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第四十四話 ジャスリート家の木漏れ日のもと

ダグレス 「リューム。皆、おまえの歌を待っている」


リューム 「はい。ありがとうございます。ダグレスもですか?」


ダグレス 「まぁまぁな」


リューム 「はっきりしませんねぇ」


――木漏れ日の下で生きている歓びを歌い上げましょう。



 

 ダグレスにエスコートされお茶会に戻ると、皆様からは拍手で迎えられました。


 ああ 何て良き日でしょうか。


 頬を撫でるそよ風に誘われるまま天を仰ぎ、その染み入る青さに感嘆のため息が風に乗ります。

 リュームの髪もそよと誘われ、楽しそうにしばし泳ぎました。

 おしみなく降り注ぐ明るい日差しを、天に向って精一杯両手を伸ばすかのように伸びた樹木の枝葉が受け止めてくれます。

 優しく受け止め切れなかった分は零れ、こうして地上に降り注ぐのです。


 こうして、心地よくざわめく樹木の下に出で立つ皆さま達へと。


 そうやって木漏れ日の中、生きている事を実感いたします。


 喜びをそのままに、愛しいこの日を抱きしめるようにと己が胸に両手を置きます。

 いったんは大事に抱え込むようにして、それから!それから、です。

 皆様にも広く受け取っていただけるようにと腕を広げます。


 光の束を皆様にお届けできますようにと思いを馳せます。


 でも自分の心に正直に耳を傾けますれば、想いはひとつだったりもします。


 何よりもあなた様に贈りたい等と願うのは許されますでしょうか?


 リュームの立つ場所から一番に離れておりながらも、一番視界に入り込む金の御髪に瞳を眇めずにはおられませなんだ。


 リュームの歌声はある程度、離れて聴いていただいた方がその余韻までもが風に乗り、よくよく届くようなのです。


 それは他でもないご領主様から教えていただいた事なのです。

 まだ、シェンテラン家に来て一年も満たない頃だったでしょうかね。


『オマエの歌声はどこまで響くのだろうな。そう思って距離を置いてみて気が付いた。広間ひとつ分ほど置いた方がよくよく響く』


 それは大事な大事な驚くべき発見の告白でした。


 今よりも身長差が顕著だったあの頃にぽつりと独り言のように呟かれた言葉は、空から降ってきた一滴の雨粒が頬に当たったかと思いましたよ。

 それくらい、驚きました。

 その一滴を受け止めた奇跡を、雨を待ち侘びた地面のように誇らしい気分に浸った事を忘れてはおりません。


 それは彼がリュームの歌をちゃんと聴いてくれているという驚きと共に何かが、この胸をかき乱しましたこと今もはっきりと記憶しております。

 その何かがあふれてリュームに歌わせてくれるのだと言う事も、ちゃんと知っておりますよ?


(ねぇ?ご領主様)


 なぜかしら熱くなる目頭のままに歌いだします。


 この想いがあふれるままに歌いだしましょう。


 せき止めてはならないのです。



 ・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*・。:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・



 光あふれ

 光に満ちて

 祝福されし


 栄光の道しるべ


 光とは

 この世に満ちた

 溢れる想い


 光の射す


 笑顔眩しく


 光り輝く


 生きることは光を受け止め


 光で指し示すこと


 光に抱かれ

 光に包まれ

 光に導かれること



 光輝く涙のあとすら


 生きた事の証


 いついかなる時を経ても


 光り輝き


 たなびく栄光の彼方


 ・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*・。:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・



 木漏れ日の中で歌います。


 今日来てくださった方々のために。


 光の祝福が降り注ぎますようにという祈りを込めて歌い上げました。


(どうか。この場にいらしゃった皆様に祝福がありますように)


 皆様に。

 そうは思うのですが、リュームと来たら。かのお方の方にばかり意識が行ってしまうのです。

 蘇るのは彼にまとわり付いていたあの闇の、すすけた気配です。

 今日お会いしてみてもその気配は感じられなかったので、ほっと一安心。

 ですがそれも、このジャスリート家の強力な結界とやらのお蔭らしいのです。


 おかげ様でリュームは、契約ナシでもこうやって元気でいられるのです。


 闇 ふ り 払 い た ま え 我 ら が 光


 あの方に闇が及びませんようにと祈らずにはおれませなんだ――。


 ・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*・。:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・



「お噂通り、いや。それ以上でございますなリューム嬢。これはこれは」


 にこにこと目尻のシワをいっそう深くされながら、拍手で迎えて下さったザカリア様に招かれます。


「恐れ入ります」

 一礼した後、促がされるままに席につきました。


「貴女のお義兄様が、なかなか人目に付かぬようにされるというお話も頷ける。わたしも同じようにするでしょうからね」

 はっと表情を強張らせたリュームを気遣うように、ザカリア様が微笑まれました。

「人目に付かないように、しますか?ザカリア様も?」

 怖気つきそうになりながら尋ねました。

「ええ。閉じ込めて自分の目以外に触れぬようにしたいと思いますよ、きっと。貴女には不憫でしょうが、貴女のためにもね」

「やはりこの黒い髪と瞳は不吉でしょうから」

「不吉?誰がそのように言い聞かせたのでしょうか?とんでもない!それは恵まれた色彩なのですよ」

「ええ!?」

「そうです。貴女は面を上げた方がよろしい。いや。俯かれる様も儚くて可愛らしいがね」

「あ・・・の、恐縮です」

「ルゼの心配がよく解る。ああ、本当に貴女のお義兄様と来たら!何て事をしたのかと思わずにはいられなくなりますな。気持ちは解らなくもないが」


 リュームはといえば、何とお答えしていいものやらと曖昧に微笑んでみました。

 ザカリア様はご自身のあごひげを撫でながら、続けられます。

 視線を幾分、遠くにさ迷わせながら。


「リューム嬢は知らぬかもしれないが、貴女のお義父様に貴女をうちの息子の花嫁としていただけないだろうかと申し込んだ事もあったのですよ。今から四、五年ほど前です」

「ええ。はい。あの、お話だけはお伺いしておりました。ただ、そういう話があったがお断りしたという事だけは聞いております。まさかザカリア様とはお聞きしておりませなんだ」

「まだ幼いながらも貴女は人目を引いておりましたから、これは急がねばと思ったのです。そのせいで、前ご領主殿には何とも難しいお顔をさせてしまった。それからでしょう。シェンテラン家が総出で貴女をしまいこもうとし始めたのは・・・申し訳なく思っておりますよ」

「そ、そんなことは!あの、それだけでは、ないと思います。色々な・・・そう、色々な要因が重なりました結果でございます」


 例えば勝手に抜け出したり、挙句に誘拐されかけたり、怪我をしたり、熱を出したりなど。

 そりゃあ、もう色々と!


「しつこく、未練がましいとは思うのですがあの時の気持ちと変わりませんよ。今日は今さらながらお話を蒸し返そうと思っていた」

「蒸し返す?」

「そう。どうでしょう?うちの息子達と会ってみませんか、とね」

「えぇと、あの。ザカリア様の」

「ええ。三人もおりますよ。一番上はもう三十に手が届く。次男は二十五。貴女のお義兄様と同じ年頃だ。末は二十歳になったばかりで貴女とは歳も近い。いかがですかな?」

「あの、その、そういったお話は義兄の許しを得てからでないと、そのぉ」

「それはさておき。貴女のお心はどうでしょうかね?お嫌ですか?」

「あの・・・申しわけありません。ザカリア様のお話はお受けできません」


「ふふふ。わかっておりましたよ。貴女が歌いながら誰を思いやっているのかは、この場に居合わせた者ならば誰だって解ります」

「だ、誰だってですか!?」

「ええ。例えばそう。あそこで俯いて、たそがれているメルシュア商会の跡取り殿とか」


 こそっとザカリア様は呟かれましたが、気まずくてとてもじゃありませんがそちらを向く事ができません。


「貴女に縁談を持ち込んでも全てつき返されるとは有名な話ですよ」

「えええええ!?」

「ご存じなくて当然でしょうね。他には養子縁組の申し入れもね」

「一体、何故でしょう?さっさと他家に出されればよろしいと思うのですが」


 ――厄介払いできたというのに。


 思わず漏らした呟きに、ザカリア様がほ・と笑い声を上げられました。


「おやおや。若様・・・ご領主様も大変だ。こういうのを自業自得というのだったかな?」

「自業自得ですか。よく耳にする彼への評価です。主にルゼ様からですけれども」

「ええ。ルゼからもそのように聞いておりますよ。そこに漬け込めたらと思ったのですがね。息子ばかりで娘に恵まれなった父親としては。当時のシェンテランの主が羨ましかったものですよ。宴のたびに可愛らしい娘を養女に迎えたと、あまりに自慢げなのでね」


 ザカリア様が茶目っ気たっぷりに片目をつぶって見せるので、リュームも釣られて笑ってしまいました。


「貴女は光の中で生きるのが相応しい。先程歌われたようにね。木漏れ日の中に在りなさい。闇など見据える必用などありはしないのだから」


 ・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*・。:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・



 ザカリア様や皆さんと過ごせて今日は楽しゅうございました。


 楽しい時間というのは、本当にあっという間なのです。


 皆様方をお見送りするために、ジャスリート家の正門に集まりました。



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 ザカリア様とはまたお会いしましょうと約束してから見送りました。

 リド様とも、ぎこちなくもそのように約束してお別れしました。


 皆様とお別れを惜しんでいるそんな中、突然名を呼ばれました。


「リューム!!待って!!」


 聞き覚えの無い、少しだけ甲高い声はよく響きます。


「え?え、と、はい?」


 返事をしたものの、誰かはわかりませんでした。驚いてその声の主を振り返ります。


 夕暮れにそまる空に映える、白銀に近い金の髪がふわふわです。

 少しだけクセのある、空気を孕んだ綺麗な髪です。

 瞳はそれよりも濃い琥珀色です。

 そんなあめ玉みたいな綺麗な眼でリュームをじっと見ているのです。


 どなたでしょうか?

 今日の招待客のお一人にしては、今初めてお見かけしました。

 白が基調の目立つ装いの彼を見逃すとは考えにくい話です。


 そんな彼はどこか思い詰めた表情で駆け寄って来ます。

 リュームより背がほんの少しだけ高いくらいで、そんなに目線の高さも変わりありません。

 そのせいか目が合います。


 きれいな少年です。

 頬の線がまろやかで、あまり骨ばった男らしさを感じさせないものですから、リュームよりも少し年下だと思いました。

 身に着けた衣装の上着を飾る刺繍も金糸のようで、豪華な雰囲気を醸し出しております。

 まるで・・・そう。まるで王子様とやらみたいではありませんか、彼。


「リューム」


 そんな彼に名を呼ばれました。

 どなたでしょうかと首を傾げます。


「リューム。帰るのか?シェンテラン家に」

「え?」


 真剣な眼差しとぶつかります。


 眼差しを捕らえられたまま、腕を取られました。

 その視界の端で、何かが動いたのも見ましたが、何かはわかりませんでした。

 何せ、次の瞬間には腕を引き寄せられ、少年の腕の中でしたから。


「リューム、レドがイジワルしたから帰るのか?」


「レっ・・・レド!?レドですか!?」

 答える代わりにでしょうか。

 ぎゅうぅと強く抱きこまれてしまいました。

「リューム。レドが悪かった。上着もリゼライかディーナに頼んで直すから、ゴメン」

「レド!わかりました!わかりましたから、お放しください!!」

「イヤだ。せっかくリュームにこうしたくて、この姿になったのに」

 ぐえぇですよ!

 皆、皆さん見ております。(何故か微笑まれながら。)

 お助けくださいっ!とじたばたもがきました。


「レド!おまえは!どこに隠れていたかと思えば・・・その姿はリゼライの力添えか?」

 腕を組んだダグレスが、睨み下ろしてきます。

 そんな視線からまるで庇うように、よりいっそう抱き込まれてしまいました。

「リゼライは関係ない。あの男がリュームにしていたように振舞いたいと願っただけだ」

「やれやれ。恋慕の情を知って目覚めおったか。面倒なヤツ。いいから、放してやれ」

「イヤだ!」

「放してやれ!ますます嫌われたいなら、話は別だが?」


 腕がゆるみました。


 その僅かな力の変化を見逃さなかったらしいダグレスが、レドから引き剥がしてくれました。

 そのままダグレスの背に庇われます。


「リューム!」

「ちょっとは引く事も覚えろ、ガキが」


 すぐさま腕を伸ばしてきたレドの額を、ダグレスが手のひら一つで制してくれました。

 レドには申しわけありませんが、ダグレスの背中にしがみ付いて避難です。


「ううぅ」

 あー!びっくりしました!

 レド!

 レド、でしたか!


「リューム。もうイジワルな事しないし、言わないって約束するから!だから帰るなんて言わないで、レドといて!」


「ええ、ぇと。レド、あのですね?」


 そろりとダグレスの背に隠れたままで覗き込みますと、レドの背後にはご領主様が立っておられました。

 彼のお馬さまの手綱を引いております。

「レド殿。白き獣殿?先程とは変わっておられるようだが」

 静かにレドの名を呼びながら、確かめるように背後から正面へと回り込みました。

「おまえ、リュームの何?」

 レドが明らかに声を強張らせて尋ねましたが、ご領主様は意味ありげに唇の端を持ち上げられただけで、何も答えませんでした。


「ダグレス・・・リュームにも挨拶させてくれないか」

「若領主。帰るのか」

「ああ。世話になった」


 お馬さまと一緒に、ご領主様は滑らかな動きでリュームたちへと近付いて来られました。


「リューム」

「はい、ご領主様。本日は、わざわざお越しいただきましてありがとうございました」


 思わず涙ぐみそうになりながら、ぺこりと頭を下げました。


「リューム、今日は・・・帰るぞ」


 ・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*・。:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・


 はれ?


 そう思いました。

 身体がふわんと持ち上がりましてですね、何でしょう、この感覚は久しぶりですねー?等とのん気に構えておりましたら(全然構えも何もあったもんじゃないと思われますね)目線が高いわけですよ。

「わ・・・ぁ。高いです・・・っ、って?えええぇ!」

 そのまま身体に感じたのは嫌にがっちり掴まれた腰と、ぶち当たるかのように吹き付けてくる風でした。


 リューム嬢っ!


 待て!若領主、こら!待たぬか!


 あらぁ――?


 リュー――ムゥ!!!


 等などの叫び声もあっという間に彼方です。


 ジャスリート家の門構えもどんどん遠ざかって行きます。


「ごりょ、ごりょしゅ、さ・・・ど・どうされまひ、たか」


 ぜはぜは、ぜーはーぜーはと肩で呼吸をしつつ、尋ねます。


「黙っていろ。舌を噛む」


 ドカッドカッドカッとお馬さまの蹄が、力強く大地を蹴り上げる音と風とに何もかもが飲み込まれます。


「これではまるで」


 ええ。まるで・・・まるで、これは。


 (これはもしや!もしかしなくても、人攫いみたいではないですか!?)


 ご領主様は何も仰いませんでした。


 ・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*・。:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・



 しばらくお馬さまの背に揺られていると、目の前に小さな小屋が見えてきました。

 その頃にはお馬さまも早足程度に落ち着いておりましたから、いくらか落ち着いて周りを見渡す事が出来ました。


「あれは、確か」

 シェンテラン家の狩猟小屋だったはずです。

 昔、お義父様とその頃は若様とお呼びしていたご領主様のお供をしたことがあったのです。


(その昔。狩のお供をしてお出掛けした際にここに来ましたよね、確か。そう確か・・・あの時。リューム派手に転んで怪我をして、ここで怪我をしました何て言い出したら叱られると思ったから黙っていたら傷口が痛んで熱が出て、それは・それは・そーれーはー怒られたのでしたよね。ああ、何てヨロシクナイ思い出)


 そんなこんなで気分も沈みますので、回想はそれくらいにしておきたいと思います。


 という事はデスネ、かなりシェンテラン家に近い場所にまで来てしまったという事です!

「ご領主様。どうされたのですか?」

「降りるぞ」

 先に降りたご領主様に抱きかかえられる格好で、下ろしてもらいました。


「何故、俺から離れたのか改めて訊きたかった」

 下ろしてもらいながら、唐突にそう尋ねられました。

 とん、と軽やかにつま先が地上に着地すると同時に答えます。

「その方がご領主様のためだからです」

「俺から逃げたかったのか?」

 頬に手を添えられ、顎を捉えられました。

「逃げ出したい気持ちも正直、無かったわけではございませんが・・・また少し違う気がします」

「俺から逃げられるとでも思っていたのか?」

 覗き込まれた視線に及び腰でしたが、そんな事は許されないようです。

 逸らしようの無いほど、眼差しを覗き込むのは反則だと思います。

 そんな事したら、あっさり暴かれてしまうに決まっているじゃないですかねぇ?


「いいえ。逃げても捕まえられてしまうだろうな、って思っていましたよ。ご領主様ならまた、捕まえて下さるものとも信じて・・・いえ。願っておりましたよ」

「当たり前だ。逃れられると思うな。微塵も」


 ぎゅう、と抱き締められるとこの胸までもが同じようにぎゅうっと軋みを上げました。

 その苦しさに思わず眉根を寄せていました。


「リューム?」

「苦しいです・・・胸が少し」


 他にも色々と。

 しがみ付いていた腕とか、馬に揺られたお尻とか。

 慣れない乗馬に体中が軋みを上げておりますよ。

 ぎっしぎしですが、言うてはならない気がしますので黙っておきましょう。


 そう思ったのですが早速、見破られてしまったようです。


「リュームの身で乗馬は辛かろう。無茶をさせたな?許せ」


 すぐさま抱え上げられて小屋に入ると、ご領主様から椅子に腰掛けさせてもらい、お水とお薬を用意していただきました。


 準備万端ですね、何気に計画的犯行のご様子。


「綺麗に整えられておりますね、ここ」

「俺が時々使っているからな」

「そうですかー。ここは静かですね」

「ああ。だからちょうどいい」

「ちょうど?ああ、お一人になりたい時にですか?」

「・・・・・・そうだな」


 また、あの目で見られてしまいました。憐れなものをみるような。呆れたものをみるような。


「わかりました!」

 ハイ!と勢い良く右手を挙手です。

「言ってみろ。その特殊思考の導き出したものを。いい加減、覚悟も出来ている」

 何の覚悟でしょうかね?大げさな。そういぶかしみつつも、答えます。

「ええと。ご領主様はリュームをここへ連れて来たかったのですね!」


「ああ、そうだ」

 なかなか良い調子のようです。

「それは!」

「それは?」


「リュームをここに捨てにいらしたのですね」


 まるでこれは手に負えないコを森に捨てに来たみたいですもの!


「は!?」

「捨てるとまでは行かなくても、あのままルゼ様にご迷惑をお掛けする訳にもいきませんよね?だからといって、またシェンテラン家に戻っても仕方が無いですしね。こうやってリュームが森の中で一人で生活していければ何の問題も無い訳です。街中で行き倒れの心配も回避です。リューム、ここで暮らせば誰の迷惑にもなりませんしね」

「リューム」

「正しいご選択だと思います」


 ただ最初はちょっと自信が無いので、少し救援物資など期待してしまいますが。



『レド、変身』


仮タイトルです。


そしてそのまま別の仮タイトル(要は書きかけ。)『誘拐犯と化す領主』になだれ込みました。


レド、どこまでも当て馬っぽい。


そしてリュームよ、状況に気が付こう?


ヴィンセイルは強行手段に出たんだよ?


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