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親父が魔法少女で俺まで巻き込まれた件  作者: フジオ
紅の魔法少女篇
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マジ!? ~戦いのはじまり~


 名前は、折井(おりい) 集人(しゅうと)。何の取り柄も無い、平凡な16歳、それが俺。


 そんな俺が幼い頃に憧れたのは、正義の味方ヒーローでも、悪の怪人ヴィランでもなく、魔法少女だった。



《蜉ゥ縺代※縲√♀鬘倥>蜉ゥ縺代※縲∫・縺・h逞帙>繧・》

 言語として認識できない奇妙な音。機械のソレとも違い、金属の擦れる音に近い。


 無数の異形、黒く光を返さぬ夜の色。無機質で没個性なその群れは、八つの長い脚を持ち、恐らくは蜘蛛を模した『何か』の群れだ。

 それは蜘蛛と言うにはあまりにも大きすぎた、3mくらいあるし、テクスチャのバグったゲームキャラのようで、生理的嫌悪感が強かった。


 今、繁華街のど真ん中。時間は夕暮れ時。腰が抜けて立てないの。

 メリーさんみたいな構文になったけど、現在絶賛絶体絶命中! 早口言葉みたい素敵!


 まぁ、突然こんな化け物に囲まれれば腰も抜けるし、動けもしないだろう。


《ソ縺願・縺梧ク帙▲縺溘h縲ゅざ繝上Φ縲√ち繝吶Δ繝弱€√ち繝吶ユ繧、繧、繝「繝・》


 蜘蛛が、鋭いその足を一歩、また一歩と進め、距離を詰める。恐らくは口だと思われる部位から漏れる唾液が湯気を立てながら、コンクリートを溶かす。地面をならす時のあの匂いがした。


 どうあがいても(絶望)が俺のゴールだ。そんな中、ふとそんな事を思い出した。今だからこそ笑って話す事も出来るが、魔法、超能力、等々、そうした超常の力を用い戦う少女たちが好きだった。



――いや、今の方が話せないか。脳裏に浮かぶサブカルチャーの数々。魔法少女が好きだなんて、確かに自分はオタクだが、わざわざ表だって話すことじゃない。


 死ぬ前だってのに、世間体が大切なのかと自嘲する。


 コイツ等どう見ても神様のバグだろ、これで死んだら俺異世界に転生させて貰うんだ。


 最早まともな思考ができない。パニックからか、下らない事ばかりが浮かんでは消える。


 魔法少女の何が、何故好きだったのか、何が幼い俺の琴線に触れたのか、その記憶は定かではない。その上、こんな絶体絶命の状況、思い出せるはずもない。だが、そうした想像の世界で戦う彼女たちのような魔法少女と言うのに奇妙な憧れを抱いていたのは事実だ。


 不味いゼ、やばいゼ、ピンチの瞬間。こんな時、魔法少女が居れば。そんなことを思う。だが、幼い当時の俺も理解していた、魔法少女などフィクションだと言う事を。


――故に、目の前の現実が信じられない。


「我が子煉獄投げ打ちて、産まれ出ずるは地獄変……」


 聞こえたその声。声の方向に視線をやると、そこには 白い装束――ゴスロリと呼ばれるタイプの物だ――を身に纏う影があった。


 一歩、一歩と『その影』は歩みを進める。その動きに合わせ、白い長髪が揺れ、クリクリとした大きなその赤い瞳が煌めく。その瞳の中には無数の『敵』と助けを望む『俺』の姿が映っていた。

 白い軟肌、可愛らしい顔つき。人形を思わせるその顔は、凛々しい表情で強い意志を感じさせる。


「悪徳、暴力、跋扈するこの世界……」


 赤く輝く瞳が『人』を、俺の姿を写したその瞬間、その影の呼吸が小さく乱れる。だが、それを影は意思と肉体で抑え込み、口をまた開く。


「悪逆無道を許しはしない!」


 大地を強く踏み締め、強く叫ぶ。その声に『敵』が皆ソレを睨む。

 俺もしかと見た、その顔を、その姿を。


――これは意思表示。正義が為にその力を振るう為の。


「因果応報ッ!」


 叫びと共に、影はその握った左手を真っ直ぐ天に伸ばし、甲を見せながら大きく開く。

 小さなその体を何処か大きく見せる。その立ち振る舞いは戦国武将の名乗りを思わせる。


「一罰百戒ッ!」 


 左腕を肩の高さに、地面と水平、外へ大きく伸ばす。

――これは決意表明。何故そこに立つのか、何の為に戦うのか、自らに言い聞かせる為の。

 影はそこだけ黒く染まった前髪の下、燃える瞳で『敵』を睨む。


「――我が名は魔法少女ッ!」

 左腕を内向きに大きく回し、二度その拳が大地を指したその時、肘を曲げ前に突き上げた。開いた右手でその拳を抑え、逆さの【L】を形作る。


「魔法少女アキラ!」

 その構えを解き、大きく見得を切る。


――瞬間、輝きが。


 きらめく粒子。光の跳ね返しが白のドレスを更に輝かせる。


 そこに立つは正義の化身。少女の姿をした勝利がそこには在った。


「魔法少女……?」


 その姿を、その顔を、その声を俺は良く知っていた。良く知る人の物だと直ぐに理解した。恐怖に震えていた身体に鞭打ち立ちあがると、腹の底から叫びを上げる。



「何やってるんだよォオオ! オヤジィイイイイイイイ!」




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