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161「SSランク魔物への挑戦」

「さーて、それじゃあ土をならしますかー」


 翌日。オレはフェリドからの依頼であるバハムートを栽培するべく庭の一角の地面を掘り起こし始めた。

 まずはクワで地面を適度にほぐしてから水を大量に巻いたあと、しばらく放置する。

 これだけでも植物を栽培する際、大きく変わってくる。

 まあ、栽培するのは例によって魔物ですが。


「兄ちゃん。手伝うぜ」


「ロックも手伝うー!」


「及ばずながらキョウ様。私も」


 と、見るといつものようにジャック、ロック、フィティスがオレの栽培を手伝おうと、それぞれクワやスコップなどを握りしめ、庭に集まってくる。

 おお、さすがはオレの仲間達。というよりも家族よ。

 早速オレは彼らの力を借りながら一緒に庭の一角の地面を耕し始める。

 一方、そんなオレ達の様子を少し離れた位置から見ているルーナ。


「……なるほど。そうやってお前は魔物を栽培するのか」


 となにやら興味津々な様子でこちらの様子を見ていた。

 時折、なにやら視線が痛くなるもんだから「手伝う?」とクワを差し出してみると「……やってみる」とそれを受け取ってオレ達の真似をしだす。

 う、うん。もしかして、やってみたかったのかな?


「キョウ君、よければオレにも手伝わせてもらえないか?」


「お? そうですか。それじゃあ、オレ達と同じように地面を耕してもらえますか?」


「お安い御用だ」


 そうこうしていると家から出てきたフェリドさんがオレへと近づいて協力を申し出てきた。

 ぶっちゃけこれだけの人数がいれば十分だが、わざわざ協力を申し出る人の気持ちを無下に断るのも申し訳ないので、まだならしていない部分の地面を耕してもらった。

 さすがは七大勇者の一人だけではあって、すぐさま周囲の地面をほぐしフカフカの状態にしてくれた。


「こんなものでいいだろうか?」


 いや、かなり十分です。

 その後も「他に何か手伝えることはないか?」としきりにオレに頼み込んでくるもので、逆に何を頼むべきかそっちの方に苦労を覚えてしまった。

 まあ、その後、堆肥を混ぜたり、再び何度か土をほぐしたりとそんなことをやっているうちに日が沈み、その日は一日土の準備を整えるだけで終わってしまった。


◇  ◇  ◇


 翌日。昨日のうちに耕しておいた土を一日置くことで様子を見る。

 水をたっぷりと含んだ土の感触は隣のなんの整備もされていないザラザラとした感触よりも遥かにふわふわとした弾力を持っており、まるで雲をつかむような感触であり、何かを栽培するには打って付けの土具合となっていた。


「オーケー。この土加減なら大丈夫だろう」


 そう言ってオレは腰に下げた布袋からフェリドさんからもらったバハムートの宝石を取り出す。

 本来、死んだ魔物を蘇生――というよりも新たに栽培するにはその魔物の亡骸に何かしらの魔物の種を植えることで亡骸を媒介に、その魔物を新たに栽培する。

 これは以前、アラビアル王国にてシンを育てた母親のマンティコアを蘇生栽培した時に証明した方法である。

 しかし、すでにフェリドの親代わりでもあったバハムートの亡骸はなく、その時バハムートの体内から取れた宝石があるのみ。

 正直、宝石一つでは媒介としては弱いのかもしれない。

 そもそもSSランク魔物の栽培というのは実のところはじめて。

 これが上手くいく保証はない。

 無論、可能な限り蘇生栽培が上手くいくように事前に土を耕し、栄養を注ぎ、栽培をするのに最良の準備を整えた。


 今のオレの魔物栽培のスキルならば、そのようなことをしなくても普通の魔物なら適当に種を撒くだけで栽培が可能だ。

 それだけではなく異なる魔物の種を混ぜることにより、両者の魔物のいいとこ取りをした複合栽培も可能となっている。

 とは言え、今回の栽培はあらゆる意味で未知数。

 オレの魔物栽培のスキルがどこまで通じるのか、ここに来て試される感じがひしひしと伝わる。

 しかし、あの七大勇者の一人でありオレ達とも浅からぬ関係を持つフェリドさんが頭を下げてまで頼んできたことだ。

 なんとしても成功させたい。

 オレはその想いを手に握る宝石へと伝えながら、それを地面に植えると同時にもっともこの地の栽培に適したキラープラントの種を一緒に植えると、その上に土をかぶせ、最後に水をかけると両手を合わせ無事に種が栽培するよう祈りを捧げる。


「……果たしてうまくいくだろうか」


 そんなオレの様子を後ろから見ていたフェリドさんが心なしか少し心配そうに声をかける。

 それに対し、オレは先程までの不安を振り払うようにフェリドさんの方へと振り返り笑みを向ける。


「必ずうまくいかせますよ」


 そんなオレからの返答にフェリドさんは僅かに息を呑むと、すぐさま安堵するように微笑み、頷くのであった。

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