42A列車 H5系
9時36分、「はやぶさ11号」は定刻通りに東京駅を出発した。ゴールデンウィークシーズンということもあり、車内は結構混雑している。だが、全車指定席ということもあり荷物を棚に載せきってしまえば、全員が座席に収まった。
地下にある上野駅のホームに行くため、E5系はトンネルへと入る。速度もあまり変化しないまま上野駅を通過。トンネルを出てもなかなかスピードを上げて行かない。東海道新幹線の東京~新横浜間でもここまで遅くない。だが、ここは東北新幹線が我慢をしなければならない区間であるからこれは仕方ない。
大宮に停車してからよいよ本領発揮の区間へと移るわけであるが、E5系からしてみれば、本来の性能が発揮できるのはまだ先だ。
大宮発車後、すぐに上越新幹線()と別れ、東北新幹線は一路青森を目指して北へと走っていく。
「・・・。」
「320キロ出すのって宇都宮から先だっけ。」
「うん、まだ当分先だねぇ・・・。」
東海道新幹線と同じぐらいのスピードで景色は後ろへと下がっていく。そして、時たまその景色を東京に向かって行く新幹線が隠した。前に乗った時よりはすれ違う列車に変化がある。そして、最近変わったものはもうちょっとしたらやってきた。
「・・・。」
それが景色を遮ると僕は萌をつついた。
「あっ・・・。」
そう言ったころには白い車体が目立つ車両が通過している頃だ。
「見えた。」
「見えた、見えた。H5系だね。」
これが最近加わった変化だ。
JR北海道が保有するH5系新幹線だ。性能も車内設備も東日本のE5系と変わらない。所属会社が違うだけの兄弟だ。
「H5系って車内に雪の結晶模様があるんでしょ。」
「ああ、そうだね。」
「今度行くときは乗る。」
もう今度の話か。
「そりゃね。」
僕はそう答えた。
しかし、このH5系に乗れる機会というのはE5系に比べればはるかに少ない。1日にこのH5系で運行される列車は全ての「はやぶさ」、「やまびこ」の中でたったの7本だ。その列車に該当するのは仙台始発の「はやぶさ95号」、東京始発の「はやぶさ17号」、「はやぶさ29号」、「やまびこ223号」と新函館北斗発「はやぶさ10号」、「はやぶさ22号」、新青森始発の「はやぶさ32号」だ。このうち北海道新幹線を走る「はやぶさ」は「10号」、「95号」、「22号」、「29号」の4本。これ以外の列車はJR東日本の東北新幹線の中で完結してしまう運用になっているのだ。もちろん、乗るだけっていうふうになれば「はやぶさ17号」でもいいわけだけど・・・。
「でも、あれって北海道新幹線に行くやつって少なかったよねぇ。」
「・・・行くのだったら「29号」しかないね。」
「えっ、それだけ。」
「うん・・・。」
「えっ、東京行きは。」
「そっちはさっきの「10号」と「22号」・・・。こっちもこれだけか・・・。」
考えてみると東京~新函館北斗間を1.5往復しかしていない。
「じゃあ乗るなら「22号」しかないね。」
(まぁ、そうなるよね・・・。)