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親父が魔法少女で俺まで巻き込まれた件  作者: フジオ
紅の魔法少女篇
26/63

フ(゜)ール


 不機嫌そうにして居たアキラも、次のデートを取り付けたからか、それとも単純に忘れて居るだけか、楽しそうに遊んでいる。俺、六花――そしてエイダも。


 何で、紛れ込んでるんだよ!?


《認識阻害って、便利でしょう? モブなら此処まで近寄っても怪しまれないんですよ》


「シューくん、楽しいねっ!」

「……そうか」

「シュート、凄いぞ、このプール! 勝手に動くんだ! 何と言う事だ!」

「……流れるプールだな」

 ちょっと頭が痛くなってきた。


 まぁ、楽しんでるのは自分も同じか……。

 平和な日常。アキラも遊ぶのが楽しいのだろう、俺への露骨なアピールが無い。


「さて、やっぱりプール、と言えば……」

 ふふふ、と不敵な笑みを浮かべるエイダ。嫌な予感がした。


「……と、言えば?」

「ズバリ! ポロリでしょう!」

「んな事だと思ったよ」


「なぁに、少しここで待ってて下さい集人さん。じゃじゃ馬、ビックリ、ポロリんちょ、って具合に、本当のポロリをごらんにいれますよ」

「いや、冗談抜きで要らんから、辞めてくれ」

 何が起こるかわからないので止める。これで六花が被害に遭えば、自分の所為で辱めを受ける事になるし、アキラを対象にされてもマトモに対応できる自信が無かった。更には、最悪のパターンもある。


「まぁ、そう言うなら集人さんのポロリはまた今度の機会と言う事で……」

 正に最悪のパターンだった。


「まぁ、今回は止めにします。それより、ちゃんとアキラさんとの好感度上げといて下さいね、私別に他人の好感度が低いと入っちゃうトゥルー用ヒロインじゃないんで」

「お前は最初から攻略不可能なタイプだろ」

「惜しまれつつ、次回作では、と言われるタイプですねっ♪」

 そう言い、ウィンクをするエイダ。ふと、思う所が有り尋ねる。


「昨日の、『The END』の大量発生、あれの原因はわかったか?」

《……此方でも出来る限りの調査していますが、情報が少なすぎます。最近、似た様な事案が増えていますが、進攻が加速したか、と訊かれればそれはNoです》


 やはり原因不明。

 まぁ、夏だからな……湧いたってことか。

《虫みたいに言わないで下さいよ……まぁ、それぞれ魔法少女は、探索や警戒を今まで以上に厳重に、とのお達しが出ていますので、それで何とか処理して貰うしか有りませんね》


 そう言い、申し訳なさそうな顔をするエイダ。そんな彼女の顔を見ると、頭を無理矢理に撫でまわす。わしゃわしゃと、濡れた髪は触り心地が良い。


「――うっ!? な、なんでせうか!! 集人さん! そう言うのは美男鈍感の『恋愛殺し』(フラグブレイカー)にだけ許された行為ですよ!? なでぽなんて今日日流行んねぇですわ!!」

 そう言い、顔を赤くし、俺から飛ぶ様に逃げるエイダ。俺としては、そこまで邪険にしなくてもと少々心に傷を負った。だが、それを無理矢理に抑え、頭を撫でる。


「……お前がしょぼくれて、無理して何になる?」

 気付いてしまった。彼女の眼、恐らくは、最も強く、最も目立たぬように仕込まれた認識阻害を――その下の赤くなった瞳と、眼の下のクマの存在に。


「肉体労働は俺らの役目だろう? 気にすんな、俺らが何とかしてやるし、何が有ろうが大丈夫だ」

 だから、無理をするな。そんな事を言おうとして口を止めた。


「集人さん……」

 今にも泣きそうなエイダ。そして――

「……ふーん、そう、シューくん、そうだね、そう言う娘のが好みって言ってたもんね……」

 笑顔では有るが、昨日のソレを遥かに超えるプレッシャーを放つアキラ。


「なぁ、……彼女も可愛いじゃないか、何て言うんだい? 教えてくれないか?」

 眼を輝かせ、両手をワキワキと、凡そ人前には出せぬ顔をする六花が居た。


「だから! 誤解だ! アキラ!」

「ふーんっだ、いいですよー、どうせボクなんて……」

 そう言い、涙目で胸元を押さえるアキラ。ぺたーんと言うオノマトペが浮かぶようだ。


「……なんだか、浮気のばれた旦那の様な言い訳だな」

 六花は何処か呆れた様子で、俺とアキラの親子漫才を見て居た。

《さぁ、集人さん! もっといろいろイベントをこなしてですね!》


 完全に傍観を決め込んだのはエイダだ。俺の手を払いのけると、認識阻害の魔法により、完全に辺りからは消え去った。てめぇ、マジで覚えとけよ……。

 そうは思うが――溜息を一つ吐くと、少しだけ満足気な表情になって居る自分に気が付く。


 ちょっとうるさくても元気な方が良いか。


《か、勘違いしないで下さいよ!? 私は攻略不可能キャラなんですからね!》

 珍しく、冗談でなく本当に焦って居る様に感じられた。


 あぁ、惜しまれつつ、な。次回作に期待するよ。

 だからこそ、少しおちょくってしまうのは仕方の無い事だろう、そんな言い訳じみた考えが脳裏に浮かぶ。


《もう、知りません!》

 そう言い、一方的に精神感応を遮断するエイダ。なるほど、こうすれば切れるか、と俺は一つ事を処理しつつ――

「なぁ、悪かったよ、アキラ」


――もう一つの事案に取りかかった。

「……つーん」

 口で言うのかよ、突っ込みそうになったが、寸の所で言葉を止める。


「シューくん、人と話してるのに、他人の事を考えてた」

「……何でそう思った?」

「顔を見ればわかるよ。何年一緒に居ると思ってるの?」

 不機嫌そうに、それで居て、誇らしげに言うアキラ。なかなか器用だな。


「なぁ、悪かったって。ちゃんと話をしたいんだ、もう他人の事なんて考えない」

「……ほんと?」

「あぁ、本当だ、約束する」


「ぜったい?」

「あぁ」

「ずっと?」

「あぁ……ぇ?」

 トントン拍子に尋ねられる為、と言い訳はするが、答えてしまったのも事実。アキラは先までの不機嫌そうな顔を一転、お日様みたいな笑顔で言う。


「じゃっ! しょうがないなぁっ! シューくんは♪」

 多少呆れる事はあったが、アキラのその笑顔を見て、しょうがない、そう言い笑った。


「まぁ、今日は楽しもうぜ? 折角のデートなんだろ?」

「うんっ!!」

 アキラはとてもうれしそうに笑った。


「Oh……Sisterfucker. Jesus……」

 六花はそれをただ見て居た。


「い、いや、あのこれはですね、氷室さん?!」

 俺はやっとその事に気が付き、彼女に言い訳を始めようと、次の言葉を考え。


「ひむろちゃん ごめんね。少し別々で遊ばない? 『大切な家族の時間』なんだ」

 えへへーと良い笑顔で言うアキラ。頭を抱えたくなる。


「アキラ!! お前!!」

 そう、叫んだ。その瞬間だった。


――空間が裂け、無数の『The END』達が姿を現す。


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