第一話 シェンテラン家のジ・リュームは
テーマは『シリアス』ですが。
内容は『コメディ風味』でございます。
これが俺の呪った相手――。
(コイツが?ただのみすぼらしい子供じゃないか。)
貧弱な体つきから、栄養状態の劣悪さを思い知らされた。
それなのに――母親に手を引かれてその少女は、実にあどけなく笑って見せた。
初めて彼女に出会ってから、あれから七年――・・・。
彼女に与えた『呪い』なるものが、徐々に彼女を蝕み始めている。
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題して「この脆弱極まりない身体をどうにかして人並みに持っていこう!お〜!!」月間開催中なのです。
――がんばるぞお!うん!!がんばらねば。(切実。)
一人張り切ってはみたものの、実際はどうしたものでしょうかね。思わず途方に暮れたあたりで、先行きが怪しいものですが怯んでいる暇なんてありません。
怯んでしまうのは、あの方の『いいから大人しく寝ていろ!煩わせるな!!』という怒鳴り声です。
加えて心底『面倒なんだよ、オマエ』とでも物語っていらっしゃるかのような、切れ長の瞳でございます。
正直その深みのある常緑の瞳に曝されると、震え上がります。怖いですから、無条件で全面降伏――。
ええ。左様でございますわぁねぇ、本当に。なっちゃあおりませんですわよね、わたくしの身体。
「・・・・・・ぅ・・・・・」
思い出したら何だかまた、泣けてきてしまいましたよ。
つい先日もたっぷり煩わせちまいましたからね。それはそれは。お怒りでらっしゃいましたとも。
何をやらかしたのかって?
自分でも思わず、周りに尋ねたと同時に叱られました。
自分の住み慣れた館内をうろちょろしたあげくにですね・気が付いたらですねぇ。
なぜか、寝台に寝かしつけられていたんですよ。なぜでしょうかと、記憶を辿りました。
――どうやら張り切って庭仕事の手伝いを、買って出たはいいものの。
昔――何の対策もしないまま庭に長時間いたら、体調をばっちり崩して寝込むという事があったものですから。また繰り返しでもしたら、お手伝い禁止令が出されそうなので。それだけは嫌なので。走りました。
日除けになるよう、ほっかむりになるようなストールをばですね。取りに走ったんですが、それがいけなかったようです。
いかんせん、なかなか暑い日でしたから。
流石の私も館内行き倒れは初めてでしたから、驚きました。
ですけれどもね。さすがに高熱出してる病人相手に、全力で怒鳴りつけるなんてぇのはですね。
なさらないんです、あの方。私それをちゃんと知っています。堪えて下さるんです。本当は怒鳴りつけてやれたら、楽でしょうが私みたいな病で弱ってるやつをですね、罵倒するのは流石〜に人間として後々何かひっかるものでしょうからね。
同情を買ってるんですね。私。それも、また申し訳ない。
――基本的に、優しい方なんだと思います。
単に私の事は心底嫌っていらっしゃるので、その『優しさ』を使う気になれないというか。何とも早ですが。
本気で面倒臭いらしいのは窺えますですよ。
本心を隠し立てする気は無いんだよ、みたいな?――ははは・・・はぁ〜〜〜あぁあぁですかね。
笑うしか。そう、笑うしかないですね。
「が、がんばるぞぉ〜!!」
ぐしぐしいってるのは、嫌いです!!あの方の重荷を軽くするため、自立するのが私の目標ですから!
そのためには健康で丈夫な身体になるのです。いくら歩いてもくたびれないというのは、いきなり高望みしすぎなので・・・せめて、一人で街に出れるくらいの足にします。
誓います。そのためにまずは歩くことから、始めたいと思います。
身体が弱いのは少しづつ、少しづつ体力をつけて行くことで改善していけるはずです。多分、いや確実に。
問題はそれが身に付くまでの対処の仕方です。何で乗り切るか。それは『気力』なるもので補うしかないと思うのです。
病は気から。ええ、そうですとも。苦しいだの、痛いだの。
そんな弱りきった事をですねぇ、すぐさま口にしてはならんですよね。
そう思わんかね、私よ?
『気力』。まぁある程度の強がりも含め、演技力が要求されるかもしれません。
これからはあまりそう易々とそのような言葉は一切合切、控えます。
そんなこんなを心に誓いながら、館内を歩き回っておりました――。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
ぜぇはぁ言いそうになる、この我ながら頼りの無い肺活量を嘆きながらの運動です。
単に徘徊してるに過ぎないかもしれませんがね。立派な運動量ですよ。
ぜっぜっと軽く嫌な感じに息が上がって来ていますが、そこはソレ。アレです、アレの出番です。
『気力』。おいでませ気の力!!
ワケのわからない思考回路にどうやら切り替わったらしく、いい感じです。
気力が沸いてきて、どうやらこのまま館内あと20周は果たせそうです。
何せまだ5周目ですよ。5、ですよ?思わず誰も見ちゃいませんよ、ですが右手をぱっと開いて見せました。誰に?
――自分に。なにせ、目標の5分の1でもはや気力を必要としているあたりで、以下略。くどいので。
その時。
「おい!オマエ、何やっているんだ!?」
――幻聴でしょう。・・・って、いえ。幻聴であって下さい、お願いします。
「オマエ!こら、自分じゃないって顔してるそこのオマエだ!ジ・リュ―ム・タラヴァィエ!」
ご丁寧に旧・正式名で呼ばれましたよ。幻聴に。この期に及んですみません、現聴でした。・・・・・・おおぅっ。
「わ・わわわ私めでございましょうか?」
あっさり追いつかれました。多分逃げようとしたところで無駄なので、いいですけど。
しかし。またしても大荷物を蔑む目が、始まったようです。思わず声は上ずりまくり、目は泳ぎます。
「そうだ。リューム。 オ マ エ だ ! ここはオマエの部屋から随分遠いはずだろう?何をやっているのかと訊いている」
言えません。まさか、歩く事で体力をつけようとしていました。なぁんて、ね。恥ずかしいので・・・ねぇ?言えますか?
「――そ、そう仰るお館さまこそ、いかがなさいました?」
「ここは俺の館だからな。どこで何をしようと勝手だろう」
「おっしゃるとおりでございます!それでは・・・し、失礼を・・・・・・」
「 リ ュ ー ム ? オマエの挙動不審は今に始まった事じゃないが。いいから、答えろ」
――やはり言わないことには、解放はありえませんな状況です。ならば正直にありのままをお伝えするのみです
「歩いておりました。部屋に戻る途中です」
――ハイ。嘘じゃあございません。えっへん。意味もなく堂々とした態度は、単に開き直っただけです。
「だからナゼこんな離れにいるんだよ?」
「猫がいたので。付いてきてしまいました」
すみません。これは、嘘です。ごめんなさい!ごめんなさい!方便って類の嘘なので大目に見てやって下さいまし。
「猫ぉ?」
「猫、です!」
はぁぁぁぁぁと見るからに解りやすい落胆のされ方です。途端に哀しくなりました。ナゼでしょうか。
「オマエは正真正銘の・・・なんだな。やっぱり。少しは立場ってものを弁えて、立ち回るくらいの気使いは出来ないものか?」
「――は?え、あ、えと?ま、またご無礼を致しましたか申し訳ございませんすぐ!部屋に――!!」
戻ります。回れ右!そう慌てて背中を向けた。勢い良く駆け出したつもり、だったのですが。
・・・・・・・・・・・・転びました。
気がついたらですね、それはもう見事に床石に這いつくばっておりましたのですよ。
痛い。痛いです。身体よりも、何よりも視線がですね突き刺さってきています!!
あわわ本当にどうしましょう、ど、ど、どしましょかっ!!
「――リューム。」
「!!」
ものすごく低い声で名前を呼ばれるのは、これが初めてじゃないワケですが。実は。
身を早いところ起こして迅速に視界から消え失せるべく、駆け出さなくてはならないのはよっく解るんですが!
全然ですね、力が入らないのです。じたばたもがくばかりでして、気分は虫けらです。
う。
泣きたい。いやいや。このまま泣きだしてしまったら、もっともっと怒られますから堪えて堪えて。
・・・・・・・・・・・・・ぶたれます。
これは今回ばかりは許されないでしょう。これまでの積み重ねを考えても、これだけ迷惑かける自分ですから。お怒りなのも当然です。
覚悟を決めて、目をつぶり、首をすくめました。それしか。本当にそれしかできない自分が情けないですが、まあそれしか。やりすごすしか。
はぁ、というため息と一緒に、身体が助け起こされました。鼻先を擦り剥いた模様。ひり付きます。
「――リューム・・・・・・」
(ひぇぇ―――!!)
そんな痛みも吹っ飛ぶくらい、恐ろしく身体が強張りました。何せ大きな手が!目の前に――近付いていたものですから。
思わず目を瞑って、覚悟を決めて待っていました。――が、別にぶたれはしませんでした。
「リューム?どうした?また熱か?」
「いえ。申し訳ございません。またお手数をおかけ致しまして、申しわけございません」
「もうわかったから。謝るな」
「はい。申しわけ・・・ござい・・・ませ、ませ、でした。以後、気をつけます」
謝るな、と言われたそばから思わず。途中で黙るのも何ですから、また謝ってしまいました。
「・・・・・・もう、いい」
「はい」
黙りました。昔謝るなと言われたのに謝罪をし続けて、しゃれにならないくらい怒鳴られたので、学習済みです。
「リューム」
「・・・はい」
「もう、いいから。泣き止め」
「はい」
言いながら恐怖を覚えました。黙ればいいのと違って、涙は制御が利かないからです。
どうしよう。どうしよう。止まれ、止まれ!そう念じて目を固くつぶってみました。
服の袖口を強く押し当ててもみました。
「・・・・・・リューム」
呆れたように名を呼ばれて。情けなさと恥ずかしさで、面を上げることが出来ませなんだ――。
・。・:*:・。・*:・。・:*:・。・
こんな調子も早・七年目です。ちっとも成長できていません。どうしたものかと思案に暮れるばかりの七年間でした。
(う〜・・・ん。本当に・・・いい加減、どうにかして大荷物人生を終わらせたいものです。申し訳なさもあり。情けなさもあり――過ぎです)
何故リュームが近頃とみに、志を新たにしたのかと言いますとですね、まぁ。色々と・・・お聞きしまして。
『なぜ、ご領主様は奥方様をお迎えにならないのかな?』
『いや、もうじきお迎えになるかも知れない――らしい・・・が』
『――が?』
『ほら。――離れのリューム様だよ。お義妹様がいらっしゃるからな』
『そうか。まぁ、やっぱりな。あの御方が同じ館にいらっしゃっては、な』
『渋るお気持ちも解らないでもないな。何と言っても――奥方の連れ子であって、血がつながっていらっしゃらないしな』
『だがお立場は義妹さまだから。前ご領主様が実の娘も同然と、可愛がっていらっしゃったから体裁というのもおありなのだろう』
『そうだな。まさか別館に追いやる訳にも行くまい。ましてやお体の弱いお方だからな、リューム様は』
『――そうだなあ。リューム嬢様も、もう少しお体が丈夫で有らせられればなぁ。お館様も対処のしようがあるだろうに』
『そうだな。そうすれば一度良家のご養子にと出されるのも、方法として有らせられるだろうになぁ・・・・・・』
・・・・・・そういったやり取りをですね、耳にしてしまったのですよ。
やっぱりな――。
そう確信するに至りました。
(お館様にしてみたら、血の繋がらない庶民上がりの義妹などは、ただの足手まとい。ただ飯喰らいの厄介者だよなぁ)
う―――ん。どうしたらいいかと考えてみました。前々から。いえ、初めて会った時から。宣告されていましたからね。
『オマエをこの館に置いてやるのは、父上の許しがあってのこと。この館の主がそう決めたんだから、俺はその取り決めには仕方なく従う』
――はい。
『・・・・・・父上の選ばれた後妻に、俺がとやかく言うつもりは無い。だが、これだけは言っておく。間違っても、俺を義兄などとは呼ぶな。俺はオマエのような出の者を、たとえ義理であろうとも妹とは認めない』
――はい。もちろんですとも。
と、まぁ最初っからこんな調子でして。思わず回想の中の彼に対してすら、かしこまってお返事です。
初めて会ったのは彼が・・・十八歳。私は十一歳の終わりかけ。
それから七年。七年という月日が経ちました。
『俺はオマエのような者を妹とは認めていない。だが・・・貴様のような病弱を放り出して野垂れ死にされてもこの家の恥だからな。置いてやる』
――はい。ご厚意感謝致します・・・。
そう、告げられたのが半年ほど前。お義父様とおかあ様の・・・ご葬儀が済んだ後のことでございました。
彼は二十五歳。私は十八歳になっていました。そう。七年という月日が経ってもなお、彼にとって私は目障りなお荷物以外の何者でもないのだなぁ・・・と妙に感心したのが半年前。
あの方はお義父様の跡を継がれて、ご領主様と成られました。
ですから。この館の主様です。
リュームの身など。本来ならばお好きなように――どこか他所にやるなり、養子に、嫁に出すなり・・・なさればいいのです。
まぁ、そうできたら。とっくのとうに、そうしていたでしょうが。
(問題はこの体の脆弱さだよなぁ。加えて・・・生まれの身分も低いし。かといってそれを補えるだけの、器量もあいにくと持ち合わせちゃいないし。う〜〜ん?どうしたものかな。このささやかながら、私なりにも『野望』を遂行させるにはどうしたら?)
今のところの強みは、この領主であるシェンテラン家の養女という立場なのだけど。
その強みもお義父が生きていらしていた頃よりも、確かではないのです。
現・領主であるシェンテランの若様は、義理のお妹様を疎ましく思っていらっしゃる――。というのは、もはや『公然』たる事実なのは広まっているようでして。
そんな小娘(しかも病弱。)を引き取った所で、何の得にもなりはしませんからね。一応年頃なんですけど。
縁談の『え』の字もありゃしませんよ、ですよ。
うぅむ。どうしたものでしょうか?
「せめて体が健康だったらな。何でも出来ちゃいそうなんですけど、ねぇ〜・・・・・・」
丈夫な、体。健康な。せめて人並みに――すぐ、熱を出したり、咳き込んだり、倒れこんだりしない体が・・・欲しいです。
あんまり悩む方では無いのですが、ここ最近はこうして考え込んでしまいます。さすがに。
眠れないまま、自室で一人呟いてしまいました。
「――誰か・・・誰でもいいから、願いを叶える手伝いをしてくれませんかねぇ?」
ほ ん と う に ?
「ほんとうですよ」
じ ゃ あ 、 叶 え て あ げ よ う か ?
「ほんとうですか!――って、は?ハイ?」
こ っ ち だ よ !
恐るおそる・・・振り返ったそこにいたのは――。真っ黒・黒くろの。
「にゃんこさん?」
そ う だ よ 。
「にゃんこさんが?」
そ う だ よ 。
「私の願い・・・を?どうしてですか?」
あ ん た が 願 っ た か ら だ よ 。 叶 え て や っ た ら 、 何 を 寄 こ す ね ?
「私・・・叶えていただいても何もしてさし上げられません。何も持っていませんから」
持 っ て い る じ ゃ な い か 。 で き る よ 。
「え――?」
にゃーぁーおーー。
「――ねぇ。猫さんの・・・おめめ。キレイな深緑なんだね。あの方とおそろいの・・・・・」
・。・:+:・。・:*:・。・:+++:・。・:*:・。・:+++:・。・:*:・。・
久しぶりに勇気を振り起こして、訪れてみましたよ。あの方の執務室!
いつ来ても緊張する造り。
立派過ぎて『場違いもいいところなんだよ、オマエ』という幻聴付きのお部屋でございます。
どきどきしながら、一通りの挨拶をしようとしたのですが。
「――いいから。手短に用件を言え」との事でしたので。
手短に。
「ご、ご領主さま。私はもう身体は丈夫ですから、一人でもだいじょうぶでございます。長い間お世話になりまして、本当に感謝致しております。――それでは、ご領主さま。どうぞお迎えになられる奥方様ともども、幾久しくご多幸でございますように。リュームはお祈りしておりますわ」
何べんも練習したかいがあった。滞りなくお伝えする事が出来て、私なりに満足できた。
ご領主さまはもたもたしゃべられたり、つっかえつっかえ話されるのは嫌いなのだ。
「・・・・・・・・・・・・」
「?」
長く無言のままのご領主さまに、不思議に思って顔を上げてみました。
もう私に掛ける言葉など無い、といった所でしょうか。
それもそうだと納得して、ちょっぴり泣きそうになりましたが・・・どうにか。堪えました。
せめて最後くらい、煩わしい想いをさせたくないものですから。
「さようなら。どうぞお元気で」
にっこりと笑って、もう一度改めて暇を告げました。そのまま身を引くようにきびすを返して、退室するべく扉に進みました。
「リューム!!」
「え?あ、はい?」
「おまえ、何言い出してるんだ?正気か?また熱で浮かされてるのか?」
「リュームは熱などございませんよ。もう健康になりましたから、ご領主さまにご迷惑をおかけする事も・・・もう無いでしょう」
「出て行く?どこにだ?おまえその身体でどうやって生きていくつもりなんだ?」
「はい。もともと私は庶子でございます。街におります。そこで住み込みで働ける場所を探しますから、大丈夫ですよ。当てもありますし。取りあえず、神殿前の広場でお花を商って行こうと思います」
「リューム・・・・・・」
「あ!時間はかかるかもしれませんが、今までお世話になった分はきちんとお返ししていきますので。毎月少しづつ、」
「おまえは!””花を売る””だと!?」
「――・・・はい?」
「そんな事で、身を立てて行けるとでも考えているのか!女風情が、一人で!」
「――その時はその時でございます。私分を弁えて行動しているつもりです。どうぞ、私の安否などに心煩わされることのございませんよう」
きっぱりと。
「ごきげんよう」
(さようなら。どうぞお元気でいらして下さいませね。そんな思いは伝わるかな・・・?)
「ジ・リューム!――タラヴァイエ!」
「は、はい?」
尋常じゃない叫び声に思わず固まってしまいました。振り向くよりもはるかに早く、肩を掴まれてしまっていました。
「リューム?オマエは死にたいのか?このまま、野垂れ死にしたいのか?」
「いいえ?リュームはご、ご、りゅしゅ、りょ、領主様のお幸せを願っておりますよ。ご婚礼の際にはきっとお祝いをいた、いたしま、て、・・・・・・」
いけません。恐怖のあまりどもり始めてしまいました。あまりもたもたしてこれ以上、ますます不興などごめんです。
もたつきたくなんて無いのに。彼を煩わせる存在から解放されたいのに。最後くらい上手くいかせられないものでしょうか。
情けなくて哀しくなってきました。
「リューム。貴様を拘束する」
「こ、こぅそ・・・く?」
「――義理でこそあるがこの俺の身内でありながら、身を弁えぬ発言。ただで済むと思うなよ。オマエは俺に恥をかかせようというのだな。ならばその身は監禁するしかなかろう」
「恥?リュームの存在が恥なのは知っております。弁えております、だから、ご、りゅしゅ、りゅ・・・のお側にはいら、ぇな、と、おも・・・て!」
「何が””花を売る””だ。――・・・恥を知れ。いや、知らぬと見えるな。オマエには・・・呆れるばかりだ。腹立たしい」
「・・・・・・?・・・・・・ご、ごめ、なさ・・・」
呆れられているのも、恥知らずだと思われているのもずっと。ずっと、ずっと前から知っていました。
七年前、初めて会った時から・ずうーーっと。
だから。
もう。
終わりにしませんか?
そう、持ちかけたつもりだったのですが、ね・・・・・・。
にゃ―――ぉぉ・・・・・・・。
その時かすかに、猫さんの鳴き声が耳に届いたような。
気のせいか・・・何だか、楽しそうに聞こえたような。
(わぁぁぁぁ――・・・ぁおぅ・・・!ど、どうしましょうかっ!?この状況を!!)
彼に腕を引きずられながら、思わず猫さんの姿を探してしまいましたけどね・・・・・・。
『ジ・リューム・タラヴァイエ』
かなり性格はおめでたいタイプ。
自分を不幸と思っちゃいない。
この重いテーマ(呪い)を浄化していけるかと。
本当は養女なので『ジ・リューム・シェンテラン』ですが。
あの方がそれを許しません。ので、母方の姓のままです。
彼女目線なので、描写少な目でした・・・・・・。