44A列車 北海道新幹線
新青森の手前で斜張橋構造の橋を渡る。この橋を渡ると新青森についたという感じがする。そうこうしている間に「はやぶさ11号」は新青森駅に入線した。
「とうとう来たね。」
萌はそう言った。
「うん、こっから先は海峡線以外のところは乗ったことがないしね。」
僕はそれにそう答えた。
新青森では再び旅客の入れ替えが有る。仙台や盛岡から乗ってきた乗客もここで降りる人がいた。萌の隣の席は停車駅の度に旅客が入れ替わっていた。ここでもその入れ代わりはあるみたいだ。
扉が閉まると同時になる「ドアが閉まります。」の電子音声が小さく耳に入る。そして、ゆっくりと北海道新幹線へと歩みを進め始めた。
「本日も北海道新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。」
車内アナウンスの切り口も「東北新幹線」から「北海道新幹線」に変わっている。もちろん、乗務員も先程の新青森でJR東日本からJR北海道に交代している。
「ご乗車ありがとうございます。「はやぶさ11号」新函館北斗行きです。この列車は途中、青函トンネルを通りまして、北の大地北海道を目指してまいります。なお、青函トンネルに入ります時間は12時55分ごろ、トンネルを出ます時間は13時20分ごろを予定しております。なお、通過予定時刻は運転状況により変化することがございます。あらかじめご了承ください。」
自動放送の次に車掌のアナウンスによってその案内がなされた。
青函トンネルは日本が誇る世界最長の海底トンネルだ。全長は53.85キロメートル。260キロ程度で走ることが出来れば、15分ぐらいでトンネルをそうは出来るだろう。だが、それは仮定の話に過ぎない。現在、青函トンネルを含めた新中小国信号場~木古内間は全列車140キロ制限で走っているが、フル規格新幹線であるから260キロかそれ以上で通れる前提の設計になっている区間である。ここまで制限されるのは津軽海峡線と線路を共用しているからであり、ここを毎日23往復もする貨物列車の関係もあるのだ。
足の遅い貨物列車は最高速度100キロ前後が限界である。これに後ろから260キロで迫る新幹線を走らせるためには、奥津軽いまべつ、湯の里知内信号場、木古内での待避が必須になる。だが、これはさほど大きな問題ではない。一番の問題は青函トンネル内で、260キロで走る新幹線が100キロで走る貨物列車に与える影響である。
260キロが生み出す空気の波は相当なものである。当然、トンネル区間にはその空気が逃げる場所がなく、トンネル内で反響するしかない。その波のあおりを受け、貨物列車が脱線する可能性を否定できないのだ。100トン以上の重さがあるEH800が脱線することはないと思うが、後に繋がっているコンテナ貨車は軽いものだ。それが青函トンネルや在来線との供用区間で脱線することの意味はとても大きい。23往復という貨物列車の数がそれを物語っているだろう。
「遅くなり始めた。」
新青森を出発して、約10分、E5系は減速を開始する。その区間が近づいてきたのだ。橋を渡ると車窓に下から線路が加わる。これが今の津軽海峡線だ。そして、合流直前にトンネルに入る。
それから4分ほどたつと、北海道新幹線最初の駅、奥津軽いまべつを通過する。この駅は2つのホームと下り専用の通過線を持ち、新幹線ホームの外側には在来線用の待避設備を備えている。
(こうなってるんだなぁ・・・。)
E5系は真ん中の線路を140キロで通過する。流れていくホームは今までよりも遅く、この区間が北海道新幹線のネックになっていることが分かる。
「皆さま、ただいま「はやぶさ号」は奥津軽いまべつ駅を時間通り通過いたしました。間もなく、青函トンネルへと入ります。青函トンネルは1988年、昭和63年に開通した全長53.85キロメートルの世界最長の海底トンネルでございます。このトンネルが通ります津軽海峡は海面から海底まで約140メートル、トンネルは海底より約100メートル下に掘られております。当列車は海面下240メートルを通り北海道を目指してまいります。なお、青函トンネルの通過にはおよそ25分かかります。」
と青函トンネル進入前のアナウンスが流れた。
「間もなく、「はやぶさ号」は青函トンネルへと入ります。どうぞ、青函トンネルでの旅をお楽しみください。」
車掌はそうしめた。
E5系はそれと同時に青函トンネルへと入った。