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144「イシタル遺跡」

「だいぶ砂漠を歩いてきたし、そろそろ休憩にしましょう」


「そうだな。じゃあ、一旦ここで休むか」


 リリィの提案に対し、オレは頷き、すぐさま近くの岩陰で休むことにした。

 ここまでコブダ達も走りっぱなしで少し休憩させてやるべきだろう。

 そう思い水筒の水を飲んでいた時、ふと地平線の先の影を目にする。


「あれは……」


 それは以前、この辺りを通った時にアリーシャが説明してくれたイシタル文明の遺跡であった。

 あの時、なぜかえも言えぬ悪寒が走り、胸がざわついた。

 だが、同時に胸の奥に消えない引っ掛かりも残っていた。

 そして、それはその時、オレと一緒に何かを感じ取ったロックも同じようであり、オレの腕に抱きつきながら地平線の先に見える遺跡の影を見ていた。


「キョウ、どうしたの?」


 そんなオレとロックの異変に気づいたのか隣にいたリリィが地平線の先にある遺跡に目を向ける。


「あれって……?」


「イシタル文明の遺跡だそうだ。アリーシャが言うには」


「へえ、あれがね」


 その名前を聞くとリリィは興味深そうに頷く。

 まあ、こいつも一応冒険者というか勇者なわけだし、ああした古代文明の遺跡には興味があるのか。


「で、なんであれをじっと見つめているの?」


「いや、それがなんていうか……ちょっと気になって」


「気になって?」


 オレの発言に引っ掛かりを覚えたのかリリィが言及してくる。

 が、どう説明したものか。正直、上手く言葉で表せる自信がなかった。

 というのもこれはどこか本能的な部分が強く、直感のようなものであった。

 そこに恐ろしいものと同時に、オレにとって見逃せない何かがあるのような気がする。

 それが吉兆か、凶兆かは分からない。

 だが少なくとも、この先ずっと無視することはできない。むしろ、いずれ必ず形を変えて現れるようなそんな予感。

 そうした感じを、なんとかリリィに説明するが、やはり上手く伝わらなかったのか悩ましそうに首をひねってる。


「うーん、よくわかんないけど、そんなに気になるなら行ってみたらどう?」


「え、けど……」


 危険かもしれない。そんな単語が飛び出る前にリリィが人差し指を立てる。


「遠慮は無用よ。アタシを誰だと思ってるのよ? こと戦闘に関しては右に出る者はいない獣人勇者よ」


 確かにリリィの実力は折り紙つき。オレの知る七大勇者の中でも間違いなくトップクラスだろう。


「それに今はそこそこ戦力も揃っているし、気になるって言うなら行ってみた方がいいわよ」


 リリィのセリフに周りの皆も同意しているようであり、フィティスもジャック達も頷いている。


「遠慮は無用ですよ、キョウ様。キョウ様の行くところでしたら、どこへでも付き合います」


「だな。兄ちゃんが気になるって言うならオレ達は付き合うぜ」


「……そうだな。このままモヤモヤしてるより、ハッキリさせた方がいいか」


 皆の言葉を受け取り、オレは再び地平線の先にある遺跡に視線を移し、宣言する。


「じゃあ、行ってみよう。イシタル文明の遺跡に」

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