第二話 劣等生の意地
編入日に実力試験があった。結果は、最低ランクのE・・・。
そうなるよなぁ・・・。だって・・・、魔法なんか使ったことなんかあるわけないだろ・・・。
わけあって、この学園、誓城学園に編入することになったわけだが・・・。
なぜ自分がここにいるのかも分からずに一週間が過ぎようとしていた。
幼馴染の隼人と恵が世話を焼いてくれたおかげで、クラスには、溶け込めつつある。
イケメンの隼人は女子に囲まれ、おとなしげな美少女の恵は一部の男子の間でかなりの人気があるらしい。
そんな風景に苦笑いしつつ、ふと教室の窓から外を眺めていると、花壇のところに人影があった。
少し気になり、近くに行ってみることにした。
「あの、何してるんですか?」
「は~い?」気の抜けるような声で返事をして、振り返ってくれた女子生徒は、長い銀色の髪をした人だった。
「俺は、編入生で、部活とか全然分からないんですよ。部活ですか?」
「あぁ~。いえいえ、違いますぅ~。えっとぉ・・・。」
「あ、相沢 優斗です。」
「相沢くんですねぇ~。わたしは、臣平院 きさらと申しますぅ~。では、また。」といって、去ってしまった。
ずいぶんのんびりした人だな。
さて、そろそろ教室に戻るか。
そうしようとした瞬間。「おや?編入生くんじゃないか?」と、突然声をかけられた。「なんですか?」「おいおい、そんな口の利き方は良くないな。」
数人の男子生徒が絡んできた。
「魔法ってのはなぁ、こう使うんだよ!」
1人の男子生徒が、小さい魔方陣を、出現させた。
次の瞬間、頬に激しい痛みが襲ってきた。意識が途切れかけたが、なんとか踏ん張った。
「じゃーな、劣等性。」男子生徒たちは、去っていった。
ジンジン痛む頬を、さすると、少し血が滲んでいた。
劣等性か・・・。くやしいのか?何も感じないや・・・。
教室に戻るか。
こういう嫌がらせには、最近慣れてきた。自分の弱さとかを考えたことのない俺には、もうどうでも良くなってきた。
放課後にも呼び出さた。ボコボコにされるんだなと思っていた。
ところが、事が起こった。
攻撃をされそうになった瞬間、別の魔力の介入があった。
「あなたたち、そこまでよ!」と、背後から女の子の声がした。
振り返るとそこには、初日にすれ違った金髪の美少女が立っていた。
「な・・・。」
「おいおい、女風情が、男に勝てるとでも?」
「ええ。弱いものいじめは、良くないわ。」
弱いもの・・・ね。
その女子生徒はあっという間に、男子生徒を片付けてしまった。
強い・・・。
「大丈夫?」
「は、はい。」
「私は、キュリア・マークレーンよ。一応あなたの先輩に当たるわ。」
キュリア先輩は、自己紹介を終えると、去っていった。
自室に戻る途中、またしても他のいじめっ子集団に出くわした。
「またか・・・。」
今度こそボコられる覚悟をした瞬間、またしても介入があった。
辺りを凍えるような冷気が包み込んだ。
キュリア先輩よりも高い魔力・・・。
もう闇夜が空を覆う時間になっていた。月が輝きを増し、夜風が全身を包む。ただでさえ肌寒いのだが、それとは別の寒気。
すると、周りを囲んでいた生徒たちが、「銀月の魔女だ。学年序列第8位。学園序列第26位。」と、上を見上げた。
序列とは、この学園での強さランキングみたいなものだ。ちなみに俺は、学年序列第1368位。学園序列ランク外となっている。
その銀月の魔女が俺を助けてくれたのか?さぞかし、やさしくて、頼りがいのある人なんだろう。
銀月の魔女は、建物の上から見下ろしていた。その姿を見た瞬間、絶句した。
すっとした姿は、細身にキュッと締まったウェスト、直視できない位形のいい豊かな胸部のふくらみ。そしてその名にふさわしいほど美しい、
シルバーブロンドの髪を風に揺らしながら佇んでいた。
その姿が脳裏から離れぬまま、週末を迎えた。
今日は、授業が休み。ということで、隼人と恵と散歩をすることになった。
「優斗。お前、服とか大丈夫なのか?」「いちおう支給はされたけど。足りないかも・・・。」
「じゃあ、今度3人でお買い物に行きましょう。」
そんな他愛ない会話をしている中、ズドォォォーン・・・!と爆発音が聞こえた。
現場に行ってみると、煙があがっている。
中から人影が・・・。その人影は、倒れた銀月の魔女だった。
「ふッ。哀れね。余計なことをしなければ、こんなことにもならなかったろうに。」
その声の主は・・・、キュリア先輩だった。
「先輩!何でこんなことを・・・!」と、俺は叫んだ。
「ん?あぁ、昨日の。その娘があなたを庇ったからよ。」
「え?だって先輩は、昨日・・・。」「あれは罠よ。編入生って気に入らないのよね。」
「・・・。俺のせい・・・。」
「その娘は自由にしていいわ。」周りにいたいじめっ子たちが、無抵抗な銀月の魔女の服に手をかけた。
その瞬間、「やめろ・・・!」
自分でもびっくりするくらい低い声が出た。右手の甲が疼く。体全身が熱い。
何もできない自分がくやしい。どうしてだろう。今まで感じなかった悔しさが、痛いほど感じられる。
昨日、自分を守ってくれた銀月の魔女・・・。
(・・・どうしたい?)
ん?誰だ?体の中から声がする・・・。
(強さが欲しいか?)
誰でもいい・・・。守れる強さを・・・!
「見せてやる!劣等性の意地を!」
「その手を離せー!」
熱く滾る右の拳を、そのいじめっ子に向けて、振りかぶった。
次の瞬間。銀月の魔女を残し、その他全員を爆発が襲った。
そして、意識が朦朧としてきて。俺は意識を失った。
どうも王乃 ハヤテです。
今回は、新しいヒロインが数人登場しました。少し投稿に時間がかかってしまい、皆様にご迷惑をおかけしました。反省してます。
というわけで次回、優斗の力について進展が・・・?
お楽しみに!