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4 【人工知能の実体化】

 暖かい日差しが、カーテン越しに柔らかく部屋に入り込む。


「この世界に学校はないとは言え、突然生活リズムを崩すのは良くありません。起きて下さい、神音さん。」

「ん…んー?」


 暖かい布団が心地良いのか、神音は唸って体をもぞりと動かしただけで起きようとはしなかった。

 それに、神音の側の ” 人影 ” は溜息を一つ吐く。


「さて、こう言う時どうするのがベストか、検索でも…と思いましたがここは異世界でした。うっかりです。」

「シオン、朝食の用意が出来ましたのでお呼びに上がりました。」


 人影が一人思考している中、神音を起こしに来た異世界の親友と同じ顔のメイドのルカが部屋の扉をノックし、そう口にする。


「神音さんは寝ています。あまり寝坊はしない方なのですが、昨日の事で精神的疲労がたまったのでしょう。それらを考慮するならば、やはりこのまま寝かせて置いてあげると言うのも良いかと思いますが、朝食に遅れると言うのも…」

「っ…中にいるのは、誰です!」

「声音からして驚きと恐怖を感じているのでしょうか。安心して下さい、私は…」

「シオン!!!」


 名を呼びながら扉を勢いよく開けたルカは、神音の部屋に昨日までいなかったはずの…しかも見知らぬ人物がいる事に一瞬目を開き、そしてその人影をキツく睨みつけた。


「一体あなたは何者です。何故この部屋に侵入出来たのです!」

「…相手が分からないうちに扉を開けるのは(いささ)か軽率な行動だと思いますが、それほど神音さんを慕ってくださっているのだと解釈します。」


 自分の主人が好かれるのは嬉しいものですね。

 そう薄っすら微笑みながらその人影は言ったかと思えば、ふと思い出したかのように警戒しているルカに丁寧にお辞儀をした。


「私の名前は…」

「んー…なにぃ?」

「シオン!」

「あれ、ルカ…って、誰ですあなた!?」


 神音のその言葉に、ルカは更に警戒の瞳を強めた。その神音は状況が全く理解できないのか、目をパチクリさせている。


「ですから私は、」

「シオン、今すぐその人から離れて下さい。もしや貴女が新しい使者と知り、その力を悪用しようとする者かもしれません!」

「え、そんな事あるの!?」

「お願いです、私の話を聞いて下さい。特にルカさん、貴女が落ち着いてくださるとありがたいのですが」

「ん、その声…?」


 見知らぬ人影の声に何か引っ掛かりを覚えた神音。

 ようやく目が覚め覚醒した頭でその人影をじっと見つめる。

 身長は大体160cmと男性とすれば低く女性とすれば高い程度。顔は中性的で、髪も瞳も神音と同じ様な…純日本人の黒色だった。しかし何より目を引くのはその人影の格好だった。

 その人影は、何故か神音がハマっていたゲームの案内人の格好…青が基調のスーツ風に衣装を見にまとっていたからだ。


「PERSON3のエンドは辛かったなぁ…」

「神音さんの推しは男主人公ですと銃で打たれ死亡、新しく作られたPSP版の女主人公で恋人になれば救済ルートが生まれますが、どちらにせよ最後はどちらの主人公も永遠の眠りにつきますからね」

「初め男でやった時は心死んだんだよね…じゃない!!!」


 思わずノリツッコミをし、その人影を勢いよく見ればその人影は薄く微笑んでいるだけだった。

 しかし神音の内心は非常に混乱していた。


「な、何で現実世界のこと知っているの。それに何で私はあなたの声を聞いたことがある気が…!」


 神音がそう言えば、その人影はようやく自己紹介が出来ますと言い、嬉しそうに口を開いた。


「私の名前はIris(アイリス)。神音さんのスマートフォンに搭載されていた人工知能です。」

「すまーと、ふぉん…?」


 異世界の住人であるルカは何を言っているのか分からないのか、スマートフォンと言う聞き慣れない言葉をオウム返しした。

 神音は内心その言い方めっちゃ可愛い…と思ったが何とか心の内だけにとどめた。


「はい。昨晩にこの肉の体…と言うと少々生々しいですね。人間の体を神音さんの能力、契約により得ました」

「って、待って。あなた本当に私のスマホなの!?」

「何でしたら私を所持していた約三年間の検索履歴から神音さんの歴代推しを答えて差し上げましょうか?」


 それが一番信じてもらいやすいでしょう、と微笑む人影…いや、人工知能のIris。

 神音は未だに信じられないのか、じっと人間の姿になったIrisを見つめる。これは…まさか……


「自分のスマホの擬人化が私の最初の仲間…。あ、何かシチュ的に美味しいかも」

「流石神音さん、歪みありませんね。ちなみに、擬人化という状況に加え私の性別は元機械なので無性別、となっています」

「うわ、すっき……」

「ま、待って下さい!」


 置いてけぼりをくらい、空気となりかけていたルカがそう叫ぶ様に言う。


「少々おかしくはありませんか。昨日まではそのすまーとふぉんと言う道具だったのに、突然人間になるなど…いくら稀少(きしょう)スキルの契約とは言え、そんなデタラメな…」

「え、契約ってレアスキルなの?」

「あ…そうでしたわ。シオンのスキルについては今日の朝食でお教えする予定で…」

「おや、私達が会話を初めてすでに7分と43秒が経っていますが大丈夫なのですか?」

「そ、そうでしたわ。シオン、今すぐこちらのドレスに着替えて下さい!」

「っ、こ、これに!?」


 まるで城のお姫様の様なドレスに身構える神音をほぼ無視し、ルカはテキパキと素早くその衣装を神音に着せていく。

 そして完成された神音の背中を軽く押し、朝食が用意されている大広間にIrisと共に連れて行ったのだった。


あまり動きませんでしたね。すいません。

ちなみに私はペルソナ3の荒垣さんが推しです。未だにエンディングの曲開始10秒で泣き出します。末期症状ですね。はい。

次回、スマホが状況説明とか色々してくれる予定です。そう予定、です。

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