔化そうとも考えたが、笑えないですよ。この状況。寒すぎる。

 シグレルは本気で怒ると敬語になるのだ。

 恐らく女に対して声を荒げてはならないという気使いがあるらしい。

 そのため怒りのあまり語尾を荒げぬように、自分を抑えつけるかのように丁寧な口調になるのだ。

 そこら辺は過去に何度 (も)か怒らせて学習済みである。


 これは先手を打って謝り倒したほうがいいのかもしれない。

 だが、それも癪に障るのでとりあえず相手の出方を待つことにした。


 シグレルは背が高い。クレイズよりも高いくらいだ。

 しかも割合彫りの深い顔立ちなものだから、西日が当たって影になり彼の表情は極めて険しい物としてワタクシの目に映る。

 どこかのご領主様と、さぞや良い勝負になるだろう。


「私と結婚して良かったと今日初めて思ったのか?」

「ええと。まぁ。いや~そんな事ないですよ、シグレル」

「……。」


 シグレルがじっとこちらを見下ろしてくる。

 無言でもっと具体的に言えと促がされたようなものだ。


 視線を泳がせながら必死で探した。

 彼のいいところ~結婚してよかったなと思ったところ~。

 それは。

 変わり者の妻を自由にさせてくれる所に他ならない。


「見捨てずにいてくれてありがとうございます、シグレル。それに楽師の件も引き受けて下さって、心強いです」

 これでどうだとばかりにぱっと表情を輝かせ、両手を広げて言ったが彼の表情は微動だにしない。


「……。」

「……。」


 お互いに無言のまま、夕日に照らされた。

 沈み行く太陽がワタクシの気持ちの急下降を代弁してくれているかのようだ。

 それが口調にも現れる。


「シグレル。あの貴方の気が済むまでちゃんと謝ります。だから、あんまり怒らないで?」


 おずおずと顔色を窺うように、上目使いで彼を見た。


 ★ ☆ ☆ ★ ☆ ☆ ★ 


 その後、シグレルに掻っ攫われて泣きながら謝らせられましたとも。

 『どこで』とか『どのように』等と訊かないでいただけたらありがたいです。

 そもそも答えようも何もあったもんじゃありません。


 ええと。一応これから神殿の祭事に臨もうって身の上。

 禁欲という二文字は大事なんじゃないでしょうかね?


 ――そんな訴えごと、彼に飲まれましたよ。




『早いUPと思ったら やっぱりか』


ちょ、おまっ、確かに嫉妬に狂ってる人が出てきてるけどさ!


そんなツッコミもバッチ★来い。


相変らずの独りよがりの「暗に何かを言っている。」が、好きなワタシです。


優秀な楽師が爪弾くと妙なる調べを奏でるのは、何も楽器に限りません★とか言いたいらしいですよ。


小話もUPしたしで満足です。


さてさて。

次は本格的にどうしょ~もない、あの方の登場です。


リューム、がんばって。(丸投げ。)


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