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05「フラグ到来(多分)」

「うむ。オレの新たなスローライフを始めるのに相応しい場所だ」


というわけでここ一面ゴテゴテの土。その前にある朽ちかけた物置小屋の前にオレはいた。


あれから街中を色々と散策したんだけど、どうも街中にこの種を育てられそうなスペースはなかった。

一応公園とかはあったんだけど、人めっちゃいたし。あんなところで土掘ってなにか埋めてたら不審者だよ。

というか公共の場で勝手に植物育てるとか絶対捕まる。


というわけで街からちょっと離れて、けれど魔物がギリギリ来そうにない平野を探してたらここを見つけた。

街をちょっと見下ろせる丘みたいなところで都合よく誰も使ってない物置小屋までついてる二段構え。

これで畑と当面の居住地ゲットだぜ!


というわけで早速、先程入手した種をパラパラと地面に蒔く。

ちょっと種が隠れる程度に土を被せる。なんか昔見た番組じゃ、あんまり深く掘って種植えたら芽が出ないって聞いて、逆にこういう軽く被せる感じでいいって聞いたんでやってみる。

正しいかどうかはよく知らん。オレ専門家じゃないんで。あくまでぼんやり聞いたあやふやな知識なんで。


まあ、いずれにしても、これで野菜が育つだろうとオレは信じる。ああ、信じているぞ。根拠のない自信で!



翌日。


「おおおおお!!芽!芽!!芽が出てる!!マジかよー!!ってかはえー!!」


昨日あれから奪ったパンの耳をかじりながらボロ小屋で過ごすこと次の日、なんと種を蒔いたところから芽が出てました。

すげえ、この世界の野菜すげえ。これなら一週間以内にマジで自給自足の目処が立つんじゃね?


その日、あまりにもテンションが高まったせいで街の広場にある噴水から水を調達して何度も芽にぶっかけていた。

あまりにも噴水から水をかっさらいすぎて、途中兵士っぽい人に注意された。

即逮捕とかされなくてホント良かった。



そして翌日。


「おいマジかよ!この世界の植物成長早すぎね?!もう苗になってんだけど!!」


昨日の水巻きが効いたのか、それともこの世界の植物の成長速度が単純に早いのか。どっちか知らないけど、もうすでにそこらで売ってる小さな苗くらいには育ってる。

あ、そこらで売ってるってのは地球でのことね。なぜかこの世界では街を一通りみたけど苗とか植物売ってる場所なかったんだよなー。なんでだろう?


まあ、それはともかくかなり順調じゃね?いや、順調すぎる。

オレってもしかして農業の才能あったのかなー。


そんな自画自賛をしつつ、その日も水の調達に街を往復する。最後兵士から追われたが気にしない。




とまあ、そんな感じでその後数日は順調でした。

だが、問題はある日、唐突にやってきました。そう、それは本当に突然。


「さーて、今日はどのくらい成長したかなー!昨日は俺の背丈くらいに成長してなんか実っぽいのもなってたし、これは今日くらい収穫できるんじゃねー!いやー、楽しみだわー!」


そう言ってボロ屋から出て目の前に広がる緑一面の畑を想像したら

そこにいたのはモンスターでした。


『キシャアアアア――!!!』


…………。


えーと、落ち着こうか。


ちょっと落ち着こう。


冷静に、手のひらに人を書く。人、人、人、人、……何回か書いた後ゆっくり飲み込む。

そして、オレはもう一度ゆっくりと目の前の状況を見る。


『キシャアアアア――!!!』


……うん。魔物だね。完全に魔物だね。てか確実に魔物だね。


なんで魔物がこんなところにいるのかな?しかもこんな大量に?昨日までいなかったよね?

てかこんな街のすぐ近くに魔物が来るなんて初めてだよね?

というか、気のせいかなこの魔物。植物型といいますか、めちゃ見たことのある姿と言いますか。


ああ、はい。そろそろ現実認めます。


「これ魔物じゃねかよ――――!!!!」


こっちに来てから初めてのそして人生で最も大音量の叫びをあげました。


やべぇよ……やべぇよ……オレ魔物育ててたよ。

どうすんだよ、これ。

とか、そんな動揺してたら目の前の植物型のモンスターがその口を開けてこっちを丸呑みにしようと襲いかかってきた。


「ってあっぶねっ!!」


すんでのところを後ろに回避。なんとかギリギリのところまで下がったが、こいつらすでに背丈はオレを超える2m強でしかも根っこの部分を中心に自在に動いてきやがる。あぶねー。


ってかマジでどうすんだよ!!


うろたえるオレをよそに植物モンスター共はめちゃくちゃ俺を威嚇して今にも食いそうな勢いだ。

こいつら、ここまで育ててやったオレを食おうなんてなんて連中だ……恩を仇で返すとはこのことか。

ん、オレもこいつらを食おうとしたって?いやいや、野菜は人間に食べられるからこそ、育てる価値があるから。オレはおかしくない。


とか、そんな風に脳内でアホな突っ込み入れてたらこいつらさらに威嚇を強めてきやがった。

くそー!めっちゃ美味しそうな果実が成ってはいるのに近づけない!ここまで育てておいてそりゃないよー!

とかそんなことを心の中で叫んでいると。


「この馬鹿!なにしてんのよアンタ!」


金色の髪が空に舞う。上空から降りてきたその人物が俺の育てた植物を刻み、その根元を全て綺麗に斬り落としていく。

ってああああああ――!!オレの育てた植物が――!!!!


「アンタね、キラープラント育ててるアホは!一体どういうつもりよ!!」


と、オレの前に現れたのは勝気そうな瞳でこちらを睨みつけるやや小柄な女騎士、というよりも少女騎士と呼ぶべき子であった。


うん、異世界に来てからはや数日。ようやくフラグらしいフラグが来たのかもしれない。魔物育てたおかげで。

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