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第五十四話 ジャスリート家で見送る者達


小話じゃないけど 作者にしてみたら ちょっと短めです。

 

 まずはその呪いの内容を知る事から。


 というわけで、フィルガ様とディーナ様とお勉強中です。


「ここにヴィンセイル殿からお借りした、シェンテラン家の歴代の年表及び記録文書があります」


 それを読み解いた結果、たいそう救いの無い質の呪いである事が解りましたよ。


「リューム嬢に掛けられた呪いは実は二種類の、まったく相反する作用を持つものであるようです。

 ひとつは祝福。そしてもうひとつは災厄。二重に施してあります」


 フィルガ様のお話を聞くうちに、気が付けばディーナ様に手を握られていました。

 そのぬくもりがそっと寄り添って下さるおかげで、いくらかこの場に意識を保つ事ができます。


 頭を殴られるほどの衝撃とは、この事だと思うのです。


「二重に、ですか。なかなか容赦も、救いようもないですねぇ」

「リューム嬢は賢くていらっしゃる」


 ならばあえて口に出しての説明は控えさえて頂きます、といった風に聞こえました。

 ええ、フィルガ様。

 察して下さってありがとうございますと、感謝します。

 頭を下げてそのままうな垂れました。

 要はすぐさま死なれちゃ困るので、祝福も授けられたって寸法ですね。

 道理でリューム、やたらに死に掛ける割には何だかんだで助かっている訳です。


 まるで彼――ギルメリアそのままの性質ですね。


 容赦なく傷つけるくせに、気まぐれで優しさを与えるような。


 わかります。


 シュ・リューカは、時おり与えられるその優しさで生き延びていたようなものですから。


「そして災厄の種類ですが、」

「フィルガ殿!もうそれくらいで、いいではありませんか」


 フィルガ様の説明をディーナ様が遮ります。

 リュームは、はっとして顔を上げました。


「いいえ!お聞かせ下さい。覚悟は付いております。ディーナ様、ありがとうございます」

「リューム嬢」


 リュームではなくディーナ様の様子に、フィルガ様は言葉を止められたようです。

 フィルガ様はお優しいのですが、術やお仕事の事に関してはとても厳しい先生です。

 それが例えディーナ様であろうともそうであると、ルゼ様からちらと聞いたこともあります。


「リューム嬢。呪いを解くには呪いの本質を知らねばなりません。ですがそれで心が折れてしまって、立ち向かう勇気を無くしてしまってはどうにもなりません。解りますね?」

「はい。いくら折れようとも、リュームは勝ちに行きたいのです。ですから教えて下さい」


 フィルガ様をしっかりと見据えました。

 フィルガ様は一度だってリュームを、憐れな被害者を見るかのように見た事がありません。

 ただそこにどれだけの心構えがあるのかだけを、量られているのだと思います。

 お互い逸らさずに頷き合いました。


「では改めて。災厄はシェンテラン家の――・・・・・・。」


 ・。:*:・。・:*:・。:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・


 改めてこれ以上ジャスリート家に、ご厄介になるのも気が引ける内容でした。


 どちらにせよもっと強力な聖なる加護が必要だという事で、リュームは神殿に上がる事になったのです。

 名目は巫女としてお勤めするため、実の所は呪われ穢れた身を保護という名のもと隔離するためにです。


「リューム嬢。あそこは俺たちのような神殿に属さない獣使いには冷たい目を向けるが、貴女にはそうではないよ。貴女のような稀有なる歌声の持ち主は、祭礼時の筆頭巫女として召されたって何らおかしくない。きっと今までだってあったはずだ。リューム嬢の耳に届く前に、ヴィンセイル殿が断っていたのだろう」


「ええ、そうよ。今も昔もあそこは能力者を集めておきたいのよ。民の絶大な信頼を得るためにも、こぞって力のある者達を探し出してきているそうだから。貴女は歓迎されると思う」


「そう。それにあそこには生え抜きの術者達が揃っている。術が複雑であればあるほど、神殿は威厳を掛けて紐解く。リューム嬢は何の気兼ねも心配もせず、堂々と助けを求めればいい」


「そうよ。そのための神殿なのですもの。それに・・・リゼライさんもギルムード殿もいらっしゃるわ。きっと助けてくれるわ」

「リゼライ様。ダグレスの?」


 ――お好きな、という言葉は潜めました。


 ここにはいない獣様が聞いたら、いらないくらい全力で拒否して怒るからです。


 そうそう、とお二人も声を潜めて応じます。


 おにいさま。おねえさま。


 心の中だけでそう呼びました。


「ありがとうございます!」


「何の。どういたしまして。かわいい妹のためだもの」


 お二人も神殿に赴かねばならないそうですが、どうやらリュームとは時間をずらしてのようです。

 それにあまり愉快な訪問ではないのは、尋ねるまでも無く薄々感じ取れました。


 先に神殿に巫女として上がる事で、何かお役に立てると良いのですが。


 そうやって、たくさんたくさんお話をして過ごしました。


 淡々と準備を進めるうち、あっという間に約束の日を迎えたのでした。


 ・。:*:・。・:*:・。:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・


 やはりご領主様に一目お会いしたい。

 いってきますとご挨拶したい。

 そして必ず帰ってきますからとお伝えしたいです。


 ですがリューム、ご領主様と会うのはルゼ様から禁じられております。

 前科のある彼ですから当然だと思います。

 また目の前で誘拐とか、駆け落ちと洒落込まれては笑えませんからね。


 唇を噛み締めていると、ダグレスがぽんとリュームの頭を叩きました。


「リューム。落ち着いたらヴィンセイルに会ってやるといいぞ」

「えっ・・・!?でも、だって、」

「いいから。耳を貸せ」


 そんなわけでリューム、ダグレスの手引きで巫女装束の正装のままご領主様を訪れてみました。


 ・。:*:・。・:*:・。:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・


「ご領主様!?」

「リューム?リュームか」


 リューム、慌てて駆け寄りました。

 ご領主様も立ち上がると、リュームへと歩み寄ってきてくれます。


 信じられない気持でいっぱいでした。ええ!


「ご領主様!」

「リューム!」


 ひったと見つめあいます。


 そして叫びました。


「何、やってらっしゃるんですか!?何をやってらっしゃるんですか―――っ!!何だってこんな所に―――っ!」


 がっしゃら・がっしゃらと精一杯、鉄格子を揺さぶりかけながら叫びました。

 肺活量人並みバンザイ。ジャスリート家の結界に守られての人並みの健康のおかげです。


「うるさい」

「うるさくしてるんです!」

「見れば解るだろう。牢に入って大人しくしている」


 ぴっ・・・ちゃ―――んと、どこからか水音が響いております、ここはジャスリート家の地下牢です。


 冷たく薄暗く、あるのは石畳と鉄格子だけという地下室です!


「言われずともわかります。リュームが言いたいのは、だからと言って何故っ、ご領主様ほどの方がわざわざ牢屋にとお尋ねしたいのです!」


 ・。:*:・。・:*:・。:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・


 しばし息切れした呼吸を整える間、沈黙が降りました。

 ご領主様はその間、鉄格子に掛けた手に手を重ねて下さっていました。


「まったく、相変らず。落ち着いたか」

「な、なんとか」


 頷いて見せると手を離されます。


「リューム、来い」


 鉄格子越しにも関わらず、ご領主様は両腕を広げられました。

 まるで目の前の鉄の檻など無きにも等しいと言わんばかりの態度です。


「抱かせろ」

「無茶言わないで下さい」


 言いつつもリュームは瞳をそらしませんでした。

 いえ。逸らせませんでした。


(貴方様のお側に)


 そう願いながらひとつ、瞬きました。




『神殿に赴く前に呪いの本質を。』


それぞれリュームを思いやって、それぞれが出来る事をやって送り出してやるんだという気持です。


ある意味、嫁入りさせるんだくらいの気持かもしれません。


( ↑ 一部 除く 。 )


珍しく 次々 さくさく 行こうと思います。


・・・行けるとオモイマス。


お付き合いありがとうございます!



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