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44「オレ達のスローライフはこれからだ!」

「よっし、準備完了」


「忘れ物はないでしょうね、キョウ」


「キョウ様の行くところ、このフィティスどこまでもお供します」


「ご主人様~! 私もどんな場所でもついていきますよ~!」


「ぱぱ~! 移動の時はロックに任せてね~!」


「兄ちゃんの行くところ、オレもいるぜ」


準備を整え外に出るとそこにはリリィ、フィティス、ドラちゃん、ロック、ジャックといつものメンバーが揃っていた。


あれから畑の方は一通り耕し、街の人たちにも手伝ってもらい、収穫や栽培の仕方も教えた。

ボロ屋も貯まったお金でそれらしく人の住める家に改築し、オレのいない間のことは全てミナちゃんに任せてもらうことになった。


「んじゃま、行くか」


「目指すはヴァルキリア王国ですわね」


「そこにいる女帝から種をもらうんでしょ。アンタが決勝で敗れたからそれが一つ目になるんだろうけど」


「むぅ~、リリィさん。ご主人様を責めないでください~」


「ご、ごめん」


リリィのいつもの軽口にオレの頭に乗っていたドリちゃんがリリィの頭に乗り抗議をする。


「いや、正確には二つ目だよ」


リリィの先ほどの発言に対しオレはそう異を唱え、不思議に思う皆の前に懐からある物を取り出す。

それは黄金に輝く宝玉であり、同時に種のようなもの。

そう、あの時、大料理大会の優勝者に与えられた世界樹の種。そのものであった。


「アンタそれ一体どうしたの?!」


「まあ、話すといろいろあってな」


それはオレにとっても予想外の展開であった。






決勝戦からひと月後、モーちゃんに連絡を入れて、勇者の称号をもらい、しばらくはスローライフを満喫する予定だったが、そこにあいつが現れた。


「よお、キョウ。お前マジでボロ屋に住んでんのな」


「なにしに来たんだよ、親父」


「いやーなーに、ちょっとお前さんにいい事を教えてやろうと思ってな」


それはいつも唐突に実家に帰ってくる際と変わらない様子で親父が話しかけてきた。


「お前、先週のジャ○プとか見たか? ヒソクとクロルが対決してるぞ」


「ファッ?! マジで?! それ見なきゃ!!」


「おうおう、今度バックナンバーも含めて読ませてやるよ」


「……で、まさか、それが教えたいことじゃないだろうな?」


「いやいや、そうじゃねぇよ。ところでお前さん、女神様からこの魔王のことについて聞いたか?」


それについてはオレは静かに頷く。

正直、あれほどの衝撃を忘れられるわけがない。

そうして頷いている内に、オレはひとつの疑問に思い当たる。


「もしかして、親父も知ってたのか?」


「当たり前だろう。なんでオレがここにいると思ってんだよ」


そう意味深なことを言う親父。


「でだ、ここからがお前のアドバイスになるんだが、まずはヴァルキリア王国を目指せ」


ヴァルキリア王国。

確か世界樹の種を持つ女帝がいる国だ。

いずれは行くつもりであったが、しかしなぜそこを?


「理由は今そこが魔王軍との激戦を繰り広げている最前線の国だからだ」


「……なるほど、そういうことか」


親父の言いたいことが即座に理解できてしまった。

つまり、次にオレが行くべきはそのヴァルキリア王国だが、本命は別。

他ならない魔王との対峙をしろと言っているのだ。


普通の人間ならば、そのようなこと出来るはずもないが、オレに限って言えば、おそらく例外だ。

そして、それは親父もわかっている。


「けど、それなら親父が行った方がよくないか?」


「いやー、オレもいろいろ忙しくてな。なにより女神様に直接、頼まれたのはお前のほうだろう? なら見せ場は譲らないとな」


「適当だなー」


「まあ、代わりと言ってはなんだが、こいつはお前にやるから、あとはうまくやりな」


そう言って手渡してきたのは、あの世界樹の種。っておお――い!!!


「なに素直に渡してんだよ?!」


「しょうがねーだろう、そいつはお前にしか栽培できないみたいだからな。このひと月、オレの方でも試したけど、うんともすんとも育たなかった。なら、あとはお前の方に可能性があるんだろうよ。心配しなくとも、オレも後からお前さんの役に立つから期待して待ってろって」


そう言っていつものようにひらひらと手を振りながら去っていく親父。

相変わらず現れるのも唐突なら、去るのも唐突だ。




まあ、そんなわけで現在、オレの手元には世界樹の種がある。

オレはそいつを庭先の一角に埋め、土をかぶせた後、ゆっくり立ち上がる。


「よし。じゃあ、あとはこいつの芽が出る前に、二つ目の回収に行くか」


オレのその宣言に一行は頷く。

ロックの体が光に包まれ、その姿は巨大な白い神鳥シームルグへと変化する。


リリィを含め次々とみんながその背中に飛び乗り、残ったオレもロックの背中に飛び乗る。


当初はスローライフがオレの目的であり、この世界でのんびりと暮らせるならそれもいいかと思った。

けれど、思いのほかイベントが降り注ぎ、気づくと料理物になってたり、最後には冒険物に路線変更だよ。

スローライフ詐欺もいいところだ。

とは言え、オレ自身はスローライフを卒業するつもりは全くない。

むしろ、これらすべてのイベントを片付けた後、じっくりと世界樹育てながらのスローライフが待ってるんだ。

全てはオレの素晴らしきスローライフ人生を得るため。


オレ達を乗せたロックは高く空へと舞い上がり、新たなるイベントの地へと向かう。


そう、オレ達のスローライフは――これからだ!




打ち切りじゃないよ? ちゃんと続くからね?

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