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天才王子は嫉妬する 3

「ふ、ふふ…ふふふ……」


ローズは、片手を口に当てて押えこもうとしているが、笑衝動には勝てないらしい。

というか、何でそんなに笑っているんだ?


「ろ、ローズ?」


「す、すみませ……ふふ…その……ん゛っ、お二人の会話がその…コントじみていたのでつい…」


コント…そんなことは…。


「…お、お二人は…いつもこの様な…かん…ふっ…じ…なのです…か…ふふ…」


略すと、「お二人はいつもこの様な感じなのですか」と言いたかったのだろうローズは、未だ、肩を震わせ…全身を震わせて笑っている。

…もうそろそろ笑やめても…。


僕がそう思ったのが視線で分かったのか、ローズは大きく深呼吸をして、無理矢理笑いを止めた。

ただ、そのせいか、むせてしまった様で大きく咳き込んでいる。


「大丈ー「ロゼッタ嬢、大丈夫!?」…クリス」


「…ええ、平気ですわ。心配してくださってありがとうございます」


今度は、大笑いでは無いが、クスクスと笑ってそう答える。

そして、「ほら、やっぱりコントじみていらっしゃるでしょう?」と隣いた侍女マリンに話しかけている。


「そんなことより、早く行くぞ。時間がなくなる」


僕は、なんだか恥ずかしくなりそう言ったのだったが、強い口調にローズとクリスはそうは思わなかったらしく、


「うへー、ディック怒ってるんだけど…」


「クリストファー様…ディックは何で起こっているのでしょうか?」


「あーあー、クリストファーじゃなくてクリスでいいよ」


「なら、私の事もロゼッタではなくローズと」


「ローズ嬢ーー!」


「クリス様ーー!」


…何二人でラブコメやってるんだ!

さっき行くって言っただろう。


「…二人とも…置いて行くぞ」


「「それはダメだ(です)!」」


無視して歩き始めた僕を、二人が走ってついてくる。

…これでは婚約者と幼馴染ではなく、二人の妹と弟が出来た様な感じだ。

まぁ、僕にはノルとサラと言う妹がいるのだが。




「…うわぁ…綺麗ですね」


辺り一面、花花花。

薔薇に向日葵に紫陽花、ラベンダーにチューリップ。

庭園と言っても、温室なので、季節など関係なく、多くの花が咲き乱れている。

そして、温室を囲む様に、林檎、柿、桃などの木が植えられており、これは季節によってフルーツが食べられる仕組みになっているのだろう。


「ディック、クリス様! これが私の一番好きな花ですわ!」


そう言って、ローズが差し出したのは、三本の薔薇。

鮮明な色をした、赤い薔薇、薄桃色をした淡い色の薔薇、白く美しさが際立つ薔薇で、甘い香りが漂ってきた。


「それぞれ、イングリッド バーグマン、桜貝さくらがい、そどおりひめですわ。花言葉は…」


何故か、そこまで言ったところで、ローズは急に顔を赤らめ、俯いてしまった。


「ろ「…です」…?」


「…じょ、…情熱な、愛…ですー…!」


語尾がどんどん小さくなって言ったため、聞き取りづらくはあったが、ローズが言いにくいのは愛という単語が入っているからなのは分かった。

王貴族が…愛を求めるのは……とても、難しい事で…あるのだから。


一つ、自分より身分の低い人に、なにかを頼むことはできない。

ーーそれは、自分だけでなく、自分の家の価値まで下げてしまうことにつながるから。


二つ、政略結婚に、愛を求めてはいけない。

ーー虚しくなるだけなのに、それをする必要がどこにあるのだろう。


三つ、死を、恐れてはならない。悲しんではならない。

ーー僕たちは、王の剣であり盾である。それを恐れることは、民を資格を失うということなのだから。


…それが、どうした。

そうであるならば、変えてしまえばいい。

僕が、王になって、全てを変えてしまえばいい。

それで、ローズが幸せになるなら…それでいい。


僕は、ローズと夫婦になれるならば、全てを賭ける覚悟がある。

王に誓う忠誠よりも。

もっと、もっと大切な、なにか。

それが、ローズにはあったのだから。


「…綺麗だな」


それは、どんな花よりも。

どんな装飾品よりも、絵画よりも。


美しいものだから。



「ねえさま〜」


「あ、フィンセント!」


とてとてと、入口の方から小さく走ってきたのは、ローズの弟であるフィンセント=テオドール・ヘレン。

時期、ヘレン侯爵として勤勉に励む7歳だ。


「ふぃーもいっしょにあそんでいいですか?」


「ええ、…あの…良いですか?」


頷きながらも、こちらの様子を伺いながら、許可を待つ。

僕はそれに頷き…そっと、二人を見比べた。

ローズと同じ様に、白銀の髪と翡翠色の瞳を持ち、愛くるしい顔をしているフィンセント。

現ヘレン侯爵は、器量が良くいらっしゃるから、フィンセントも美しく育つだろうことが予測できる。


「ねえさまは、でんかかくりすとふぁーさま、どっちがすきなの?」


「ふぃ、フィンセントっ」


…フィンセント…わかっててやってるのか?

だとしたら…まぁ、それは流石にないか。


「…えっと、…その、ね?……私が、好きなのは…」


…誰なのだ。

ローズが好きなのはーー!


「…えっと、……あぅ…そ、そう! フィンセント! あなたよ! ね?」


…そっちか。

……ローズ、逃げたな。


「ねえさま、ありがとう!」


そして、フィンセントはと言うと、心底嬉しそうにローズにお礼を言っていた。

…本当に分かってないでやってるのか?




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