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151「チョコエントを栽培しよう」

「おー! すげー! マジでチョコが成ってるよー!」


 あれから数日、オレは目の前に育ったエントの枝先に実ったチョコの実を取って口に頬張る。

 すると口の中にチョコレート独特の甘さとちょっとした苦味が広がり、何とも言えない美味しさが広がる。


「くぅ~! お前マジですごいな! チョコを実らせるエントとか! チョコエントじゃん!」


「ほっほっほっ、私を生んでくださったキョウ様にそう言って頂けると私も嬉しいですぞ。チョコに関しましてはこれこのとおり、樹の実のようにいつでも実らせることが出来ますので、キョウ様が欲しい時に言ってくださればいつでも補充いたしますので」


 そう言ってオレが目の前のエントを褒めると、エントも気分を良くしたのか茎の部分に刻まれた顔が柔和な笑みを浮かべて、枝に実っていたチョコがまるで樹の実のように次々と咲いていくのが見える。

 大きさはちょうどアポロチョコを大きくした感じであろうか。

 ひとつまみ出来て、口の中にちょうど収まる大きさであり、サイズも収穫しやすい。

 味もオーソドックスなチョコレートといった感じで、このまま味わうのもよし、加工して新しいチョコレートにしたりと色々と応用も効きそうだ。

 なんにしてもこれでわざわざ街までチョコレートを買いに行く必要もなく、おやつの収穫がかなり楽になった。

 更に隣のエントを見ると、そこにも予想通りの光景が広がっていた。


「こっちもすげえな。枝先からキャベツやナスが同時に実るなんて、これまたかなり珍しい光景だぜ」


 そこには先日オレがエントの樹と一緒に植えたキャベツやナスのピーマンの種がエントとうまく複合し、エントの枝先からそれら様々な野菜が実っている姿があった。

 普通なら一種類の野菜しか実らないのが常識である。

 しかし、エントという魔物を媒介として、様々な野菜の種を合成することにより、そのエントは複数の野菜を同時に実らせるという、これまた素晴らしい食材魔物として育ってくれた。


「これひとつ食べてみてもいいか?」


「ほっほっほっ、何を言いますか。キョウ様。一つと言わずいくらでも収穫してくださいな」


 問いかけるオレに対しエントは枝先に実らせたキャベツやらナスやら、ピーマンを次々とオレの前にふるい落としてくれる。

 そのうちのひとつ、キャベツを生のままかじってみたが、予想以上に瑞々しく、かつ新鮮な美味しさに驚いた。

 魔物の生命力によって育ったということもあるのだろうが、これは生でも十分にイケる味だ。

 しかも、この野菜も先ほどのチョコのエントと同じようにエントの枝先に力を集中させると、そこから実のようにキャベツやナスやらが実って成長していく。

 それはオレがイメージしていた光景ではあるが、その成果はある意味でオレの予想以上であった。

 野菜のうち、一つでも実ればと思っていたが、まさか同時に複数の野菜を自在の実らせるとは思わなかった。

 もしかしたらオレの魔物栽培のスキルが成長しているのかもしれないが、いずれにしても、オレは新たな魔物栽培の成果に満足しつつ、目の前のエント達に感謝とねぎらいの言葉を送るのであった。


「お前、何してるんだ?」


 ちょうどその時、ロックを連れてルーナが現れた。

 ロックは相変わらずルーナの足にべったりとくっついており、ルーナは煩わしそうにしつつも、いい加減なれたのか引き剥がそうとはせず、そのままにしていた。


「ああ、新しい魔物の栽培が成功してな。ちょうど今、それの収穫を確かめていたんだ」


 そう言ってオレは手に持つ野菜とチョコを見せて、ルーナにチョコを手渡す。


「? なんだこれは?」


 戸惑うルーナに対し、オレは「いいから食べてみ」と急かす。

 疑惑の視線を向けつつも、それを口に入れた瞬間、ルーナの顔がパァっと明るくなったのが見えた。


「……美味しい……」


 そう呟いて手元に残ったチョコを大事そうに食べ始める。

 それを見てロックも「ロックも食べたい~!」とねだってきたので、彼女にもチョコを数個渡す。


「すごいな。これはお前が作ったのか?」


 口にチョコの跡をつけながらルーナは好奇心旺盛な目で問いかける。


「いや、オレというよりもこのチョコエントが実らせてくれたんだ。今後はこいつからそのチョコが定期的に取れるから、欲しければいつでもこいつに頼んでいいからな」


「ほっほっほっ、そういうことですじゃ。よろしくです。お嬢さん方」


 そう言ってチョコエントは柔和な笑みを浮かべる。

 それを見てルーナはひどく驚いた様子を見せた。


「これは……魔物だよな? お前は魔物を栽培することが出来るのか?」


「ああ、言ってなかったか?」


 答えるオレに対しルーナはますます驚いた顔を見せる。


「いや、知らなかった……。しかし、まさか、そんな……人間が魔物を自在に栽培するなんて……それにこんな魔物は初めて見るが……?」


「まあ、オレの特殊なスキルでな。こうして新しい食べ物を生み出す魔物とか、そういう新種の魔物を栽培することができるんだ」


 思えばそのことに関してルーナに説明していなかったのを思い出し。

 説明するオレに対し、ルーナは心底驚いてみせた。


「そんなことが可能なのか……それはすごいな。それならこの世界の進化も促進出来て……いや……」


 そう呟きルーナはどこか頭を抑えるような様子を見せる。


「……そんな世界の進化は……ダメだ……。これ以上の促進は……そんなことをしては……」


「ルーナ?」


 突然、呪文にようにブツブツと呟く彼女に思わず駆け寄り、彼女の足元にいたロックも心配そうにルーナの服を引っ張る。

 やがて、それに正気を取り戻したのか、ハッとした様子でルーナが顔を上げる。


「今、私何か言っていたか?」


「いや、よくは聞き取れなかったが、何をブツブツを言っている様子だったが」


 オレがそう答えると「そうか……」とルーナは俯く。

 そんな彼女の様子を心配したのかルーナの足元にいたロックが彼女の服を引っ張り声を出す。


「ルーナおねえちゃん。街にあそびにいこう!」


「街に、か?」


 ロックの提案にオレも思わず頷く。

 そうだ。こういう時は気分転換が一番だ。

 それに思えばルーナに対し、この世界の常識というか、街がどういったものか説明や見せるのを忘れていた。

 最初に街に来た時、ルーナは興味深そうに色々見ていたのを思い出し、もっと早くに連れ出すべきであったと思った。

 そんなこんなで未だ戸惑う様子のルーナの手を引っ張り、オレとロックは彼女に街を案内するのであった。

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