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番外編・その二 結婚式とその後

今回の話で、番外編も終焉です。

 神殿では外国の貴賓の方々とこの神殿の大神官を始め、この国の貴族達と騎士達と共に花婿である国王が、花嫁である大地の姫君の到着を心待ちにしていた。

そして、やっと式場となっている礼拝堂の扉が開き、花嫁となる娘が父親の相伴で花婿がいる神の間へと歩みを進める。

大神官が待つ場所に到着すると、花嫁の手は父親から花婿へと渡される。

「エルフィン陛下、娘を宜しく御願い致します。」

花嫁の義理の父親であり、己の叔父でもある相手に国王は、真剣な眼差しのまま無言で頷く。そして、花嫁と向かい合い、御互いを見つめて共に頷く。

それを合図となって今回の主役である二人は、大神官の方へ振り向く。

「これより、国王・エルフィン・ジェシーニ・ルータイナとリューリシアナ・ディンリリア・レムト・リータイレムの両名による結婚の儀を始める。」

大神官の宣言の後、厳かに結婚式が始まる。

愛と美の神・リルナリーナの名の下で、花婿と花嫁の二人が誓いの言葉を口にし、その後に誓いの口付けを交わす。周りに人々に祝福された結婚の誓いが終わると、一人の美しい少女が二人の前に現れる。

真っ白な細身のドレスに、百合と薔薇の裾模様が舞い散る物を身に着けた彼女は、優しい微笑を浮かべて今日の主役達を見つめる。

エルフィンと同じ特徴を持つ彼女へ人々の視線が集まるが、彼女は全く気にせずに二人の前へと歩み寄る。

「エルン、リュリィア、この度は結婚おめでとう。

今二人が私に誓った通り、末永く幸せになる事を願っていますよ。」

そう言って彼女は、リューリシアナの頬に口付けを落としてから優しく抱きしめて、リューリシアナの耳元で囁く。

「私は何時でも、貴女を見守っていますよ。

私の愛し子として、貴女に加護を授けます。」

彼女の言葉を聞き届けたリューリシアナは、驚いて相手の女性を見るが、意味深な微笑を浮かべた少女は、二人から視線を逸らして大神官へと目くばせを送る。

困惑した様子の大神官とエルフィンだったが、周りの者も同じ様子であった。

「じゃあ、エルン、私の愛し子を頼みますよ。

もし、浮気とかして苛めたら、もう一人の愛し子の貴方と言えども、全く容赦なしで厳しい罰を与えるわよ!」

一番厳しいと思われる捨て台詞に、エルフィンが即答で答える。

「御心配なく、リルナリーナ様が態々御出向かれになられて、然も直々に祝福された私達の結婚式ですから、離婚なんて絶対に成立しませんし、させません。

それに…私が恋焦がれて漸く妻になってくれたリュリィアを、蔑にする気は勿論、手放す気なんて全然ありませんよ。」

正々堂々と断言をするエルフィンにリューリシアナは、恥ずかしくも嬉しそうに寄り添う。そんな二人の姿を確認した少女は、二人の行末に幸有らん事をと言い残して、二人の結婚式の場から姿を消した。

これを見た人々は、この結婚が愛と美の神から祝福された事を知って、自分達の事の様に大変喜んだ。

特にリューリシアナの家族となった者達の喜び様は、殊の外凄かったらしいと、彼等の近くにいた参列者達がその様子を語っていた。

こうして、やや騒動が起きた結婚式であったが、無事に終わり、エルフィンとリューリシアナは夫婦となった。

何時の間にか彼女の腕には、愛と美の神から贈られた祝福の金環が存在しており、この事出来事で神々の祝福を受けた夫婦と他国でも有名になった。




 この後…国王夫婦は、先祖が残した遺言を消去する事にした。

果たされてしまった初代の望みを子孫へ譲る事は、これから後の世に取って全くの無駄であったからだ。

夫から教えられて初めて、この遺言を知った元滅びの乙女は、残された日記に初代の後悔の念を受け取り、それを自らの力で浄化した。

必要のない物であり、彼女自身がその日記を読み終えてしまうと、初代に関して恨みを向ける事は出来なくなった。


【我、此処に、子々孫々への遺言を記す。  

我が子孫の中で、光の輝きを持つ髪と、空の青さを持つ瞳の者

生まれ、成人せし時

光の神の祝福を受けしその者

神殿の奥深くに封印されし乙女 解き放たれたし

                    ジェニフェス・アニフルト・ルータイナ】


最後に記された遺言へ、リューリシアナは独り言を呟く。

「あの馬鹿に騙されて、古の国を滅ぼしてしまった事を…後悔していたのね…ジェニフェス王は…。

ならば…私は未来永劫、貴方を許します。貴方が居なければ、私の最愛の相手であるエルンに、会えなかったのだから…。」

初代が残した日記の最終頁にあった走り書きに、彼女は一言二言付け加える。

【初代が残された遺言は、48代目の国王・エルフィン・ジェシーニ・ルータイナの手で完全に果たされました。

神々の御力を借りた初代国王に封印された滅びの乙女は、その子孫であるエルフィン国王によって封印から出され、神々の罰からも解放されました。

ですから、もう、この遺言を気にしないで、貴方々の人生を歩んで下さい。

初代の罪は昇華され、滅びの乙女も既に現世(うつしよ)では存在しないのですから…。】

最後に【元滅びの乙女、リューリシアナ・ディンリリア・レムト・ベアリリシェラル、記す】と書き終わると、彼女は手にしていた日記を閉じる。

傍らにいる夫・エルフィンに微笑み、ゆっくりと昔の彼女が描かれている肖像画の部屋を彼と共に出て、扉の前で控えていた者達と合流する。

あの部屋を後にして廊下を歩いている時に、エルフィンが口を開く。

「これで、気が済んだかい?リュリィア。」

問い掛けられた言葉に頷き、夫の腕に寄り添う。

再び出会えた最愛の人の…生まれ変わりであり、今の最愛の人でもあるこの国の国王。彼と共に、この国の為に生きる決心をしている彼女は、寄り添っている国王へと話し掛ける。

「エルン…私は貴方に解放されて、こんな幸せを(もたら)されるとは思わなかったわ。

異形になった私を貴方が愛してくれて…私も…貴方を想ってしまったから…神々の怒りは解かれたのかもしれない。だから・・・」

「だから、ずっと私の傍に居るんだよ、リュリィア。

君と私の可愛い子供達を(はぐく)めるように、人々が平穏な暮らしを続けられるように…色々と御互いに頑張ろうね。」

少し恥ずかしい事を言われたリューリシアナは、エルフィンを見つめて一瞬無言になったが、真っ赤な顔で頷いた。


 そんな夫婦の姿を傍で控えている者達は、微笑ましそうに見つめていた。

彼等が一往に思った事は、一つ。

この仲睦まじい国王夫婦に、待望の赤ん坊が生まれる日も…そう遠くはないと。

今回で、番外編も終わりとなり、【滅びの乙女】も完結となります。ここまでお付き合い下さって、有難うございます。

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