Lovedoll♡Redriver
「ねぇ。 笑って?」
彼女はそう言った。
いや、気のせいだろう。
人形に知性や理性、はたまた感情などは宿りやしない。
況してや、命などとは……。
深紅に染まり行くベッドで踞り、私は最愛の彼女を取り込まんばかりにきつく抱き締めていた。
狂気と現実の狭間で往き来しながら、朧気に散り行く意識を必死に類い寄せ、ただ愛情だけを頼りに食い繋いできたのだ。
「どうか……私を見棄てないで……!!」
つい漏れてしまった本心は誰の耳にも届く筈がなかったというのに。
カクリ、とそれは頷くのだ……。
長年抱き締めてきたせいか、私の汗で色褪せた人形は、口が開く仕組みではなかった筈なのに。
『 ワ ル イ ノ ハ ア ナ タ デ シ ョ ? 』
再び意識を取り戻してみたら、そこには何も携えていなかった。
いったい、私は何を必死に訴えかけていたのだろうか。
ふと、帳の落ちた窓辺に目をやりつつも
一瞬にして気を失ってしまった。
あれから数日が経ったというのに
思いだそうとする度に鳥肌が粟立つ。
そう。
そこにあったバラバラの人形が。
片手だけが手招きしていたのだった。
いつまでたっても。
おいで。
おいで。
と……。
以降、人形は買わなくなったし、店先でも眼を合わせなくしてきた。
なのに、時折聴こえる囁きが鬱陶しい。
唯のフィギュアでさえも、私にとっては悪魔にしか過ぎない。
どうか、近寄らないように。
あくまでも妄想に過ぎません。
決して真剣に読まないように!
(゜ω゜;)