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149「妹との再会」

「あ、お兄ちゃんー!」


 丘にある家に戻るとそこでは家の前からこちらに走ってくる一人の少女の姿が見えた。


「もしかして、ヘルか?」


 オレが名前を呼ぶとヘルはオレの眼前まで来た後、慌てた様子で眼帯をしていない目に手を当てる。


「くっくっくっ、その通りだ。久しぶりだな、我が兄よ。今生の別れより幾星霜。遂に再会の時を迎えたぞ」


 相変わらず厨二臭いセリフを吐きながら、その後ろからは執事の格好をしたアルカードが現れる。


「申し訳ございません。妹君のヘル様がどうしても兄上に会いたいと駄々をこねるもので、城からこっそり抜け出してきました」


「そういうことだ。というわけで兄上には特別に私の頭を撫でる権利を与えてやらんこともないぞ」


 ああ、そういうことですね。大体把握しました。

 とりあえず妹との再会ということでご要望に従い、頭を撫でることに。

 本人は乗り気ではないといった様子だったが、頭を撫でられた瞬間から顔を赤く染めて、明らかに体全体で喜びを表現している。わかりやすい。

 そんなこんなで妹とじゃれついていると、背後からそれを見ていたルーナが何かに気づいたようにヘルに近づく。


「ん、なんだ。誰かと思ったらクラウディアじゃないか。久しぶりだな、元気にしていたか?」


「は?」


 突如ルーナから飛び出した『クラウディア』とかいう謎の名前にオレもヘルも頭に「?」マークを浮かべる。

 クラウディア? 誰それ?


「んー? だが、ちょっと待て。お前、以前に比べて少し縮んだか? それに以前も黒っぽい服だったがこんなにヒラヒラがついていたか? あと目はどうした? 誰かにやられたのか?」


「ちょ、おま! な、何をする! この暗黒深淵龍の娘たる暗黒公女の私に気安く触るでない! って、ああー! そ、そこ引っ張ったらダメだからー!」


 気づくとヘルの体をベタベタと触りまくるルーナ。

 しまいにはオレに対し「お、お兄ちゃん! 助けてよー!」と救いの手を伸ばしてくる。

 うむ。まあ、仕方がないのでヘルを抱き寄せた後、未だにヘルの体を色々と剥こうとするルーナを抑える。


「そこまでだ。一応、これはオレの妹だから、あんまり妹が困るような真似はやめてくれ」


「? それはお前の妹なのか?」


 オレが告げた単語に対し、何やら疑問の表情を浮かべるルーナ。

 その後、何かを考えるように顎に指をあて、しばらくした後、納得したように頷く。


「……そうか。どうやら私の勘違いであったようだ」


 と、ひとまず納得してくれた。

 しかし、先ほどの『クラウディア』とは誰のことであろうか?

 オレとヘルは思わず見つめ合い、そのことについて問いかける。


「クラウディア? ああ、それは――」


 と人差し指を立てて説明しようとするが、そのまま数秒ほど固まった後、視線を外してボソリと呟く。


「……いや、誰だったかな」


 ルーナのそのセリフにオレだけでなく、この場にいた全員がズッコケる。おい、なんだよ、それ。


「というか、お兄ちゃん。この人、誰?」


 最もな疑問を放つ妹に対し、オレは「砂漠の遺跡で拾ってきた」と簡単に答える。

 説明すると長くなるので察してくれ、妹よ。

 そんなオレの想いが通じたのか、あるいはあまり興味がなかったのか「ふーん、そうなの」と納得してくれた。うん、多分後者だな。


「では、ヘル様。そろそろ勉強の時間ですのでお城にお戻りください」


「えー! やだよー! 私まだ来たばっかりだよー! これからお兄ちゃんと一緒に遊びたいのにー!」


 そう言って地団駄を踏み出すヘルに対し、アルカードは冷静に返す。


「構いませんが、お母様からの宿題が倍になりますよ」


「分かった。じゃあ、帰ろう」


 母さんからの宿題とやらがよっぽど嫌だったのか素直に頷いて帰り支度をするヘル。

 うむ。まあ、ヘルも魔王の娘だし、色々と大変なのだろう。

 次に会った時はゆっくりと遊んでやりたいものだ。

 そんなことを思いながら、帰る間際までヘルはオレの腰に抱きつき「お兄ちゃん成分を補充」と呟いていた。

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