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親父が魔法少女で俺まで巻き込まれた件  作者: フジオ
紅の魔法少女篇
3/63

Magicにかけられて


 あまりの事態だ、ふらりと倒れそうになる俺。その身体をアキラがなんとか抑える。

 ふわりと香る甘い匂い。バニラ風味のアイスの匂い。


 その身に纏う服装。動きが激しく、気が付かなかったがよくよく見れば、白く、少々眼のやりどころに困るような、こっ恥ずかしい、フリフリマシマシ、露出多めのファンシーファッション。


――言うなれば魔法少女。


(まぁ、確かに本人名乗ったからなぁ……魔法『少女』って)

 だからこそ頭が痛い。俺がジロジロと見ているからか、顔を赤く染めるアキラ。

 恥ずかしいならそんな恰好するなよ……。


「さて……洗いざらい話して貰うぞ、アキラ。なぁ、親父よぉ……」

「ちっ、違うよっ! ボクはアキラなんて名前じゃないよっ!」

 手をこちらへ伸ばし、大きく振るう魔法少女服のアキラ。


「助けて頂き本当にありがとうございます! お名前を教えて頂いてもよろしいでしょうか?」


「えっ!? えっ……えっと……そ、その……」

「さっき名乗ってましたよね? 魔法少女アキラと……」

「そ……その……きっ、聞き間違えだよ! お願いシューくん信じてっ!」

 はい、論破。


「『シューくん』? 名乗った覚えは無いんですがねぇ……」

「あッ!?」

 失敗に気が付いたのか、小動物の様に身体を縮こませるアキラ。


「わ、訳あって名乗れないけど、今日の事は忘れてっ! それじゃっ!」

 そんな俺から、まるで逃げるように飛び出すアキラ。軽く跳ねただけでもう点のように映る。

 流石の移動距離だ、膂力が違う。


《んな訳行かないですよ!》

 またも声が。

《魔法少女の事は忘れさせないとダメって言いましたよね!?》

「うぅぅ……忘れさせるって事は……魔法を使わないとダメ?」

《はい》


 ご丁寧に会話が全て聞こえる。アキラは本当にちょいちょいと歩くだけで、顔のわかる距離まで来た。

 

 何やら顔を赤く染め、俯くアキラ。沈黙に耐えきれず口を開く。

「あー、忘れさせるって事は魔法を行使されるのか、俺?」

 そう言い、何となしに頬を指さす。傷に触れ、痛む。やはり夢ではないようで。


《あーほっぺですか? うん、うん、良きかな良きかなそれはなかなかに甘酸っぱい感じがしてベネ》

 脳に直接響く様な声。またその声にアキラの顔の赤が深まる。

「あ、あのね、ちょ、ちょっとしゃがんでくれる?」

「あぁ?」

 俺の中で様々な思考が渦巻いて、真っ当な考えが出来て居ない。

 だからこそ素直にしゃがんだし、気を抜いて居た。


「――ちゅっ」


 俺の唇に触れる暖かく、柔らかい感触――キスだ。軽く触れる程度のキスが俺へ、アキラから送られた。


(アアアアァアアアアアアアア!?)


 背中がゾワゾワと粟立つ感覚を感じる。ケツにツララ突っ込まれるみてぇだ。

 当の本人は恥しそうにそっぽを向いている。俺にとっては余り嬉しくも無いこの行為。


《きゃぁ!! ホッペじゃないんですねぇ! 青春ですねぇ! ウェッヘッヘッヘッヘ!》

 またも脳に響く声。


 限界だ。俺は意識を手放した――手放すその刹那、『二つ』を認識できた。

 

 一つ、聴覚。アキラの呟き。

「キスするのは、シューくんだけだよっ」

 うれしくもない呟き。


 二つ、視覚。アキラの下着。

――望んでもいない父親のパンチラが見えて、げっそりとする感覚。


 願わくは、魔法が上手くかかっていますように。



 もう忘れたい。


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