45A列車 北の大地
「うーん・・・なかったねぇ・・・。」
青函トンネルを抜け、北海道へと入った。
「無かったって。最深部の蛍光灯のこと。」
「うん。前来た時はついてたのになぁ・・・。つけなくなったのかな・・・。」
僕はそう言った。青函トンネルの最深部には青と緑の蛍光灯がついていた。青函トンネルの中でのちょっとした楽しみでもある。まぁ、今の竜飛定点や吉岡定点が駅だった時に行われていた見学会に比べればはるかに地味だし、一瞬で終わることだ。それが良かったりもしたんだけど・・・。
「皆さま、「はやぶさ号」は青函トンネルを抜け、北の大地北海道へとやってまいりました。終点、新函館北斗にはあと15分ほどで到着いたします。」
そのアナウンスが流れた。
「まぁ、最深部の蛍光灯は見れなかったけど、中でまたH5系とすれ違うとは思わなかったなぁ・・・。」
H5系が走ること、そしてその列車は知っていたが、まさか青函トンネルの中でH5系とすれ違うとは思っていなかった。
「よかったじゃん。そっちはH5系を2回も見れて。」
「・・・萌。」
「別に怒ってませんから。」
さて、北海道に入ってすぐに通過するのは湯の里知内信号場だ。ここには知内駅という駅が設置されていたが、乗降客数の低下で廃止された。そのあとにここは北海道新幹線の信号場として生まれ変わったのだ。もちろん、駅ではないため、奥津軽いまべつみたいな大がかりな駅設備があるわけではなく、在来線が新幹線から離れ、待避設備から離れて設置されているだけだ。
湯の里知内信号場を通過してからもしばらくは140キロで走り続ける。すると線路をシェルターが多い、在来線の線路が新幹線から離れ始めた。いや、それだけではない。在来線の線路は新幹線から下に降り始めた。木古内が近くなったのだ。そうこうしているうちに木古内を通過。今度はホームに隣接する線路を通過し、3列側には2本の線路と上りのホームが見える。
木古内の構内が後ろへと過ぎ去ると今度はGがかかり過ぎ去っていく景色が少々早くなり始めた。列車は再び260キロへと加速を始めたのだ。と言ってもすぐにトンネルに入ってしまう。新しい新幹線だから、防音壁も高いし、トンネルも多いのは仕方がないか・・・。
3列側から函館山が見えるようになると終点新函館北斗はすぐそこだ。終点に向け、線路を走る「はやぶさ11号」はやがてカーブを曲がり、函館山は景色から消える。
「萌。見て。あれ。」
「何。・・・あっ。」
「「はこだてライナー」だよ。」
僕たちは新幹線と同じ方向に走っていく3両編成のステンレスの車両を見てそう言った。あの列車は「はこだてライナー」専用の733系。3両編成で運転され、繁忙期には6両に連結される・・・のかな・・・。今日ゴールデンウィークだけど・・・。「はこだてライナー」は現在の北海道新幹線の終点新函館北斗~函館の間をピストン輸送する列車だ。ほとんどの列車が途中五稜郭にしか止まらない快速列車として運転される。
だが、今回「はこだてライナー」に乗るつもりはない。「はこだてライナー」に乗るのはまた今度来た時にしよう。ああ、今治と来た時に乗れるかもしれないけどね・・・。
新函館北斗に向かって行く733系をたった今、新函館北斗を出発したE5系が隠す。それと入れ替わるように「はやぶさ11号」は新函館北斗に入線した。13時38分。定刻通りに到着だ。