第四十三話 ジャスリート家で見つけた眼差し
「眼差し」
今までもあったけど、リュームが見つけられなかっただけだと思います。
(がんばれ、ヴィンセイル。)
「レド!そぇは、ご・・・ごりょ、ごりょしゅサマのです!リュームのではありませんので、お止めくださいっ」
思わず声が上ずりました。
レドは耳を貸してはくれません。
駆け寄って引き止めようにも、ご領主様は腕を放してくれません。
ビ・ビビィイと上着は糸を引いてひきつれて行きます。
それと同じ速さで涙が一滴、頬を伝いました。
それは・・・ご領主様の上着なのに。
(ああ。ちゃんとお返ししなきゃって思ったのに。相応しい縫い取り物をして。それなのに)
約束を果たさないままずるずると今日まで来てしまった結果がコレです。
「っ・・・う・ぅえっ」
確かにリューム、ご領主様があんまりイジワルだから、大嫌いで上着なんてこうしてやる!って踏みつけたり、投げつけたりもしました。
人様の物を粗末に扱う何ていう罰当たりな事をしでかしたリュームは、それに相応しい報いを受けているようです。
そうです。
リュームときたらそんなヒドイ扱いをしていたのです。
大事に大事に。
一針、一針想いを込めて。
それを――。
そんな扱いされたらこれだけ哀しいんだってよく解りました。
バチが当たったのに違いありませんね。
申しわけなさ過ぎます。
罰を受ければいいのはリュームだけなのに、せっかくこんなに上等な上着をこしらえて下さった職人さんたちや、それに相応しい代価を支払われたご領主様に申しわけが立ちません。
それに、その刺繍は――彼のための!
シェンテランの当主として、このエキナルドの地を任された者への祈りの形だというのに。
ご教授下さったルゼ様とディーナ様にも、何だかんだと応援して下さったダグレスにも合わせる顔がありません。
「レド、レド、お願いだから止めて下さい。それはリュームの物ではないのです。ご領主様の物なのです。リュームの物でしたらいくらぼろぼろにしても構いませんから」
「リューム」
びっく、と思わず身をすくめました。
「も・・・申しわけありません!申しわけありません、もうしわけありません、申しわけ、あり、ありませっ・・・っく」
泣きそうになるのを堪えながら、心からお詫びしました。
「何を言う。いい、リューム、構うな。」
背後からやんわりと。かつ、しっかりと抱きしめられたままであった事を思い出しました。
こそり、と耳元に寄せられた唇が『見せ付けてやればこの獣は引くだろうから』と囁きこみます。
微かに湿った熱い吐息と共に。
たまらず、リュームは思わず首をすくめました。
すぐさま笑い声も続きます。
(ええええええええ!?ご、ご領主様が笑っ?笑い声を上げられた?何に?何をっ・みせつける?)
くすぐったさと湧き上がった疑問とを同時に乗せて、ご領主様の横顔を見やりました。
思いがけず間近であったため、彼の頬を掠めてしまった事に驚きます。
何がって?リュームの唇が!
何となく予想はしておりましたが、叩き込まれた次なる行動もあっさり見越されておりましたよ。
リューム両手首をがっちり(しかも彼は片手!)と掴まれていて・・・でゴザイマス。
要は逃れるべく、両手を突っぱねて顔を背けようにも身動きできません。
しかも背後から回されていたもう一方の手が、肩からわき腹をさぐる様に降りて腰も抱えられてしまいました。
「嫌っ!」
こちらも負けずと条件反射です。
思わず、思い切り拒絶。
当たり前です。慣れません。馴染みようがありませんから。
助けて下さい。今すぐ、解放願います。
「リューム」
いくらか苛立ちを滲ませた声に恐れをなして黙り込みます。
そのおかげで、口を押さえられることは免れたようです。
眼前に迫っていた彼の手のひらが遠のきました。
そのまま彼の長い指先は頬をなぞり落ち、顎を捉えます。
「コレは」
コレ。
すなわち、リュームの事でしょうかね。
ぐいと顎を持ち上げられました。
レドと上着から、目を逸らす事も許されませんな状態です。
さも自分の物のような物言いそのままの扱いです。
「コレの至らぬ点の責任は、甘やかして育てたこの俺にあります。そうまで言われるのならば今日このままコレは連れ帰りますゆえ、それまでのご辛抱です。白き獣殿?」
””連れ、帰る?””
「ええ。もとよりこれはシェンテラン家に属するもの。公爵家に置くには不釣合いな娘。これ以上恥をかいてはなりませんから」
レドは目に見えてと身体を跳ね上げました。
口に上着を咥えたまま、固まってしまいましたよ。
可愛そうに。この言い方をするご領主様はおっかないですものね。同情いたします。
でも~このように何やらご機嫌でらっしゃり、流暢な口調のご領主様のが一番怖いと感じるリュームって一体。
この時にしばらく分のお愛想を使い果たした挙句、リュームに辛く当たってみたりは無しでお願いしますね。
ぎゅうと胸元の服を掴んで目を閉じてしまいました。
今耳元で聞いた言葉に、胸を抉られます。
(これ以上・・・恥を。恥をかいて。ご領主様に恥をかかせてはならないのです)
この後、やっぱり、なってないと言って罵られませんように。
レドにも。
出会って間もないレドにも『大嫌い』だと言わしめる、リュームっていう存在は一体何なのでしょうか?
本当は皆さん、そう思っていらしたのかもしれませんね。
優しいから、皆。
仕方なく優しくして下さっていたのかもしれませんね。
ダグレスもディーナ様もルゼ様もフィルガ様も。
建前であったものをそのまま都合良く解釈したリュームを、何てあつかましいのだろうと呆れられていた事でしょう。
(申しわけありません、申しわけありません、申しわけありません、申しわけありません)
皆様のお顔をそれぞれ思い浮かべながら、心の中で詫びました。
「リューム。可愛そうに。ここまで獣に疎まれながら公爵家に身を寄せるのも辛かろう。おまえは何の気兼ねも無くシェンテラン家に帰ってくればいい」
「ご領主様?」
あの、と口にするよりも早く抱きすくめられてしまいます。
「われ等はお暇するとしましょう、獣殿。コレが世話になったようで礼を言います。これからすぐ公爵にはご挨拶に参るとしましょう」
””好きにすればいい!!””
レドは勢い良く身を起こすと、ものすごい勢いで窓から飛び出して行きました。
口にはご領主様の上着をくわえたままで。
(レド。行ってしまいました)
引き千切られた上着の、袖の部分だけが残りました。
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せめて残された袖に駆け寄りたかったのですが、相変らずご領主様の腕から解放は許されません。
あっさり、抱えなおされ彼に向き合わされてしまいました。
「リューム。いいから泣くな」
「は、はい。申しわけございませんでした」
見上げた顔をすぐさま下に向けました。瞳もぎゅっと閉じます。
彼が泣くなという時は、絶対なのです。
泣き止まねばならないのです。
そうでなければ、彼の機嫌を損ねてしまいますから。
「泣かずともいい」
「申しわけありませんっ、止まらなくて。も・少しお待ち下さぃっ」
「謝らずともいい。オマエは悪くない」
堪えようも無く涙が頬を伝う事に怯えながら謝りますと、予想もしなかった穏やかな声に驚きます。
慰められているのでしょうか?
ただただ驚きます。
俯いていた顔を上げて、ご領主様の表情を思わず窺ってしまうほどに。
ふんわりと、ほのかな笑みを浮べたご領主様の瞳とかち合います。
(わ・・・笑って?微笑んでいらっしゃる!?)
正直、初めて見る彼の表情に衝撃を受けてしまいました!
こ、こんな、こんなにも、その。
にこにことまでは行かなくても、眉根の寄っていないご領主様はリューム初めてです。
限りなく優しく穏やかな常緑の瞳は深く、深く、深くて。
見つめても見つめても底の無い、包み込まれる深さに飲み込まれます。
リューム、不覚にも見入ってしまいました。
いいえ、魅入られてしまっていたと表現する方が相応しいでしょう。
しばし時を、何もかもを、忘れていたようです。
もっと見ていたいと思いました。
もっとと言わずに、ずっと、ずぅっと。
許されるのならば。
焼き付けたいと願う瞬間を、リュームは見つけてしまったようです。
まぶたを閉じて思い浮かべるのならば、このご領主様を選びとうございます。
今までの怖い・イジワル・しかめっ面の彼が全部消去されるくらいの威力ですよ!
(わ―!わ―ぁっ、わあああああですよ!)
どうしたわけか、リューム頬が一気に熱くなりました。
息を詰めてただその瞳に向き合っていた模様。
時が止まってしまったかのような錯覚に陥ります。
全て静止しているかのように思えた瞬間を動かしたのは他でもない、ご領主様でした。
「リューム・・・おまえは泣かずとも良い。自分を責める必要もない。いいな?」
言って聞かせるように囁きながら、彼の指先がリュームの頬を辿ります。
「・・・・・・。」
はいと心の中でお返事して、こくんとひとつ頷いて答えました。
言葉が出てきませんでした。
唇は言葉を紡ぎだそうと開くのですが、言葉にはなりませんのです。
申し訳なくて、こく・こく・こく・こくと何度も何度も首を縦に振り続けました。
「リューム。くれぐれも、俺以外にその仕草での返事はするなよ」
こくんと、またひとつ慌てて深く頷きます。
だって。言葉が出てこない。
ご領主様はそんなリュームをまじまじと見つめると、はぁとため息と共に突っ伏してこられました。
再び、額同士が触れ合う程の距離で念を押されます。
「頼むぞ。危なくて仕方が無いからな」
もちろんですとも!こんな、子供じゃないんですから淑女にあるまじき作法だって解っておりますよ!
他の方にはご無礼ですものね。しませんよ!――多分。
しかし、危ないとは?一体、何の事やらですけどね。
額をくっ付けられたまま頷くので、彼の髪がリュームの額を掠め続けます。
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「アレは。あの獣の態度は好意の裏返しだ」
「裏返し、ですか?」
「俺とて思い当たる。アレは子供じみた愛情表現だ。許してやれ」
「?は、い・・・っく」
許すも何も、リュームは別段怒ってはいません。
ただ・・・哀しかったのです。それだけです。
「こうなる事は予想が付いていた。だからオマエを人前に出したくないのだ」
「こうなる、事」
それが指す事柄は何でしょうか。
少し考えれば分かる事です。
それは『彼に恥をかかせる』という事でしょう。
己を弁えて行動しろ、とかつて繰り返されたお小言すらも蘇って切ないばかりです。
しゃくり上げそうになるのを堪えつつのお返事は、息つぎすら苦しいほどでした。
頭を撫でられます。
(ぶつ?ぶたれる?だいじょうぶ?アレは演技?本当はぶってやりたいのでわ?)
始めはそう考えてビクビクしてしまいました。
「リューム。怯えなくてもいい。オマエを叱ったりなどしないから」
(ほんとうに?ぶ、ぶったりしませんか?)
そう尋ねたくとも怖くて直接尋ねる事は出来ませんでしたが、眼差しは雄弁に問い掛けていたようです。
「ああ。大丈夫だから安心してくれ」
ご領主様に触れられるのは、いつだってずっと怖いのです。
いつからか――記憶は定かではありませんが。
恐らく、出会って間もない頃からずっとです。
彼の大きな手が近づけられる度に、自分はぶたれるのだ、疎まれているから当然なのだ、と思って来ました。
実際、ぶたれたことは無いのでおかしな話なのですが、そう思ってしまうのです。
覚えて無いだけで、そんな事もあったのかもしれません。
怖すぎて記憶から抹消なんぞ、リュームの事だからありえない話ではないかもしれません。
そう思い当たった途端、身体が強張りました。
怖い。
その感情が沸きあがるともう抑えようが無いのです。
恐怖に飲み込まれて行くは視界すら闇に支配されて行くかのよう。
「や・・・!やぁっ!!」
「リューム。大丈夫だから落ち着け。俺はオマエに乱暴したりなどしないから、落ち着いてくれ」
逃れようとした身体を抱え込まれ、そのまま幾度も頭から首すじ、果ては背中までを撫でさすられます。
幾度も幾度も、それこそ幼い子供にするみたいに。
優しく。それでいて強く。頭がぐらぐらします。
加減をお願いします。
彼にしてみたら充分手加減しているつもりかもしれませんが。
「リューム」
――許してくれ。
確かにそう呟いてから、彼の唇が額に押し付けられました。
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リュームが落ち着きを取り戻すまで、ご領主様はずっとそうやったままでいました。
落ち着いたような、落ち着かないような。
恐怖は静かに引いて行きましたが、今度は気恥ずかしさが復活です。
やれやれ。リュームと来たら忙しいですね。
どうしたらいいでしょうか?
いたたまれずに身を捩りました。
「残念だがな」
ふいに呟き落とされ、何の事でしょうかと聞き返します。
「え?」
「俺に合う縫い取り物とやらだ。オマエの力作なのだろう?」
「ええ、と。あの・そのぅ・えと拙いばかりでして、その」
「何せ夜な夜な夜なべして、まるまる六日以上かかったそうではないか」
「なっ・・・何故それを?あ!あのもしかして、黒いお手紙配達係り様がばらしたんですね!」
「いや。公爵だ」
「ルゼ様でしたか。てっきりダグレスかと思いました」
「黒い・・・手紙配達係り?ダグレスの事か。リューム、随分とあの獣と打ち解けたようだな」
「はい?」
「手紙――。俺は一通しか受け取っていないが?」
「はぃ?そうですね。リューム、一通しか書いておりませんから」
当然でしょう。こくこくと頷きつつ、首を傾げました。
「随分と可愛がられていると見える」
「可愛がられては、う~ん?いないと思いますが、そうでもないとも言い切れないような?」
「どっちなんだ」
「どっちなんでしょうねえ?」
「俺が訊いているのだが。」
それもそうですね、とリュームは今までの事をお伝えすべく言葉を探しました。
「ダグレス、大いばりでイジワルな事ばっかり言いますから。でも、何だかんだと親切に面倒を見てくれます。レドもそうです。あ!でもそれはお二方の大切なディーナ様が、リュームの面倒を見てやって欲しいとお願いしてくれたようなのです。だから、仕方なく見てくれているのだと思います」
『オマエのような病弱、野垂れ死にされてもこの家の恥だ。仕方が無いから置いてやる。』
幾度も耳に馴染んだ言葉は消し去りようもありません。
そうです。仕方が無いから、なのです。
「リューム。その発想は何故なんだと問い掛ける俺が馬鹿なのだろうな」
「ば・・・?ご領主様が?」
そんな代名詞はリュームに相応しく、自虐的に呟く彼には不釣合いで驚いてしまいました。
「仕方なくというのはただの照れ隠しだ」
「照れ隠し?」
何のためにでしょうか?
疑問を口にしないまま見上げれば一瞬、瞳を逸らされてしまいました。
すぐさま戻されましたけれども、ほんの一瞬だけ。
次にまばたきする間には、打って変わってひったと強く見つめられておりましたよ。
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「リューム」
――はい。何でございましょうか?改まった様子で名を呼ばれましたよ。
「改めて請う。このヴィンセイル・シェンテランの・・・・・・」
――請う?
・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・。:*::・。:*:・。・::*:・。。:*:・
どかどかどかどかと勢いの良い靴音が近付くと共に、大きく扉が開け放たれました。
「リューム!」
「はぃ?あれ?ダグレスですか。どうされましたか」
彼の何か思い詰めたような必死の形相に、リュームは何事かと辺りを見渡してしまいました。
火事ですか?強盗ですか?
それくらい彼の目は血走り、息が上がっておりましたので慌てます。
「どうもこうもあるか!?レドがリュームが助けを求めているというから駆け付けたと言うのに、まったく!!」
「まあ。レドが?」
何故、そうなるのでしょう?
訳が解らず、ただ驚いてダグレスを凝視してしまいました。
ダグレスはといえば、引き千切られた上着の袖とリューム達をと交互に見やってから唸りました。
「ああ・・・そうか。レドめ。アイツは全くもってガキだからな!あああああ!レド、どこだっ!出て来い!」
「あの、ダグレス?どうか落ち着かれて下さいませ。お隣にはミゼル様がお休み、」
なのですとたしなめるよりも早く、かちゃりと寝室の扉が開きました。
ミゼル様です。どうやら遅かったようです。
眠そうに目をこすりながら、こちらをうかがっておりました。
大きな物音に、突然起こされたのでしょう。
寝起きの不機嫌さも手伝ってか、今にもぐずり出しそうなお顔です。
「りゅーむぅ?ヴィンセイルも、どうしたの?」
「ああ、ミゼル様。お目覚めになったのですね。ここにおりますよ」
ご領主様の腕をすり抜けて、ミゼル様に駆け寄りました。
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「邪魔したようだな、若領主」
「ダグレス。貴様」
「レドめ。あれもガキだからな。しかしこれでよく解っただろう?」
「何の事だ」
「ふふん?我があえて口にするまでもなかろうよ」
「だから何の事だ」
ミゼル様の御髪を整えている横で、そんなご領主様とダグレスのやり取りが聞こえてきました。
何ですか。お二人こそ、何気に仲良しではないですか!
いつのまに。
男の方同士の友情は種族を超えているようですね。
良いことです。リュームは満足です。
そもそもご領主様に気安く話し掛けて、ばんばん物が言えるのはダグレスくらいしか見当たりません。
まさに打って付け。
一人、うんうんと頷いておりますと、ご領主様の何か言いたそうな視線が突き刺さります。
「ご領主様こそ、ずいぶんと仲良くおなりではないですか!ダグレスと」
「何故だ。どこをどう取ったらそうなるのだ、リューム?」
「我も同意見だ」
「そういうところがです」
「「気持の悪い事を言うな」」
息ぴったりに合った否定のお言葉も照れ隠しの模様。
腕を組みリュームを見下ろす格好までが、左右対称です。
「バカを言うな」
「まったくだ!」
しまった。お小言も二重でしたか。
リューム、首をすくめました。
・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・。:*::・。:*:・。・::*:・。。:*:・
「リューム、ルゼが待っている。戻るぞ。若領主も、ミゼルも行くぞ。レドは後で説教だ」
忌々しげに呟くダグレスに三人で続きます。
「ダグレス。お手柔らかに」
「リューム。アホウ、もっと怒らんか!計画を台無しにされたのだぞ!まったく」
「・・・・・・。」
「リュームぅ、どうしたの?」
「何でもありませんよ、ミゼル様。さ、戻りましょう」
「・・・・・・。」
そんなやり取りを交わしながら戻りました。
ご領主様は先程と打って変わって、一言も発されませんでした。
――怖いです。
仮タイトルは『レド、いじめっこ』でした。
レド、どこまでもお邪魔虫でも良かったかな。
ダグレスは頃合を見計らって邪魔する気満々です。
今回書いていて、リュームがちょっとだけ『かわいいかも。』と初めて思いました。
でもウザイと紙一重。
恋するオンナノコはそんなもんですかね。
親ばかですみません。
お楽しみいただければ幸いです。