天才王子は驚愕する 4
ブックマークしていただき、ありがとうございます。
一話一話は短くなるかもしれませんが、出来るだけ毎日投稿できるよう頑張りますので、よろしくお願いします。
この小説は、朝7時か夜7時、もしくはその両方に投稿いたします。
あれから一時間ほど庭園を散策した後、僕たちは、木陰にあるテラスで、休憩を取っていた。
「…クリス様、このサンドウィッチ、美味しいですわ」
もぐもぐごくん。
もキュッもキュッ、ごくん。
僕たちは、休憩をしている間に、クリスが用意した軽食のサンドウィッチを食べ、ローズがマリンに用意させた紅茶を飲んでいる。
「この紅茶も美味しいよ」
「恐縮です〜」
やはり、緩い。
というか、ゆるすぎる。
よくこんなので、侯爵家のメイド採用試験に受かったな…他のメイドは、もっとー。
まぁ、ローズが嬉しそうだし、いいか。
僕は、続きを考えるのをやめた。
だって、マリンの淹れた紅茶を飲むローズは、あんなにも幸せそうなのだから。
ちなみにフィンセントは帰った。
もともとフィンセントの分の軽食は用意してないし、それに、フィンセントは体が弱く、あまり陽の当たるところに長くいられないらしい。
それはローズも同じらしく、フィンセントを呼びに来た歳のいった執事が一緒に帰りましょうと促したが、ローズは「大丈夫です」とそれを拒否したため、今もこうして一緒にいる。
「ローズ、本当に大丈夫なのか?」
「そうだよ。ローズ嬢! 具合が悪くなったらすぐ言ってね?」
「お嬢様…」
僕たち三人の目線がローズに突き刺さる。
ローズは少し目線を斜め後ろに逸らして、大丈夫だと答える。
「ローズ、こっちを見るんだ」
僕がそういうと、ローズは顔だけを正面に向けて、もう一度「本当に大丈夫ですわ」と言った。
本能的に、視線を合わせたら嘘がバレると知っているのだろう。
もっとも、ローズの場合は逆効果だが。
…こうなったら。
「あーあー、なぁクリス。疲れたし部屋でチェスでもしないか」
「お、いいな。やろう。ローズもやるだろ?」
「…え?」
「ほら、早く行くぞ」
「ちょ、まってーー」
棒読みな僕らの演技に、ローズは驚きと戸惑いを見せるが、マリンに片付けを任せ、僕とクリスはさっさと席を立ち、屋敷へと歩き始める。
だが…。
「…わ、私もいきまーーーーあ」
炎天下にさらされたせいなのか、それとももともと体が弱いせいなのか、ローズは立ち上がった次の瞬間には…ガタンっと音を立てて地面に座り込んでいた。
「ローズ!?」
間一髪、倒れてしまう前に支え、…そして、触れた背中が尋常じゃないくらいに熱いのを知って…、僕はローズの額に手を当てた。
「…熱っ」
ローズの体は、死んでしまうのではないか、と考えてしまうほどに熱くて、なのに、ローズ自身は寒いとカタカタ震えている。
…この症状は、もしかして。
僕は、もしかして、と思っていつもポケットの中に入っている王家の紋章が入った腕輪をローズの腕にはめた。
すると、スッとローズの息が整い始め、体温も平常に戻って行った。
やはり、この症状は。
「お嬢様っ!!」
すると、ローズが倒れてしまった時、何故か居なかった侍女のマリンが、何か、箱のようなものを持ってこちらに走って来た。
いや…あれは、箱は箱でも…宝石箱だ。
「殿下! お嬢様は!…て、あれ? 落ち着いているー?」
いつもの彼女からは考えられないほど切羽詰まった物言いでローズの様子を確認している。
そして、ローズの腕についている腕輪を見て…サーっと顔を青くした。
「こ、これってーー」
「魔力、完全制御ブレスか…それは…」
何かをブツブツ呟く侍女マリンと、唖然とした顔で僕に問うクリス。
僕は、その様子にクスリと笑って「そうだ」と答えた。